編集後記

山口智弘
FILT編集長。
80年代の夏は
今より暑くなかった。

編集後記

あのときの、答え合わせ。

2025.5.20

おだやかな気温で過ごしやすい季節になりましたが、今年の夏はそこまで暑くならないことを祈るばかりです。
さて、今号のFILTは石田ひかりさんにご登場いただきました。

今回は、6月20日に公開される石田さん出演の映画『ルノワール』のことを中心にお話をお聞きしましたが、テレビなどでお見かけする印象そのままの優しい方で、インタビューにも丁寧に答えていただきました。

この『ルノワール』の監督・脚本を務めた早川千絵監督は、昨年までFILTで連載していたキャスティングディレクター・杉野剛さんの連載「映画の国から」にも登場していただいており、さらに、杉野さんも『ルノワール』のキャスティングを担当されていて、なんだか巡り合わせってあるものなんだなと感じました。

杉野さんと早川監督の対談は、2024年2月に実施しており、その年の夏に『ルノワール』の撮影が行われたようです。
対談の最後は、早川監督の「今年の夏には杉野さんとご一緒させていただく長編の2本目を撮影する予定ですけど、また映画を撮れることが純粋にうれしいですし、完成に向けてがんばりたいと思います」というコメントで締められていますが、これがまさに『ルノワール』のことだったんだなと、答え合わせができた気分です。

2人の対談はバックナンバーか、もしくは下記からも読めますので、興味があればぜひ読んでみてください。

https://filt.jp/lite/issue128/s06.html

そんな『ルノワール』で、圧倒的な存在感を示したのが石田さんでした。
石田さんは主人公の少女・フキの母親役で、基本的にはフキに優しく、闘病中の夫のことも嫌いではないはずなのですが、なかなか思い通りに行かなかったり、仕事もままならなかったりで、ついイライラしてしまうし、家族に寄り添いながらも、それはそれで現実的なことも考えなければいけないという、リアルで多面的な人物像を見事に体現されています。

フキの子どもならではの自由さや危うさも描かれており、石田さんの取材にあたって試写会で映画を観たのですが、フキの言動や興味の向く範囲が「ああ、こんな子いたかも」とか「いや、自分にもこんなところがあったな」と、80年代に少年時代を過ごした人間としては思ったのでした。

ちなみに、取材の当日は、石田さんを含め、早川監督や他のキャストの方の取材日でもあったのですが、石田さんの取材の様子を、フキ役の鈴木唯さんが覗きに来ていたのが印象的でした。

それにしても、石田さんは現在ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』や『ミッドナイト屋台~ラ・ボンノォ~』にも出演中で、さらに6月には『ルノワール』と、もう1本の出演映画が公開されるという売れっ子具合。もちろん、前々から映画やドラマで拝見していましたが、今も変わらずに引く手あまたで、それもこれも確かな実力と、ならではの持ち味があるからなんだろうなと思った次第です。
インタビュー、ぜひ読んでください。

それでは、次回のFILTもよろしくお願いします。

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