原田龍二が縦横無尽に語る。第40回は「賛否」。
僕が出演している『カネデカ!』ですが、オンデマンドでの配信はもちろん、今後はWOWOWでの再放送も予定しているので、まだご覧になっていない方はぜひ観ていただきたいですね。
往年の刑事ドラマのようなBGMや演出のオマージュが散りばめられていますが、中身はタイトル通り、相続税の話とか、純金積み立ての話とか、お金に関する知識がこれでもかと詰まっているドラマです。
正直に言えば、僕はお金のことに関して人一倍興味がないんですよ。NISAがどうとか、投資信託がどうとか、知識として頭には入りますけど、「よし、やろう」とはならない。入って、出ていくだけです(笑)。でも、このドラマは、そんな僕でも面白いと思える作りになっていますし、だからこそお金に興味がない人にも観てほしい。小ネタで笑わせながら、きちんと人間模様を描いています。それが心にくいじゃないですか。
ただ、真面目な刑事ドラマの部分とナンセンス極まりない部分の振れ幅も大きいんです。カメラ目線で話すなんてドラマではありえないのに、それが成立してしまう。現場も実験的で流動的でした。自分の中でバランスがわからなくなる瞬間もありましたけど、その揺らぎこそがこの作品の面白さだと思います。“学ぶ”という姿勢ではなく、単純に“面白いドラマを観てみよう”という感覚で視聴してもらえたらうれしいですね。
一方、『日本全国!湯一無二』も、ぜひ観ていただきたい番組の一つです。1月の放送回では、伊豆の片瀬こぼれ湯を訪れました。あそこは海辺に温泉が湧き出ているんですが、入れる湯船というものがない。いわゆる野湯ですね。じゃあどうするかというと、掘るしかないわけです。
海岸に湯気が立っている場所を見つけて、そこを掘り始めるんですが、ゴロゴロとした大きな石だらけでなかなか掘り進むことができない。しかも、どうしても濡れてしまうので、最終的には半裸にふんどし一丁での作業になるわけです。掘った温泉も源泉に近いと熱すぎるので、海水で調整するしかない。番組がスタートしてもうすぐ1年になりますが、ロケの過酷さは回を重ねるごとに増している気がします(笑)。
冬の海岸で、男たちがふんどし姿で必死に穴を掘り、熱い熱いと言いながら湯に浸かろうとする。側から見れば滑稽かもしれませんが、視聴者の方の反応を見ると、こういった困難な回や我々が大変な回ほど面白いという意見が多い。すんなりと温泉に入るよりも、四苦八苦して泥臭くあがいている様子が楽しいし、面白いんですね。なんだか、番組づくりのヒントをいただいたような気がします。
空気感もより濃密になる。
先日訪れた長野の高峰温泉も凄まじかったですね。標高2000メートルで、気温はマイナス10度。温泉に入っていると、濡れた髪の毛や襟足がパリパリに凍っていくんです。でも、そんな極限状態だからこそ、温かい温泉のありがたみが骨身に染みます。寒い場所で入る温泉ほど格別なものはないと、全身で実感しました。
この番組の面白さは、僕一人ではなく、スタッフとのチームワークにあります。片瀬こぼれ湯の回などは、同行した栗原ディレクター、通称・くりりんとの掛け合いもうまくハマったと思います。
回を追うごとにスタッフとのやり取りにも良い味が出てきていると思います。くりりんも「日本一の温泉ディレクターになる」という夢を持っていますから、番組への熱量がすごいんですよ。
元日に放送された式根島のロケでは、初めてスタッフ全員で温泉に入り、ご飯を食べました。同じ釜の飯を食い、裸の付き合いをすることで、画面に映る空気感も、より濃密なものになる。そういう“人間臭さ”が、この番組の最大の魅力なのかもしれません。
その上で世に出すと決めた。
スタッフといえば「ニンゲンTV」にも、昨年から倉田ガルバくんという新しい仲間が加わり、さらに盛り上がりを見せています。
おかげさまで多くの動画を視聴していただいていますが、中でも120万回以上も再生された「津山三十人殺し」の集落を訪れる動画は、僕らにとっても大きなターニングポイントになりました。
この動画には、「見応えがある」「考えさせられる」という肯定的な意見の一方で、「やめたほうがいい」「そっとしておけ」といったような厳しい意見もいただきました。ただ、僕たちはみだりに土足で踏み込むような真似はしていないつもりです。礼節を持ち、真摯に向き合い、その上で動画として世に出すと決めました。
たしかに、「あの場所は今、どうなっているのか」という、純粋な、しかしある種の下世話とも言える好奇心があったことは否定しません。そもそもこれだけの再生数と数多くのコメントがついたのは、あの事件が持つ底知れぬ闇、不気味さ、そして残酷さが、人々の心に深く刻まれているからだと思います。視聴者の皆さんも、なかなか自らは行けない場所だからこそ、僕らの目を通して確認したかったのではないでしょうか。
もちろん、地元の方に批判されることは覚悟の上でした。「何しに来たんだ」と怒られるかもしれない。後ろめたい気持ちと、抑えきれない興味が背中合わせの状態でのロケでした。
前もお話しましたが、現地で偶然にも先々代が被害者の方々を供養されたというご住職と出会うことができたのは、本当に幸運でした。単なる心霊スポット巡りで終わらせてはいけないという、僕たちの真剣さが引き寄せてくれた縁だったのかもしれません。
YouTubeという場所は視聴者との距離が近い分、ダイレクトな反応が返ってきます。過去には、炎上を鎮火させるための「謝罪動画」を上げたこともあります。でも今後は、そういった動画は一切上げないつもりです。ほめられても、賛否の「否」が多くなったとしても、一喜一憂しない。それが僕の覚悟です。今後も、自分たちのやっていることに自信を持って、チャンネルを作っていきたいと考えています。
とはいえ、視聴者の皆さんがいて成り立つ世界です。コメントは全部読みますし、過去動画への新しいコメントもさかのぼって確認します。目を通さないということはありません。ただ、迎合はしない。そのバランスが大事なんだと思います。
僕は今、「ニンゲンTV」の幅広さをすごく感じています。なんでもありでいいと思うんです。心霊スポットを巡ってもいいし、降魔師の阿部吉宏さんがチョモランマ星人になってもいい。一部では「阿部さんはそんなことやらないでほしい」という声もありますが、でも阿部さんもやりたがっていますからね。あの人も真面目一本の人ではないわけです。そんな幅の広いチャンネルだからこそ、僕もやりがいがある。
賛否が出るということは、誰かの心に引っかかっているということでもあると思うんです。無風より、風が吹いているほうがいい。視聴者を大事にしながら、自信を持って進むし、賛否の間に立ちながらも、歩みを止めない。それが今の僕のスタンスです。
撮影/森田直樹(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Morita(AFLO SPORT)
スタイリング/鈴木浩子 ヘアメイク/松永香織
衣装協力/MEN'S BIGI est.1975、UNION STATION by MEN'S BIGI