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編集後記

知野美紀子
FILT編集長。
ほか、書籍も作っています。
飲む・読む・聴くが
人生の楽しみ。

仁淀ブルーから、オリンピックまで。

2015.7.20

 今月のテーマ「日本は、すみずみが、みずみずしい。」というコピーを聞いて何を連想するか、周囲の人に尋ねてみると様々な答えが返ってきました。

 「青森の白神山地を流れる水」、「熱海の少し人のいなくなった秋の海」「屋久島の杉」など自然の風景を伝えてくれる人もいれば、「津軽のこぎん刺しの模様」「沖縄の紅型の色」「障子や欄間の組子」という細部にまでこだわる日本人の繊細な仕事振りに話を及ばせる人もいました。

 私はといえば、一昨年訪ねた高知の仁淀川を思い出します。

 仁淀川は透明度と水の青さがとても有名で、その青さから「仁淀ブルー」と言われている…そんな言葉をどこかで読んで、「どれほどの青さなのだろう」と気になり、訪ねてみました。

 実際に訪れてみて、本当に驚きました。その青さといったら! インクをこぼしたような緑がかった青と、川の底まで覗くことができるほどの透明度でした。

 もちろん仁淀川の美しさは素晴らしいものだったのですが、今回のコピーを聞いたときに、仁淀川を思い出したのは、決して川の美しさだけではないと思うのです。高知で訪ねた際の旅館の人たちのおもてなしの言葉や、ともに料理を分かち合うことで労わりの気持ちを示す高知の郷土料理・皿鉢料理の彩りと、思いやりのある成り立ちなど、どんな風景もできごとも、奥ゆかしい優しさを感じることがあったからでしょう。


 2020年にはオリンピックが日本で開催されます。前途多難な会場建設や、様々な意味での安全面においても不安を感じることがあるのは確かです。それでも海外から訪れる人たちがTOKYOやKYOTOだけではない、日本ならではの繊細さや、日本の原風景を感じることができる地方の素朴な美しさを感じて欲しいと思います。

 「海外から戻ると日本の良さを改めて感じる」と今回インタビューをさせていただいた吉本ばななさんがおっしゃっていました。
「海外では、例えばホテルでエキストラのベッドを頼んだのにまず用意されてることが少ないでしょ(笑)。それに対して文句を言ってもフロントの人はすぐに動かないし、何度も言ってやっと持ってきたっと思ったら、謝りもしないで去っていくし」と笑って話されていました。

 確かに日本のどんな地方を訪れても、ゴミやたばこが町に落ちていないし、公共の施設が安全に使える。プレゼントでもないのにお店で綺麗に包装して商品を渡してくれるし、普段使いの器や箸など小さなものにも繊細な美しさが宿っている。それに、相手を慮って遠慮をするという優しさもある…どれをとっても私たちには当たり前なことですが、これほどすみずみに渡って心くばりされている文化は日本ならではで、誇らしく思っていいことかもしれません。


 そうか…しかし考えてみれば、オリンピック開催まであと5年。
 ふと、私はいったい何をしているんだろうな、と考えてしまいました。きっと本やWEBを編集するという仕事は新しい局面を迎えていることでしょうから、その新しいことにワクワクしながら仕事をしていられたらいいな、と思います。あとはゆっくり日本酒でもチビチビしながら、部屋の隅に積まれて「積ん読」状態になっている本を読む時間が増えるといいな…。

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