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140MAR-APR 2026.3.10
「人の人生をのぞき見る」のが一番面白い。
昼酒に込めた、テレビと笑いへの挑戦状。
芸人・カンニング竹山

 お酒にまつわる番組は数あれど、これほどまでに人の体温を感じさせる番組はないかもしれない。BS-TBSで毎週月曜に放送中の『カンニング竹山の昼酒は人生の味。』は、真っ昼間から街へ繰り出し、見ず知らずの人と乾杯しては、その人生の断片を掬い上げていくドキュメントバラエティだ。2024年から不定期で放送され、2025年4月にレギュラー化。出演者であり、番組の仕掛け人でもあるカンニング竹山は、そもそもの始まりについて、口を開く。

「テレビ番組を一つの仕事として、しっかり作り込みたかったんです。今のBSの番組って、お酒を飲む番組がすごく多いでしょ。僕自身、“酒場番組”というジャンルは大好きですし、よく観てもいる。でも、ふと気づいたんですよ。番組でお店や料理を取り上げることはあっても、意外と人に焦点を当てた番組って少ないなって。そこには必ずお客さんがいるわけだから、人を掘り下げる酒場番組があってもいいんじゃないかと思ったんです」

 そんなある種の発見がきっかけになった。昼間に着目したのも、次のような理由からだ。

「正直に言うとね、初めは昼間から飲んでる人ってダメな人だと思ってたんですよ(笑)。働かずにダラダラしてる人ばっかりなんじゃないかって。でも、街をよく見てみると、昼間の飲み屋さんって、ものすごく人が入ってるし、若い女性も普通に飲んでる。その瞬間、わかったんです。“ああ、これ、ちゃんと働いてる人じゃないと飲めねえぞ”って。生活の基盤があって、夜勤明けだったり、たまの休日だったり、一生懸命生きてるからこそ、昼間の酒を楽しく飲めるんだと。そう気づいた瞬間に、この人たちの話を聞いてみたいと思ったんです。それで、昔から一緒に仕事をしてきたディレクターの吉野(裕二)に声をかけました。“人に焦点を当てた昼飲みの番組を作ってみないか?”って」

 企画を形にするために、まずは自ら実証に動いた。

「2023年の寒い日でしたね。仕事が終わってから吉野を連れて、浅草のホッピー通りに行ったんです。昼の1時か2時くらい。そこで“俺が声をかけるから見てろ”って。たまたま入った居酒屋で隣の席に30代くらいのカップルがいたんですよ。僕は芸人ですから、自然に話しかけるわけです。そしたら、その二人から驚くような話がポロポロ出てきた。すかさず二人に許可を撮って、iPhoneで撮影させてもらいました」

 二人のエピソードは、まるでドラマのようだった。

「そのカップル、二人とも北海道出身で、就職してからは遠距離恋愛。その日は久しぶりに会った2日目でした。付き合って5、6年になるけど、彼氏の方がなかなかプロポーズしてくれないって、彼女がちょっと寂しそうに言うんですよ。彼がトイレに立った隙にね。そこで、彼が戻ってきた時に、僕が“どうするんだよ”って問い詰めたら、彼が“いや、実は言おうと思ってた”って。その場でプロポーズが始まって、彼女も泣いちゃって……。その様子を見て、“吉野、これだよ。これこそが番組になるんだよ”って。昼から飲んでる人には、とんでもないドラマが眠っているんだと確信した瞬間でした」

 番組がスタートしてからも撮影にはiPhoneを使用。そこには明確な演出意図があった。

「今の時代、大きなテレビカメラを向けられると、どうしても身構えちゃうでしょ。でも、iPhoneならみんな慣れてるから。周りからはYouTuberだと思われるかもしれないけど、一般の人の素が撮れるんです。だから、ディレクターが自らiPhoneを回す。もちろん、制作費を抑えるっていう現実的な面もあるけど、一番の目的は出会った人たちの表情を一番近くで撮ること。竹山の顔なんてどうでもよくて、この番組の主役は、あくまで一般の人たち。僕はその引き立て役に過ぎないんです」

 一切の仕込みなし。街を歩き、自ら声をかける。そのガチンコな姿勢は、レギュラー化した現在も変わらない。

「“どうせ仕込みなんでしょ”って言われることもあるけど、1ミリも仕込んでません。全部、現場で僕が声をかけてます。誰に声をかけるかは、もう勘としか言いようがない。面白そうだなっていう匂いを感じる人に行くんです。でも、これにはちょっとしたテクニックもあって(笑)。例えば、“お時間よろしいですか?”なんて丁寧に聞いたら、みんな断りますよ。世の中の人、みんな忙しいんだから。そうじゃなくて、“今、暇? ちょっと飲まない?”って、友達みたいに距離を詰めちゃう。相手が少しでも足を止めてくれたら、もうこっちの勝ちですよ(笑)」

 お酒というツールを介することで、初対面の壁は驚くほど簡単に崩れる。相手と同じ目線で、笑って泣く。感情を共有しながら、その人の人生を深掘りしていく。

「お互いに飲んでるから、普通よりもしゃべりやすいんです。居酒屋で横のおじさんと仲良くなるあの感覚の延長線。僕が大事にしているのは、相手が話し始めたら全力で笑って盛り上げること。出演してくれた人が“今日、竹山と飲んで楽しかったな”と思ってくれるのが一番の成功。僕が聞きたいのは、その人の人生そのものなんです。例えば、恋人同士。今、マッチングアプリで出会うのが当たり前になってるけど、アプリで出会ったという一つの事実の裏にも、その人たちだけの物語があるはずだから。自分とは違う人生の話を聞くのは、純粋に面白い。これって、いわばのぞき見なんですよね。他人の人生をちょっとだけのぞかせてもらう。それが一番のエンターテインメントなんだと思います」

 コロナ禍を経て、人々の飲み方も大きく変わった。2次会、3次会と夜更けまで飲むスタイルから、早めに切り上げる、あるいは早い時間から楽しむスタイルへ。その変化を敏感に捉えていたのも、番組の成功につながった。

「コロナが明けてからも、飲食店は閉まるのが早いままだし、みんな早く家に帰りたがるようになった。でも、飲みに行きたい気持ちはある。そこに昼酒という選択肢がピタッとハマったんです。夜だとベロベロに酔っ払っちゃうけど、昼間はみんな次の予定があるし、時間を気にしてるから、意外とちゃんと会話ができる。トークに焦点を当てるなら、昼の方が圧倒的に向いていたんですよ」

 番組が放送される時間帯も、気が利いている。

「BS-TBSの月曜夜は、吉田類さんの『酒場放浪記』があって、玉袋筋太郎さんの『町中華で飲ろうぜ』があって、その後、11時から僕の番組が始まる。もう、お酒好きにはたまらない流れでしょ(笑)。家で一杯やりながら、三者三様の番組を楽しんでほしい。僕の番組は、さっきも言った通り、のぞき見なんです。世の中にはいろんな人がいて、みんなそれぞれ頑張ってたり、馬鹿なことしてたりする。それを見て、“明日もちょっと頑張ろうかな”とか、“自分だけじゃないんだな”なんて思ってもらえたら最高ですね」

 番組が好調な一方で、自身の芸人としての在り方についても、新たな挑戦を始めようとしている。4月に控える単独ライブ『放送禁止2026』について聞くと、意外な答えが返ってきた。

「ここ数年、ライブの後半でちょっと真面目な話をしたり、感動的な構成にしたりすることが続いてたんですよ。お客さんからも“いいものを見た”なんて言ってもらえるようになってきて。でも、芸人として“そんなんじゃダメだ”って思いが強くなってきたんです。だから、今年は1回ぶち壊そうと思ってます。感動も、涙も、勉強になることも一切なし。何のためにもならない、バカバカしくて、壊れたものを見せる。守ってきた形を一度壊さないと、次に進めない気がして」

 壊すという姿勢は、自身の番組作りとも通底している。

「今のテレビって、芸人やタレントが面白いことを言うのが当たり前だと思われてるでしょ。もちろん、それはそれで面白いんだけど、街にいる普通の人の面白さを忘れてないかい?っていう問題提起をしたかったんです。僕の番組を観てもらえればわかるけど、一般の人だって実はめちゃくちゃ面白い。そこを突き詰めるのが、僕なりのテレビに対する、あるいは笑いに対する挑戦。番組もライブも形は違うけど、“面白いってなんだろう”という問いへの答えを探しているようなものなんです」

『カンニング竹山の昼酒は人生の味。』
BS-TBS/BS-TBS4K
毎週月曜夜11:00~11:30
飲み仲間を探しに街へと繰り出す昼呑み番組。青空の下で、一緒に泣いたり笑ったり怒ったりルール無用の人情トークを展開!
https://bs.tbs.co.jp/entertainment/hiruzake/
カンニング竹山 芸人。1971年生まれ、福岡県出身。現在、『ノンストップ!』(フジテレビ系)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『カンニング竹山のイチバン研究所』(AbemaTV)、『カンニング竹山の昼酒は人生の味。』(BS-TBS)、『たまむすび』(TBSラジオ)などにレギュラー出演中。2026年4月2日から5日まで単独ライブ『放送禁止2026』を開催予定。

撮影/森田直樹(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Morita(AFLO SPORT)