FILT

編集後記

山口智弘
FILT編集長。
親知らずも
抜きました。

闇の中にある錠前。

2016.7.20

たしか小学校高学年くらいの頃だったと思いますが、長野県の善光寺に行ったことがあります。牛に引かれて善光寺参り、の善光寺です。引いてくれたのは、牛ではなく父でした。

その善光寺には、お戒壇(かいだん)巡りというものがあります。本堂の床下にある真っ暗な回廊を巡り、その途中に懸かる「極楽の錠前」に触れることができれば、極楽浄土が約束される、というものです。

もちろん、巡りました、回廊。
階段で下に降りていくのですが、数歩進むと、すぐに真っ暗になります。これがちょっとありえないくらいの暗闇でした。まったく何も見えません。それまで、夜よりも暗い闇を経験したことがなかったので、とても衝撃でした。

けっこう混んでいて、人のザワつく声が聞こえる中、おっかなびっくり進み、出口の光が見えてきたときは、心底安心しました。

お戒壇巡りの暗闇は、無差別平等の世界を表しているそうです。たしかに、誰も見えないし、誰にも見られないという状況は、究極の平等なのかもしれません。
子供のときの実感として、真の暗闇の中は、怖くて不安で、でもちょっと面白かったのを覚えています。

今回、“闇”をテーマに、人の闇を描いた映画『少女』に出演される山本美月さん、闇の時代を経てイオンエンジンを開発した國中均さん、闇と光のエキスパートともいえる内原智史さんにご登場いただきました。

内面の闇、人生の闇、空間の闇など、闇といっても、様々な闇があります。その闇を認めることができるかどうか、楽しめるかどうか……。どう捉えるのかは、結局その人次第なのだと思いました。そして、そんな闇の中にこそ、「極楽の錠前」が懸かっているのかもしれません。


ちなみに、当時、回廊で錠前を見つけられなかったのは、ここだけの秘密です。

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