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140MAR-APR 2026.3.10
侠の仕事と人生と
俳優・本宮泰風
任侠ドラマシリーズの金字塔『日本統一』と、セガの大人気ゲーム『龍が如く』が奇跡の融合を果たしたドラマ『龍が如く Powered by 日本統一』がAmazon Prime Videoで配信中。本宮泰風はどのように、このコラボを成功に導いたのか。ゲームの実写化という難題への挑戦と、その他の映像作品でも見せた役者としてのスタンスに迫る。
圧倒的な存在感で画面を支配する俳優・本宮泰風が、
出演作やプライベートなどを語り尽くす連載の第2回。

 2月10日から配信されている『龍が如く Powered by 日本統一』は、『龍が如く』のストーリーを僕ら『日本統一』のキャストとスタッフで映像化するという、異色の企画です。

 『龍が如く』のリメイクシリーズのプロモーションとして、映像化のお話をいただいたのは、去年の夏前くらいでしょうか。セガさんから「日本統一チームでやってもらえませんか」という打診をいただいて、そこからはもう怒涛のスピード感でした。当初は前後編の2本という話だったのですが、撮れ高が十分にあったこともあり、結果的に約1時間の作品を3本、全3話のドラマシリーズとして完成させることができました。

 正直なところ、ゲームの実写化というのは非常にハードルが高いんです。過去の例を見ても、原作ゲームのファンからは厳しい評価を受けることが少なくありません。その気持ちは僕らも痛いほどわかります。ゲームの世界観やキャラクターへの愛着が強ければ強いほど、実写に対して不満を抱くのは当然のことですから。

 だからこそ、今回はあえて違う角度から攻めてみようと決めました。中途半端にリアルなドラマにするのではなく、むしろ「ゲームの世界」に僕らが入っていくような作りにしようと思ったんです。

 ある場面では、ゲーム内で使われている背景CGをそのままお借りして、そこに僕ら実写の俳優を合成するという手法をとりました。これはある意味、大きな賭けでした。『日本統一』でも、発砲や爆破のシーンなどでCGを使うことはありますが、背景をゲームのCGと合成するなんて経験はありません。CG制作会社も決まっていない段階で、「ゲームのCGを使う」ことを決めて、やり方を模索していきました。

 完成した映像は良い意味で「遊び」があるというか、既存の映画やドラマとは一線を画す、ゲームと実写のハイブリッドな質感になっています。賛否はあるかもしれませんが、ただのドラマ化ではなく、ゲームへのリスペクトを込めた新しい試みとして楽しんでいただければうれしいですね。

 僕自身はゲームをやらない人間なのですが、YouTubeなどでファンの皆さんがアップしている解説動画などは見ています。そうやって外側から見ているだけでも、『龍が如く』という作品がいかに愛されているか、そして制作サイドがいかにファンを楽しませようとしているかが伝わってきます。

 例えば、ゲームの中で散っていった男たちの葬儀を開催したり、キャラクターと疑似結婚式が挙げられたりと、『龍が如く』シリーズのイベントには独特な発想がありますよね。僕ら映像業界の人間からすると「物語の中で死んだら終わり」という感覚が強いのですが、『龍が如く』はキャラクターをコンテンツとして永続させ、ファン心理をくすぐる展開を次々と仕掛けていきます。

 『日本統一』も長く続くシリーズ作品として、ファンの方々に支えられている点は同じですが、僕らはまだ常識の枠に収まりすぎていたかもしれません。龍が如くスタジオ代表の横山昌義さんをはじめ、チーム全体が常に「次はどうやったらファンが喜ぶか」を考え、新しいグッズを作り、イベントを仕掛けています。その姿勢は、僕らにとっても大きな刺激になっています。ジャンルは違えど、エンターテインメント作品を作る同志として、見習うべき点がたくさんあります。

昔からの友人のような
感覚になれた。

 最近では、DMM TVで配信中の『ドンケツ season2』にも出演させていただきました。実は、原作者で漫画家のたーしは僕の可愛がっている後輩で、漫画も好きで読んでいたんです。

 僕が演じたのは鷹十組の本部長・速水邦光という男なんですが、今回は珍しく、外見から原作のキャラクターに寄せにいきました。普段は漫画原作の実写化であっても、無理にビジュアルを似せることはあまりしないタイプなんですが、よい機会だからやってみようとチャレンジしました。ウィッグをつけたりと、なかなか準備は面倒でしたが(笑)。

 現場では、周りのキャストもみんな原作の大ファンで、一種独特な熱気がありましたね。「『ドンケツ』の世界に入れる!」という興奮が俳優たちの間にも充満していて、まるで少年のように目を輝かせていました。そんな現場の空気感も、作品の勢いにつながっていると思います。

 主演の伊藤英明くんとは今回が初共演だったのですが、会った瞬間に昔からの友人のような感覚になれました。彼の感性やユーモアのセンスが、なぜか僕にはすごく刺さるんです。彼が放ったジョークを周りの誰も笑っていないのに、僕だけ笑っていることもよくありました(笑)。彼も「泰風さんだけですよ、わかってくれるの」なんて笑っていましたけど。

 彼が演じる主人公のロケマサは、社会人が使い分ける本音と建前を一切無視して生きている男です。一見めちゃくちゃに見えて、実は誰よりも本質を突いていると思うんですよね。そんなキャラクターを伊藤くんが魅力的に演じていて、彼が年齢を重ねて丸くなった部分と、役者としての鋭さが絶妙にマッチしていました。もし10年前に出会っていたらここまで仲良くならなかったかもしれません。お互いに良いタイミングで出会えたなと感じています。

積み重ねでしか、
道は開けない。

 他にも、現在放送中のドラマ『マトリと狂犬』にも出演しています。この作品は品川ヒロシ監督によるもので、実は彼とはよく一緒に飲んだりする友人なんです。僕が演じたのはそんなに複雑な役ではなかったこともあり、彼とはあまり細かい話はしませんでしたが、「もし続編を撮る場合はこうしたい」といったような話を熱く語っていたのが印象的でした。

 もともと彼はすごく勉強家なんです。映像のことも深く学んでいて、どんどん良い監督になっています。バラエティ番組などでは憎まれ役を買って出ていることもありますけど、映像の現場ではスタッフからの人望がすごくあるんです。結局、映像作品って、監督が撮りたいものを実現するためにスタッフが一生懸命になれるかどうかなんですよ。品川監督の現場は、そういう空気感がしっかりとありましたし、みんなに慕われている監督だと感じました。

 さまざまな映像作品の現場に参加させていただいて、改めて考えるのは、目の前の仕事をとにかく一生懸命やるということです。よく「理想の役者像はありますか?」と聞かれることもありますが、答えは「ない」です(笑)。若い頃から、「こういう役者になりたい」とか「こんな役をやりたい」という具体的な目標を持ったことが一度もないんです。冗談半分で「セリフがなくてカッコいい役がいい」なんて言うことはありますが(笑)。

 特定の理想を持たないというのは、決して向上心がないわけではなく、こだわりを捨てて「来るものを受け入れる」というスタンスでいたいからです。「こういう役がやりたい」と固執してしまうと、それ以外のチャンスが見えなくなってしまいます。若い頃なんて特にそうだと思うんです。やりたい役ができるわけじゃないし、まずはワンシーン、一言のセリフをどう演じ切るか、その積み重ねでしか道は開けないと思ってやってきました。

 今回の『龍が如く』をはじめとした一連の映像作品も、ご縁があって頂いたお話です。どこにどんな出会いがあって、そこからどう道が派生していくかは誰にもわかりません。だからこそ、理想を掲げるよりも、目の前の仕事、今日やるべき撮影を確実にこなすことを大切にしたいと思うんです。

本宮泰風 もとみややすかぜ 俳優。1972年生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビュー。『日本統一』では主演として、主人公の氷室蓮司を演じる傍ら、総合プロデューサーとして作品を統括。

撮影/西村 尚己(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Nishimura(AFLO SPORT)

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