俳優としてのキャリアは35年以上。JAC（ジャパンアクションクラブ）の出身で、もともとスタントマン志望だったこともあり、アクションシーンへの思いは強い。
「若い頃は自分を天才だと思い込まないとやっていけなかったですね。車に轢かれるシーンなんか、“こんなのできない、どうしよう”じゃ大怪我をしますから。“俺は天才なんだから、できる！”と自分に言い聞かせて、はじめて迷いがなくなるし、スタントマンとも張り合える。後輩にもよく“天才だと思ってやれよ”と伝えています。この年になると、もう激しいアクションは遠慮したいけど（笑）」
　本宮泰風とＷ主演を務める任侠ドラマシリーズ『日本統一』も、長年思いを込めてきた作品の一つ。2013年にスタートした同シリーズは、ドラマ化や映画化も果たすなど、大ヒット作へと成長した。
「まさかここまで続くシリーズになるとは思っていなかったです。正直、5本くらいで終わると思っていましたから。もう10年以上もやっているシリーズなので、何度も転機はあったんですよ。いろいろと交渉しなきゃいけない場面なんかもあったりしましたけど、すべてはみんなの続けたいという気持ちがあったからだと思っています。あるとき、泰風が言ったんですよ。“ここまでやってきたんだから、全力で続けていこうぜ”って」

　『日本統一』を一緒に盛り上げてきた10代の頃からの親友に対して、抱くのはこんな思いだ。
「泰風が俳優になる前からの友達ですからね。これはいろんなところで言っているんですけど、親友として、俳優仲間として、泰風には名を残してほしいと思っているんです。泰風は『日本統一』の主演であり、総合プロデューサーでもありますけど、一人の役者がここまで深く関わったシリーズが10年以上も続くというのは、とても有り難いことなので」
　一方、無二の親友からは、こんな言葉をかけられることも。
「最近は泰風から“山さん、無理しないでね”とか“怪我しないように”とかはよく言われます。もうずっと一緒にいて、家族みたいなものなので、心配してくれているんですよ。『日本統一』の撮影は期間も短くてハードですからね。バテたりしないよう、ジムに通ってウエートトレーニングを重点的に行っています。撮影の内容によっては走り込んだりしていますね。犬の散歩で毎日歩いてもいますし」

　大の愛犬家としても知られており、SNSでは愛犬との日々を発信もしている。
「この前、犬を連れて散歩していたら、ヤクルトのお姉さんに声をかけられたんですよ。“スミス、スミスじゃないの？”って。スミスは僕の飼っている犬の名前なんですけど、“スミスってことは、じゃあ山口さん？”って。犬をきっかけに気づかれました。あれは想定外だったし、恥ずかしかったなぁ」
　老若男女問わず『日本統一』をきっかけにファン層を広げているが、街中で声をかけられることは多い。同作で侠和会・本部長の田村悠人を演じていることもあり、「本部長！」と呼ばれることもあるという。
「スーツを着ていると、よく言われますね。普段の格好は街にいるただの兄ちゃんなんですけど（笑）。『日本統一』って任侠モノですけど、中間管理職の悲哀とか、組織としてのあり方とか、ある意味で企業ドラマとしても見られるんですよ。実は一般的な会社とそんなに変わらない。結論を出すまでにちょっと過激なことをやるだけで（笑）。だから、一種のファンタジーでありつつ、共感できる部分もあるんでしょうね」

　シリーズを重ねてきたことで、意識している部分もある。
「田村も最初はイケイケの兄ちゃんでしたけど、やっぱり成長させなきゃいけませんから。下の人間ができて、上にも気を使うようになる。壊すよりも共存を選ぶ。そういう人間性の成長は、演じていて細かく考えているところです。僕自身もずっと後輩のつもりでいたのに、今じゃ後輩のほうが多くなってきていますから。後輩を飯に連れて行くようになりましたし、演技のアドバイスをするようにもなりました。唯一、『日本統一』でも共演している勝矢からは逆にアドバイスされることもあります。“兄さん、こうしたほうがいいですよ”“はい、わかりました”って（笑）」
　最後に作品と自身の未来について、聞いてみた。
「『日本統一』に関しては、そのときの社会情勢なども踏まえながら作っているので、どうなるかわかりません。泰風や僕がいなくなっても続けられる可能性のある作品だと思いますけど、ひとまずは飽きさせないようにいろいろと仕組んでいくので、そこは楽しみにしていてください。俳優として目指すのは、小細工をしなくても、ただそこにいるだけで成立する人物ですね。思わず目が向いてしまう、いい雰囲気の俳優になりたいと思っています」