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寺島 進

寺島 進

寺島 進

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子

俳優として、男として、父として……

寺島進の半生を振り返りながら、

その生き様、哲学に迫る連載、第十回。

 まさかって感じだよねぇ。(大杉)漣さんのこと。亡くなったって聞いて、言葉も出なかった。しばらくは実感も湧かなくて……でも、何日か経って夢の中に出てきたのよ。元気な姿で、「寺ちゃ~ん!」とか言って手を振って、あの笑顔で。いつもそうだったの。現場で会うと、「寺ちゃ~ん!」って声かけてくれるんだよ。そんな夢を見たとき、なんか『あ、漣さん、元気で逝ったんだな』って思った、うん。

 北野監督の『ソナチネ』で出会ってからは、北野組の戦友みたいな人だった。『ソナチネ』は沖縄でずっとロケしてて、ほとんど男ばっかりでしょ? スタッフ・キャストみんなで寝食をともにして合宿みたいな感じだったの。だからいろんな思い出があるよ。漣さん、撮影が休みでディスコに行ったら、ポケットに入れてた10万円を隣に座ったおネエちゃんに盗まれたって事件もあった(笑)。誰にでもフレンドリーな人だったから……悪いヤツはどこにでもいるもんだよな。

あの笑顔を見ると

どんな現場でも

フッと緊張が消えた。

 そういうことを翌日会ったとき、面白おかしく話してくれるんだよ。北野組以外でもいろんな作品で一緒になったけど、いつもそうだった。さっきも言ったけど、いつも「寺ちゃ~ん!」って声かけてくれて……。あの笑顔を見るとどんな緊張感漂う現場でもフッと緊張が消えたの。漣さんはね、しゃべって自分をリラックスさせるタイプだったと思う。だからホントによくおしゃべりしてたなぁ。SABU監督の『ポストマン・ブルース』って作品では、漣さん、「おしゃべりジョー」って役でさ(笑)。聞かれたことは何でもしゃべっちゃう心優しい殺し屋って設定だったけど、あれは漣さん本人のキャラがもとにあっての役だと思う。

 ホントかウソか知らないけど、寿命っていうのは生まれた瞬間に決まってるっていうじゃん。でも俳優って仕事はさ、亡くなってからも、その姿はフィルムに焼きついてる。だから、人から見られる限りはまだ生きてるわけよ。松田優作さんしかり、渡瀬恒彦さんしかり、漣さんしかり。ずっと生きてるんだ。

 漣さんはよく「現場屋、現場屋」って言ってたけど、役者ってさ、やっぱり死ぬまで現役でいたいわけ。もちろん、俺も死ぬまで現役でやりたいと思うもん。だから現役のまま亡くなったってことは本望だったんじゃないかと思う。早すぎたのは間違いないけどね。

 3、4年前、漣さんからもらった年賀状に、「最近、芝居が面白くなってきた」って書いてあったの。もう十分やりきってるように見えるかもしれないけど、分かるなぁと思ったよ。演じる面白さは、出会うスタッフやキャスト、いい台本との出会いでどんどん変わっていくし、進化していくもんだから。

 俺もまだまだいろんな役に出会っていきたいけど、こればっかりはご縁だからね。ただ、出会って俺がその役に選ばれたときは、選ばれなかった人間がたくさんいるってことを忘れちゃいけないと思ってる。これはね、初めて『ウチくる!?』って番組に出たとき、北野監督からいただいた手紙に書いてあった言葉なんだ。だから選ばれた人間には責任があるんだって。その通りだなって思ったよ。選ばれなかった人が見て、「これなら仕方ない」って思わせないといけない、ある意味、ねじ伏せていかなきゃいけない仕事でもある。それは忘れちゃいけないことだと思ってるよ。

 そのためにも健康管理は重要だなって思うようになった。

寺島 進

子どものためにも、

まだまだ頑張らないと

いけないからさ、俺。

 最近はね、針の先生に勧められて白湯を飲んでる。朝起きた時と、寝る前に飲むのよ。そうすると寝汗がすごいの。夜中起きるともう枕がびちょびちょなんだから。昨日、飲んだ酒が出てるんだろうね(笑)。でも、酒の量も50歳を過ぎたあたりから、体がストップをかけてくるようになった。今の俺の適量はボトル半分くらいかな。飲み方はずっとロックに近い水割りだったけど、最近はお湯割りに変えて。お湯割りなんか飲んだことなかったけど、白湯を飲み始めてから体が冷えなくて調子がいいからさ。

 あと、撮影のあとは神経が立ったままになって眠れない時もある。体をリラックスさせるためにやってるのが散歩だね。

寺島 進

 歩くってことより、外に出て太陽を浴びる日光浴として散歩がいい。そうするとわりと眠れるんだよ。あとはね、サウナに入って水風呂に入る。水風呂に入ると、ぶわ~って何かが発散される感じあるんだよな。俺、夏でも冬でも家でもサウナでも、風呂に入って全部洗ったあと頭からぶわ~っと水を流すの。それで風呂から出るのが習慣。クーラーがない家で一人暮らししてるとき、暑くてしょうがないから、水を浴びて冷蔵庫を開けて涼んでたのが始まりだった気がする。でも、男は水を浴びると清められるって聞くし、いつの間にかお清めみたいな感覚も入ってきて。子どもと一緒だと、水が飛び散ってイヤがられるけど、それだけはやめない。子どものためにも、まだまだ頑張らないといけないからさ、俺(笑)。

寺島 進

寺島 進 てらじますすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した「ア・ホーマンス」でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマの世界でもその顔は知られるように。

撮影/野呂美帆 取材・文/大道絵里子