俳優として、男として、父として……
寺島進の半生を振り返りながら、
その生き様、哲学に迫る連載、第十八回。
撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子
俳優として、男として、父として……
寺島進の半生を振り返りながら、
その生き様、哲学に迫る連載、第十八回。
『駐在刑事』のシーズン2がもうすぐオンエアになる。
2時間ドラマから始まって、連ドラになっただけでもありがたいのに、さらにシーズン2ができるなんて。いやぁ、もうあれだね、みんなの力!スタッフ・キャスト、みんなが愛情と力を注いで取り組んでくれて“全員野球”でやってこれたから「2」に続いたし、今回の現場もそれが続いてた。移動だけでも疲れるようなタフな現場なんだけどね。毎回、片道2時間半かかるんだから。それでも嫌な顔せずに、ブレないチームワークで明るく楽しく尽力してもらいました。
内容はね、前回は大きな謎が解き明かされていく感じだったけど、今回はレギュラー人物の背景とか因縁とか、今まで明かされてなかった部分に光を当てる一話完結型なの。まぁ、ちょっとした事件が起こって、それが誰かのエピソードと繋がってるって感じかな。話数ごとに、レギュラーの誰かがその回を引っ張っていくわけ。
体力を上げたら、
気力もグッと
上がるからさ。
笛木優子さん演じる遼子さんは親子関係がキーワード。北村有起哉が演じる加倉井管理官の回も面白いし、いろんなバリエーションがあって楽しんでもらえると思うよ。
またみんなの芝居がいいんだよ。それぞれの役の味をちゃんと醸し出してたし、特に北村有起哉なんて役者として今まさに脂がノッてるぞ、って感じ。佐藤寛太もノビノビやってたし……和気あいあいの雰囲気の中でね。それに加えて各話のゲストもまぁ個性派ぞろい。
見どころで言えば、駐在所の愛犬・プールとか、子役の子たちもすごくいいんだよな~。無垢で明るくて元気で、こういうの大事だよなあって、なんか俺も原点に帰る思いがあったね。あの黒澤明監督も「子役と動物の芝居には勝てない」って言ってたらしいけど、ホント勝てねぇなと思ったよ。
でも、俺自身にはちょっと反省があるんだよな……。いつも台本の打ち合わせの時間をしっかり取ってるんだけど、今回はどうしても時間がなくて、ちょっと詰めが甘かったかもしれない。
現場で『アレ? このセリフおかしいな。こういう語り口調にしたほうが見てる人も分かりやすいのに』って感じることもあったりしてさ。そういうのは監督に相談したら、柔軟性も瞬発力もパワーも愛もある監督なんで、親身になって聞いてくれるからね。すぐに修正して現場が止まることはほとんどなかったんだけど……それでも、そこは俺の反省点だな。あと、体力が落ちてるなとも思った。移動中とか仕事が終わった後にドス~ンとくるんだよね。疲れが残りやすくて、それはつまり体力が追い付いてねぇってことだから、今後は体力づくりもしようかと思ってる。体力を上げたら、気力もグッと上がるからさ。
ジムには行かないっていうポリシーみたいなもんがあったんだけど、まぁ挑戦する気持ちは大事だからね、何事も。山口祥行(刑事の輪島役)がさ、スーツ脱ぐとYシャツ姿がかっこいいのよ。それはやっぱり筋肉があるから。あいつ結構ジムに行ってるらしいから、そういうところは見習おうと思って。そのうち俺もシルエットが変わるかもな(笑)。
もう一つ大きな出来事もあった。今回は撮影の真っ最中に台風19号が来たんだよね。山道が崩れて通行できないところもあったし、断水もしたし、いろんなところで被害が出た。俺たちも使う予定だった場所が使えなくなって、制作部、監督、カメラマンがあちこちロケハンして、なんとか乗り切って撮影できた一幕もあったの。
観た人みんなが、
元気になれる
ドラマを作る。
あんなにきれいだった奥多摩の美しい自然が……。俺もショックだったもん。俺たちは奥多摩に7年間もお世話になってるから、恩返しをしたいと思った。俺にできることがあったらなんでもしたいけど、でもやっぱり一番いいのは観た人みんなが元気になれるドラマを作ることだなと思って。ドラマで奥多摩の人を励ましたいと思って、ふんどしを締め直して頑張ったよ。本当に1日も早い復興を祈ってます。
でもあれだね、今回は一層、俺はみんなの力に支えてもらってるんだなぁって思ったよ。たまたま主役をやらせてもらってるけど、話数毎にレギュラー陣の誰かが主人公になる形だから、みんなが頑張れば頑張るほど俺を浮かび上がらせてくれる。
もう感謝しかないね。ホントにそう思うし、そういうトシにもなったんだろうな。長いこと後ろを振り返らないでやってきたから。前ばっかり見て……。
そんな俺の突っ走りはこの連載で散々話してきたけど、さらにいろんなエピソードをつけ足して、とうとう「てっぺんとるまで!」という1冊の本にまとまった。俺の半生を人様に読んでいただくには、なんかお土産がないといけないなとは思うんだけど……ま、俺なんか40過ぎてやっと食えるようになった人間だから、今いろんなことがうまくいかなくてモヤモヤしてる人に読んでもらって、元気になってもらえたら嬉しいね。何かこう、道を切り拓くヒントになったりしたらさらに嬉しい。でも昔の俺の写真もいっぱいだからさ、それだけでも面白いと思う(笑)。よかったら見てみてよ。
「てっぺんとるまで!役者・寺島進自伝」
ポプラ社より発売中。本体1600円+税
第一章から第六章まで、寺島進の情熱溢れる俳優人生が綴られる。
寺島 進 てらじますすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した『ア・ホーマンス』でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマの世界でもその顔は知られるように。本連載をまとめた書籍「てっぺんとるまで!」が発売中。
撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子