原田龍二が縦横無尽に語る。第42回は「意外」。
先日、僕が出演した春クールのドラマ『エラー』が最終回を迎えました。僕の演じた近藤宏という男は、家族と共に志田未来さん演じる未央の母親の葬儀に参列します。しかし、宏はその場から立ち去り、これまで飲めなかった缶ビールを飲んで突然、大声で叫ぶんです。ご覧になった方もいるかもしれません。
予告であのシーンを見て、「あんなに叫んでいたのだから、きっと何か重要な意味があるに違いない」と考察してくださった視聴者の方もいたようですが、結論から言ってしまうと、あの叫びには特に意味がありませんでした。当然、宏なりに思うところはあったからこそ、ああいう感情の発露につながったのですが、そこまで大きな意味はなかったんです。
ただ、その「意味がない」ということこそが、今作における宏の最大のテーマであり、ある種の“裏切り”だった気がしています。
物語を通して、宏はほとんどの時間を病室のベッドの上で過ごしました。怪しい言動をするわけでもなく、ただ寝ているだけ。それなのに、お見舞いに訪れる周りの人間たちが勝手にあれこれと動くことで、「この男は、事件の真相について何か重大な秘密を握っているのではないか」と、観ている人に思わせていたわけです。結果的に「結局、何もないのかよ!」と拍子抜けさせた、その“外し”こそが宏の役割だったのかなと思っています。
前回も言いましたが、ベッドの上で寝ているだけの芝居というのは、非常に難しいんです。しかも、宏は重症患者ではあるけれど、回を重ねるごとに少しずつ回復していくグラデーションを見せなければいけない。最終話では鼻毛を抜くような間の抜けたシーンもありましたが、あの一瞬、シリアスな本筋から外れるリラックスの要素があったからこそ、家族との冷え切った関係性や、宏という男の素顔が浮き彫りになったのだと思います。期待させておいて、最後は特に何もない。視聴者の皆さんを裏切れたのなら、役者として本望です。
面白いんじゃないか。
「意外性」というのは、実は僕の中の大きなテーマでもあります。少し前には、こんなこともありました。
TOKYO MXで放送中の『湯ったり温泉バラエティ 原田龍二の日本全国!湯一無二』という番組がありまして、僕がCMキャラクターを務めさせていただいているヤマカン(山本漢方製薬)さんにスポンサードしていただいているんですね。
この番組はYouTubeでも動画を配信しているんですが、以前、特別編として、愛知県小牧市にあるヤマカンの工場を見学することになったんです。僕が毎日飲んでいる大麦若葉がどう作られているのかをレポートする真面目な内容なのですが、そこでちょっとした意外性を発揮してしまいました。
工場見学ですから、当然メッシュのキャップを被り、作業着を着るのがルールです。現場で「じゃあ、着替えて工場の中に入りましょうか」となったときに、昔のロケ番組でよくあった、ジャンプして着地すると衣装が変わっているという「カット割り」をやることになったんです。
私服姿でジャンプして、着地したら作業着姿になっている、というのが台本上の正解です。しかし、それじゃつまらない。僕の悪い癖が出てしまいました。ジャンプして工場内に着地した瞬間、僕一人だけ全裸だったら面白いんじゃないかと思ったんです。
もちろん、衛生管理が徹底された工場で裸になるなんてご法度です。ですから、事前に工場見学を案内してくださる山本社長に「僕がぱっと工場に入った瞬間、一人だけ裸になっているというのはどうですか?」とご提案させていただきました。すると、社長が「いいですよ」と快諾してくださったんです。もちろん、衛生上問題のないスペースでの撮影です。
結果、僕が裸で着地し、社長に驚かれて、「あっ!」と恥ずかしがるという、数秒のコントのようなくだりが完成しました。着替えの時間を無駄にしてまでそんなことをやる必要はないのかもしれません。でも、視聴者に「原田龍二って面白いな」「普通にやるだけじゃ終わらないな」と思わせるためには、台本のさらに上を行く提案を自分でしていかなければいけない。それが僕の表現者としての矜持なのかもしれません。
工場見学の件もそうですが、本当にヤマカンさんにはお世話になりっぱなしです。この前は、ヤマカン50周年記念のCMにも出演させていただきました。僕がこれまでに出演したCMの総集編のような内容で、妻と一緒に完成した映像を見たのですが、過去のさまざまな出来事がフラッシュバックして、感慨深かったですね。
また、50周年を機に、ヤマカンさんが僕の出演するCMの主題歌もフルで作ってくれたんです。8小節くらいですかね。歌詞の中に僕の過去の“やらかし”なんかも盛り込まれた、原田龍二にしか歌えない、原田龍二でなければ成立しない世界観の曲です。これからレコーディングをして、ゆくゆくはカラオケにも入るといいなと思っています。僕のWikipediaのディスコグラフィに新たな一行が加わる日を楽しみにしていてください(笑)。
水谷さんを笑顔にしたかった。
少しプライベートな話になりますが、4月に義理の妹である松本明子さんが骨折して入院するという出来事がありました。無事に退院して、もう仕事にも復帰したのですが、先日、彼女から「今度、『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』のゲストで水谷豊さんがいらっしゃる」と連絡があったんです。
水谷さんは僕もお世話になっている大先輩ですから、僕は松本さんに伝言をお願いしました。水谷さんに「ご住職、ご苦労様です」と伝えてほしい、と。
なぜ「ご住職」なのか。実は2年ほど前から、僕と反町隆史くんの二人だけで、水谷さんのことをこっそり「ご住職」と呼んでいるんです。『相棒』でご一緒させていただいた際、水谷さんの佇まいやオーラが、なんだかお寺のお坊さん、それも「徳の高いご住職のようだね」と二人で話したのがきっかけです。ご本人にもそうお伝えして以来、僕らが「ご住職」と呼ぶと、水谷さんも笑って返事をしてくださるという、粋な関係性が続いています。
松本さんを通じてわざわざ伝言をするなら、「お疲れ様です」なんていう普通の言葉では面白くありません。ひと捻りあるメッセージで水谷さんを笑顔にしたかったんです。これも僕なりの、小さな意外性ですね。
僕が長年興味を持ち続けている「未知なるもの」への視点も、最近少し意外な方向へ変化してきています。
以前からUFOや宇宙人には強い関心がありましたが、最近になってアメリカのトランプ大統領がUFOに関する情報を開示しましたよね。でも、正直なところ「今さら言われても」という温度差を感じてしまっている自分がいます。未確認飛行物体の映像なんて世界中で撮影されていますし、そこまで驚きもありませんでした。
今の僕の興味は、UFOよりも断然、ビッグフット(UMA)です。最近また新たな足跡や写真などの目撃情報が出てきています。AIで画像や映像が作れる時代ですから真偽の程はわかりませんが、この2026年という時代にあえてそういったファンタジーに目を向ける風潮自体が、とてもうれしいんです。心にゆとりがないと、妖怪やUMAに思いを馳せることなんてできませんからね。
新しい未知なるものへの興味は、「ニンゲンTV」の今後の展開にも直結しています。
実は、日本国内でネットに載っているような有名な心霊スポットは、もうほとんど行き尽くしてしまいました。残すところあと数ヵ所という段階です。最近はネットに載っていないような手付かずの廃墟に行ったりもしていますが、それにも限界がある。もちろん2周目、3周目もありですが、ゆくゆくはやはり海外に飛び出すのも一つの方法かなと考えています。
心霊スポットに限らなくてもいいんです。台湾には、お祭りの最中に突然神様が憑依し、一切瞬きをせずに群衆の中を練り歩く有名なシャーマンのような方がいるそうです。真言を発しながらズンズンと進むその姿に、僕は強い興味を引かれます。例えば、そういったアジアならではのディープな精神世界や神事に、直接触れてみたいですね。
もちろん、ビッグフットを探す旅にも行きたいです。「どうせお化けなんて映らない」「ビッグフットなんているわけない」と笑う人もいるでしょう。でも、僕にとって重要なのは“結果”ではなく“過程”なんです。いるかいないかわからないものを、純粋な好奇心だけでワクワクしながら本気で探しに行く。そのプロセス自体が最高に面白くて、エンターテインメントなのだと。嘘偽りのない好奇心がなくなったら、このチャンネルは潔く辞めるべきだと思っています。僕は常に最前線に立って、一番楽しんでいる自信があります。ときにはディレクターやスタッフを振り回して、「また原田が暴走してるよ」と呆れられることもありますが、それもまた一興です。
これからも、ドラマ、映画、バラエティ、そしてYouTubeなど、あらゆる場面でみなさんの予測を裏切り、心地よい意外性を提供し続けていきたいと思っています。
まずは、僕の歌うヤマカンのCM主題歌がどんな仕上がりになるのか、恐る恐る期待していてください(笑)。
写真(上から3・5枚目)/森田直樹(アフロスポーツ)
写真(上から1・2・4枚目)/朝倉 健(アフロスポーツ)
Photo(3rd, 5th images from top)Naoki Morita (AFLO SPORT)
Photo(1st, 2nd, 4th images from top)Ken Asakura (AFLO SPORT)