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寺島 進

寺島 進

寺島 進

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子

俳優として、男として、父として……

寺島進の半生を振り返りながら、

その生き様、哲学に迫る連載、第二十回。

 俺、子どもが春休みの時期って、だいたい京都(で撮影中)なんだよね。だから、この時期はカミさんの負担が増えて、あまり“いいお父さん”してないの。

 でも今年はコロナのせいで、学校が休校になって早くから春休みが来て……いや、春休みじゃないか(笑)。でもずっと家にいるから、なかなか大変だけど、例年の春よりはちょっとはお父さんしてるね。ただ、どこも遊びに行くところがないから“いいお父さん”もなにもないんだけどさ。今年も3月は京都で撮影の予定で、俺が先に行って、家族はあとから旅行がてら遊びに来る計画だったんだよ。でも予定が大幅に狂ったね~。

 花見も今年は桜が咲くのが早かったから、ちょうどいい時期に見に行けなかったし……。暑さ寒さも彼岸まで、ってよく言うじゃない。コロナも彼岸が明けたら、ちょっとは配慮して自ら収束して行ってほしかったよね。

今後はもうちょっと

アウトドアな親父に

なろうかな。

 今は外出自粛中だから無理だけど、こういう急に旅行の予定がなくなって子どものパワーがありあまってるとき、キャンプ場とか行けるといいのかなぁ、なんてことを思ったりもしたよ。俺、海系のスポーツは結構やるんだけど、山系はまったく……。山系は駐在さんで力を使い果たしてるからね(笑)。だから、今後はもうちょっとアウトドアな親父になろうかなと思ってる。

 前から『再捜査刑事・片岡悠介』って俺がやらせていただいてるドラマのシリーズで、ずっと一緒だった金子(貴俊)くんが「キャンプに行くなら一緒に行きますよ」って言ってくれてるんだよ。彼はよくキャンプやるみたいなんだよね。それも「家族キャンプ」に詳しいみたい。だから下の子が小学校に入るぐらいになったら教えてもらおうかなぁと。今、年長さんだからね、もうそろそろだから……って、なんか外出自粛だからか、余計にそんなことばっか考えてるよ。

 金子くんといえば、こないだ『クチコミ新発見!旅ぷら』って番組でさ、2人で、フグで有名な山口県下関市に行ったんだよ。

 俺も慣れない食レポとかやって(笑)。街を歩きながら、すれ違う地元の人やお店の人と「こんにちは~」なんて言いながら交流したりする、そういうロケも今はできないからね。急に世の中が変わってしまって、ちょっと不思議な感覚になるよね。まぁ、街ロケも、俺は金子くんの後ろについて行ってるだけなんだけど。あ、全然関係ないけど、そのロケで関門海峡に行ったの。そこで気づいたんだけど……関門海峡って、下関の「関」と門司の「門」を取って、「関門海峡」なんじゃない!? だよね? あ、そういうことか! って。そこに行ってみて初めて気づくことってまだまだあるんだなぁ~と思ったよ。

 そんなわけで俺も家にいますよ。台本も最近は意識して家で読むようにしてて……でも、これはコロナの影響じゃないんだよね。前はいつも外で読んでたんだけど、やっぱり子どもたちに父親が仕事をしてる姿をちょっとは見せとかないといけないなと思ってさ。

 たまぁに京都の撮影所に見学に来ることはあっても、いつも撮影現場を見せられるわけじゃない。でも、よく考えたら、台本を読んだり、一生懸命覚えたりするのも俺の仕事だよなぁと思って。段取り七分じゃないけど、仕事は下準備をしっかりすることが大事。俳優は簡単な仕事じゃないし、簡単な仕事なんてないんだよ、ってことを教えとかないとね。それで少し前から挑戦してるの。

寺島 進

「親父の背中」を見て

何か感じてくれたら

いいなぁと思う。

 やっぱ俺も子どものころから、父親が家で畳の仕事をやる姿を見てきたからね。親父がどうやって家族を養ってきたか、その姿を見てると見てないじゃ、だいぶ違うと思うんだよな。

 最初は気が散ってできねぇんじゃないかと思ったけど、なるべく台本に集中して……。「今、台本を覚えてるから、ちょっと黙っててよ」とか言っても、まぁ子どもははしゃぐわな。俺が台本を読んでるテーブルのところに来たりもするんだけど。それでもなんとなく「親父の背中」を見て何か感じてくれたらいいなぁと思うよね。

寺島 進

 今覚えてる台本がなかなか大変でさぁ。かなり言い難いセリフがあって……もう声に出して何回も何回も練習するしかないんだけど。年を取ると骨格のゆがみなのか歯並びが悪くなって、油断してると滑舌も悪くなるんだよね。俺なんかもともとサ行が苦手だったりして、自信があるほうじゃないから苦労してますよ。滑舌のためにやってること? う~ん、ときどきベロを口の中で回して筋肉を鍛えてる。それやったら結構、疲れるんだよね。それで本当に滑舌がよくなるかわかんないけど、まぁ、気は心っていうかね(笑)。

 物覚えも年々、悪くなるから大変ですよ。ある程度台詞が入ってくると面白くなってくるんだけど、それまでが大変。のたうち回ってる。まぁ、今は時間がたっぷりあるからさ! 粛々と覚えますよ(笑)。

寺島 進

寺島 進 てらじますすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した『ア・ホーマンス』でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマの世界でもその顔は知られるように。本連載をまとめた書籍「てっぺんとるまで!」が発売中。

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子