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寺島進

寺島進

寺島進

撮影/伊東隆輔
取材・文/大道絵里子

Q1. 自分の都合で無理難題を押し付けてくる上司が好きになれません。嫌い嫌いと思っていても仕方ないので飲みに行き、いいところを探してみましたが、無理でした。嫌いな人を好きになるにはどうすればいいですか?

う~ん、この質問は俺にとって難しいな。映画やドラマも一つのチームみたいなもんで、嫌いな人がいても一つの作品を一緒に作り上げないといけない。そういう意味ではこの人と似た状況になることもあるけど、俺の場合、変なやつがいるとズバッと言っちゃうもんね。「それ、おかしいんじゃない?」って。マネージャーにはあんまり言うなって注意されるけど、俺としては愛のムチだもん。でも言っても分かんないやつは分かんないんだよなぁ…。そういうやつのことは、もう嫌いになっちゃうからね(笑)。俺たちの仕事のいいところは期間限定でしょ?どんなに嫌でも『でも、あと二週間ガマンすればいいや!』で、やり過ごすことができるから。ただ、会社員だとそうはいかねえもんな。でも、だからって別に好きにならなくてもいいんじゃない?一緒に飲みに行って話をしたところで、仕事や生き方に対する姿勢を共有できねえやつとは、どこまでいっても平行線。「話せば分かる」なんて嘘だよ。そもそも、この上司は人の上に立つ器の人間じゃないんだから、無理に理解しようとしなくていいと思う。

寺島進

そう割り切った上で、ある意味、世渡り上手になってうまく切り抜けることだね。でも、それができない人や、どうしても上司の存在が大きなストレスになるようだったら、会社を辞めて環境を変えた方がいいんじゃない? ストレスは体にとって一番の毒。別に会社辞めたって死ぬわけじゃないんだから。嫌なやつはどこに行ってもいるし、すべてが理想通りの環境なんてまずない。「それでもあいつと仕事するよりまし!」と思えば、辞めてもいいと思う。だって、この質問してきた人って努力してるもんね。努力はしているけどどうにもならないわけで。だから、結構、努力型で打たれ強い人なのかもしれない。今の世の中、打たれ弱い人間ばっかりだから、そんなあなたに適した良い職場があるよ。それでいうと、俺がおすすめするのはAP(アシスタントプロデューサー)だな。APはみんなにガンガン詰め寄られる仕事だから、打たれ強い人が向いてるの(笑)。伝説のAPになってすごい出世するかもしれないし、嫌な上司のおかげで思いもよらない成功が待ってるかもしれないよ。あ、そうなったら、その上司のこともいい思い出として結果的に好きになれるんじゃないの? まぁ、人生何が幸いするか分からないってこと。視野を広く持って転職もありだと思うよ。

寺島進

Q2. 僕はアイドル好きの会社員です。43歳なので今まで付き合った女性もいますが、アイドルに熱中しすぎていつも愛が覚めてしまいます(アイドル好きなことは彼女にバレていません)。どうすればリアルな女性にもっと興味を持てますか?寺島さんは女性を忘れるほど熱中するものってありますか?

寺島進

こういう人今は多いんだろうね(しみじみ)。でも俺にはまったく分からない。そりゃさ、アイドルに憧れるって思春期くらいまでは分かるけど43歳だろ?ちょっと考えられないなぁ。
俺が言うまでもないけど、精神年齢がお子ちゃまなんじゃないの? そんな男でも付き合ってやろうって女がいるのに、愛情が冷めちゃうって? バカだねぇ…。「どうすればリアルな女性にもっと興味が持てますか?」って、そんなもん自分で考えろよ!(苦笑)。
これ、俺が真面目に回答したところで、聞く耳持つのかな? もし本当に現実の女性と向き合いたいなら、まずは脱アイドルしないとダメだよ。脱アイドルして目の前の女性に向き合わないと。向き合う方法? この男だって付き合ってる女がいた時期もあるんだろう?
次に彼女ができたら、一緒に住んでみりゃいいじゃん。握手会のためにCDを買ったりグッズを買ったりしてアイドルに貢いじゃってるお金を、彼女に「これでやってくれ」って渡して、家賃とか光熱費とか食費とか二人で生活する費用に充てればいい。そしたら、アイドルに現実逃避してる余裕なんてなくなって、目の前の現実と向き合うようになるから。
ハッキリ言うけどさ、無理なんだから、アイドルと付き合うのは。無理なの!!ね?(笑)。
そんなアイドルと比較して彼女を見るからダメなんだよ。現実を直視しなさい!そのうえで、アイドルが好きな自分もさらけ出して、彼女に相談してみればいいじゃん。「いやあ、実はアイドル好きでさぁ。どうしたらいいかなと思って…」って。
俺に聞いてる場合じゃなくてさ。自分のなかの大きな問題を隠して付き合おうとするから、どんどん本気で向き合えなくなるんだと思うよ?まぁ、喧嘩すっかもしれないけど、それはそれでいいんだよ。しっかりぶつかりあって向き合うことだね。
 俺が女性を忘れるほど熱中すること? そりゃあ仕事だな。18歳とか19歳で養成所に通ってる頃なんて、女性から言い寄られてもみんな振ってたもん。デートも行かなかった。

寺島進

だって水商売や肉体労働のバイトをやって、必死で稼いだ金で高い月謝を払って、アクション俳優になるための修行をしてたわけだから。 女に現を抜かす時間なんかねぇよって感じだった。そういう意味じゃ、すごくストイックだったね。でもそういう思いは今もあって、やっぱり仕事が一番なんだよ。そりゃたまには『仕事が終わったら、息抜きに銀座でも行くかな』とか、それくらいはあるよ?でも、どっぷりはハマらないんだ。
まぁ、世の中、悪い女もいるからアイドルに貢ぐくらいまだマシっちゃマシだけど……悪い女に貢いだこと? そりゃ50年も生きてりゃあるだろうよ、バカやろう!(笑)。でも今は、かみさんと子供にしか貢いでない。男はみんなそうなっていくの。それが一番自然で幸せな形だと思うよ。

寺島進

寺島進 てらじま・すすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した「ア・ホーマンス」でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマの世界でもその顔は知られるように。9月には出演作『アンフェアthe end』が公開される。

撮影/伊東隆輔 取材・文/大道絵里子