俳優として、男として、父として……
寺島進の半生を振り返りながら、
その生き様、哲学に迫る連載、第21回。
撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子
俳優として、男として、父として……
寺島進の半生を振り返りながら、
その生き様、哲学に迫る連載、第21回。
3月下旬から続いた撮影自粛も、6月下旬から京都でドラマの撮影が始まって、やっと少しづつ動き出せてる感じだね。もちろん感染対策は気をつけながらやってますよ。毎日、東映の俳優会館に行くと、スタッフもキャストも検温して手も消毒して。暑い中、みんなマスクをして、女優さんとかメイクが落ちないようにフェイスシールドも付けてさ。みんな、こういう状況の中で一生懸命頑張ってくれて、本当にありがたいと思ったよ。
また今回も素敵なゲストの方に来て頂いてさ。俺が座長だから、引っ張らないといけないんだけど、本当にみなさんに支えていただきましたね。やっぱり……なんつーのかな、今回はすべてのスタッフ、キャストに感謝する気持ちを改めて強く感じたというか……いや、決して忘れてたわけじゃないんだけど、自粛期間を経て、なんか鮮明に「感謝」が出てきたというか……。役者ってこういう時、ホントに微力。だから皆さんの力を借りて、少しでもドラマを見てくれた人たちに元気になってもらいたいと思ったんだよね。
楽しくて
元気になるような
ドラマをお届けしたい。
『駐在刑事』もそうだけど、やっぱり楽しくて元気になるようなドラマをお届けしたいじゃない。そういう意味ではこれまでと変わらないんだけど……ただ、京都にいて、こんなに飲みに行かない寺島進は前代未聞ってくらい、どこにもいかなかったよ(笑)。こんな俺、自分でも初めて見た。
心情的には、いつも世話になってるお店の売上に協力してあげたいと思うんだよ? でも、もし俺が感染してしまったら、ドラマの現場でも、東京に帰ったあと家族にも、とんでもない迷惑をかけちゃう。だから、そこは世間の皆さま同様、俺も我慢しなきゃと思ってちゃんと行動を慎みましたよ。撮影が終わったらホテルの近くでパッと食事して、部屋に帰って風呂入って……まぁ、今はしょうがないよなぁ。
だから、京都に行っても友達にもぜんぜん会えなかった。自粛期間のころから変わらずね。ただ、ビデオ通話っつうの? それは娘の誕生日の時に、俺の友達家族とかとやったりしたかな。ま、俺は酔っ払っちゃってたけどさ。
俺、どうも苦手なんだよね~。なんかこう、照れくさいんだよ。もう何十年も前だけど、留守番電話が出回り始めた頃って、メッセージを入れるのも照れくさかったじゃない。デジタルなものにとことん慣れてないんだろうね。昔、事務所当番してた時、明日の連絡をしなきゃいけないのに、定時にかかってくるはずの電話がかかってこなくて。俺から電話して、要件をある留守番電話に入れなくちゃいけなくなってさ。どうやって話したらいいか分からなくて、ず~っと考えこんでたくらい苦手だった。そう思えば時代は進化したよな~。
そういえばデジタル方面でもう一つ新しくやったことがあったよ。それは「Alexa」。あのスピーカーのやつね。「Alexa、今日の天気はどうなの?」とか「好きな曲かけて」とか話しかけたら、Alexaが応えてくれるんだよ。義理の妹がセッティングしてくれたんだけど、子どもたちはあっという間に使いこなしてる。だから、俺もちょっと1回やってみようと思ってさ。「Alexa、ちょっとすいません、ロッド・スチュワートかけて」って言ったら、なかなかいい選曲で、良い音を鳴らしてくるんだよ。すごいもんだね! ただまぁ、やっぱり話しかけるのは、ちょっと恥ずかしいんだけど……。あれって「Amazonプライム」と繋がってるのかな? 俺、機械音痴だから全然わかってないんだけど。
「品」は
ここ数年の
俺のテーマ。
今まではディズニーチャンネルしか見なかった子供たちが、気がついたら自分たちでいろいろ配信を見るようにもなった。レンタルビデオとか借りに行かなくても見れちゃうんだからホント便利だよな。
俺? 俺はね、遅ればせながら、高倉健さんの映画『あなたへ』を見た。いやぁ、さすが健さんは、話し方も歩き方も、全ての表現に品があるなと思ったよ。前も言ったけど、昔よく渡瀬恒彦さんに言われたんだよね。「俺と寺の違いは品の違いだな」って。だから、「品」はここ数年の俺のテーマ。そろそろホントに身につけていかないとな。
ちなみに「Amazonプライム」といえば……三谷幸喜監督が香取慎吾さんとタッグを組んだシチュエーションコメディに俺も出させてもらってます!『誰かが見ている』ってタイトルで9月18日から配信がスタートするの。俺の回は、もう去年末に収録し終わってるんだけどね。12月末の収録だったから、去年のいい仕事納めになったよ。香取慎吾さんとも共演するのは久しぶりだったんだけど、昔と全然変わっていなくて、集中力がすごくて素晴らしかったね。うまく呼吸が合う感じもあって、いい刺激をもらいました。しかも俺の役というのが、俳優生活の中で初めて挑戦するような役で……。もう、知ってる人もいるかもしれないけど、すごいよ(笑)。配信だし、好きな時間に観ることもできるから、たくさんの人に笑ってほしい。よろしくな!
寺島 進 てらじますすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した『ア・ホーマンス』でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマの世界でもその顔は知られるように。本連載をまとめた書籍「てっぺんとるまで!」が発売中。
撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子