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原田龍二

原田龍二

原田龍二

撮影/野呂美帆

象徴的な一つのキーワードについて、

原田龍二が縦横無尽に語る。第14回は「音楽」。

 最近、遊び半分ですけどホーミーを練習していまして、ときどきブログでも動画を公開しています。ホーミーは2つの音域で構成されている喉を使ったモンゴルの歌唱法で、まるで笛のような音が出ます。聞いたら分かると思うので、ぜひ動画を見てほしいですね。初めてその存在を知ったのは22~23歳の頃でした。まだ京王井の頭線の沿線に住んでいたとき、渋谷でストリートミュージシャンがホーミーを披露していたんです。今でもはっきり覚えていますけど、両足首に鈴、お腹にドラ、首にハーモニカを付けた日本人のGoRoさんという民族音楽系のアーティストの方でした。すっかり彼のホーミーが気に入ってしまって、その場でカセットテープを購入して、ときどき聞いていたんです。その後、番組でモンゴルへ行って初めて本場のホーミーに触れるんですけど、草原で聞いたホーミーはとても神秘的でした。もちろんGoRoさんも本場に引けを取らないクオリティだったと記憶しています。

音楽の先生が、

僕の歌を録音した

カセットテープをくれた。

 あの頃からだいぶ経ちますけど、一昨年にホーミー奏者の方がラジオ番組のゲストに来て、やり方を教えていただいたんです。そこからハマってしまって、ときどき車の中やジョギング中にホーミーを練習しています。やはり人のいないところじゃないとできません、びっくりさせてしまうので(笑)。

 もともと歌は好きだったんです。小学校3年生くらいかな、音楽の授業の時間に歌のテストがあって、『白い雲』という課題曲を歌ったんですね。当時はまだ声変わりもしていないし、ソプラノだったと思います。けっこう上手く歌えたみたいで、音楽の先生が「お母さんに聞かせてあげなよ」と、その歌を録音したカセットテープをくれたんです。それがうれしくて。なんとなくそれが僕の歌のルーツだったように思いますね。

 もちろん歌手になるつもりで芸能界に入ったわけではないんですが、なんの因果か20代の頃に曲を出すことになりまして、レコーディングの何ヵ月も前から、ある先生のボイストレーニングを受けることになったんです。その先生は、もうお亡くなりになってしまいましたが、亀渕友香さんという有名なゴスペル歌手の方でした。レッスンの場所は先生のご自宅。一角にピアノが置かれた2階の小さな部屋で、最初は「ここでやるんだ!」と衝撃を受けました。部屋で待っていたら先生がいらっしゃって、「原田くん?」「そうです」「歌は好き?」「はい」みたいな言葉を交わしたのを覚えています。

 先生はアメリカを放浪したこともあるとおっしゃっていて、僕がジャニス・ジョプリンやブルースの女性歌手が好きだという話をするとすごく喜んでくれましたね。ジミ・ヘンドリックスやジム・モリソン、ドアーズなどの話もしたと思います。でも、その日はそんなたわいない話で終わっちゃったんです。それからレッスンを受けにいく度にいろいろな話をしました。だんだん先生と話すのが楽しみになってきて、こう言ったら失礼かもしれませんが、まるで友達に会いに行くような感覚でした。なんでも話せる関係というか。

原田龍二

とても幸せな、

かけがえのない時間を

過ごさせてもらった。

 レッスンはテキストなどがあるわけじゃなくて、先生のピアノに合わせて声を出していくというもので、1~2年は通いましたが、やったのはほぼ発声練習だけ。時間は1時間半ほどなんですけど、疲れたら休んで、お互いに話をしてのくり返しでした。

 レッスンの日は雨の記憶がないんですね。いつも天気が良くて、2階の部屋の窓も開けっ放し。部屋には木漏れ日が射していて、その中で先生と発声練習をしたり、しゃべったり…いつも楽しくて、とても幸せな、かけがえのない時間を過ごさせてもらいました。

 歌以外にも精神的なことを学んだというか、振り返ってみると、僕にとって最初の恩師が亀渕先生だったかもしれません。

 こうして先生から歌の基礎を学んで、歌手として曲をリリースするんですが、正直、自分の歌はそこまで好きじゃないんです。本当はもっと叫ぶような、浜田省吾さんや尾崎豊さんのような歌い方が理想なんですけど、あまりにも差がありすぎて追いつけなかったですね。自分が思い描くものと、自分ができることは別なんだと思い知らされました。ただ、それからはこれまで以上に音楽は聴くようになったと思います。今も聴くのが専門です。

原田龍二

 最近は息子から「パパ、これいいよ」と教えてもらったりもします。けっこう好きな音楽だと思ったら、息子が「昔、パパが教えてくれた歌手の新曲だよ」って。そうやって受け継がれていくんでしょうね。娘も僕の遺伝子を継いでいるのか音楽好きで、ピアノを小さい頃から習っているんですよ。歌も好きで、一緒に車に乗るとBluetoothでつないで洋楽をかけて、「はい、パパ歌って」なんて、無理やり歌わされたりしています(笑)。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)ではMCを担当。

撮影/野呂美帆