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原田龍二

原田龍二

原田龍二

撮影/野呂美帆

象徴的な一つのキーワードについて、

原田龍二が縦横無尽に語る。第27回は「新鮮」。

 実は最近、TikTokを始めました。これまで撮りためていた動画や昔のアナログの素材なんかを引っ張り出して、投稿しています。始めたのは、僕のYouTubeチャンネル「ニンゲンTV」の宣伝のためです。そして、若い人たちにも原田龍二という人間を知ってもらいたかったというのも理由の一つ。短い動画が主流ですけど、僕の動画は少し長めで、そのスピード感は逆に新鮮かもしれません。

 「ニンゲンTV」は、新メンバーとして3名の女性が加わりました。僕に霊能力があって、霊と触れ合うことができれば面白いんですけど、なかなかそういった展開にはならないので、やらせをせずに面白い動画を撮るためには、別の要素を加えたほうが良い化学反応が起きるのではないかと、メンバー全員で話し合いました。

 新加入の3名はオーディションで選ばせていただきましたが、このご縁を大切にして、彼女たちのやる気も汲み取りながら、「ニンゲンTV」を盛り上げていきたいですね。

心がけているのは、

とにかく台本に

忠実に演じること。

 僕は霊現象に遭遇したいし、霊を見たくて心霊スポットを巡っているので、新しいメンバーが加わったことにより、何か新しい風が吹くのではないかなという期待感はありますよね。

 霊現象といえば、この前、『相棒』でご一緒した水谷豊さんから、こんな話を聞きました。僕の演じる陣川公平が久しぶりに寺脇康文さん演じる亀山薫と再会する回だったんですけど、喫茶店のシーンがありまして、近くのお寺が支度場所になっていたんですね。で、僕と寺脇さんが話していたら、豊さんが神妙な顔をして、「いまトイレに入ったら、誰もいないのに声がした」とおっしゃるんです。昼間ですよ。豊さんがトイレで用を足していたら、お年寄りの「よっこいしょ、よっこいしょ」っていう声が後ろからしたと。見渡しても個室の中にも、豊さん以外は誰もいない。作り話をする方ではないので、本当なんだと思います。そういう話を豊さんから聞いたのは、初めてだったので新鮮でしたし、『相棒』の現場の何が楽しいって、こうした豊さんや寺脇さんとのおしゃべりなんです。

 もちろん、お芝居は緊張感を持ってやりますし、こうして何年も『相棒』に参加させていただくのは、無上の喜びです。

 『相棒』のストーリーは練りに練ってあるので、僕が心がけているのはとにかく台本に忠実に演じるということ。あまり深読みをしない。特に陣川公平は何度も登場しているキャラクターなので、変なアレンジをすると辻褄が合わず、設定がおかしくなってしまうんです。セリフも本当に考え抜かれているので、僕が陣川公平を理解して、言葉を発するだけでいい。なんてことを言いながら、アドリブを入れたり、ところどころで余計なことをやっているんですけど(笑)。

 陣川公平もそうですけど、『水戸黄門』の佐々木助三郎こと助さんも、自分に染み込んだキャラクターです。3月には里見浩太朗さん主演の御園座特別公演『水戸黄門』で、久々に助さんを演じることになりました。2015年のドラマスペシャル以来になります。

 里見さんとはお仕事やプライベートでご一緒させていただいているんですが、格さん役の合田雅吏くんとは久しぶりなので、本当に楽しみですし、再び助さんを演じられるんだという感慨もあります。

原田龍二

新鮮な重みと、

救いがある

映画でした。

 そして、2月9日には、僕も参加させていただいた三島有紀子監督の『一月の声に歓びを刻め』が公開されます。

 僕は八丈島での撮影でしたけど、映画は他にも北海道の洞爺湖中島と大阪の堂島を舞台にしていまして、先日、試写で完成したものを拝見しました。八丈島にしても、洞爺湖中島や堂島にしても、その場所の空気感が映像に凝縮されていて、その中にストーリーが落とし込まれていました。洞爺湖の寒々とした空気感が演者の背中を押してくれるし、心情を代弁してくれる。あの3ヵ所だからこそ、こういう映画になったのだと思います。

 普段は考えないようなことを考える映画です。人間の心の中を覗くような映画と言ってもいいかもしれません。だから正直、観終わった後は疲れました。でも、この疲れは嫌な疲れではなくて、いつも使っていない思考回路を使ったことによる新鮮な疲れなんですね。新鮮な重みと、救いがある映画でした。

 八丈島でご一緒させていただいた哀川翔さんもおっしゃっていましたけど、三島監督はこういうものを撮りたいという確固たるものを持っていらっしゃる方で、だからこそ僕ら役者はそれに応えなければいけない。特にこの作品は自分の生き様が出る映画なので。改めて怖い仕事だと思いました。

原田龍二

 八丈島は翔さんともよく釣りをしに訪れていますけど、やはり釣りの時とは雰囲気が異なりますし、気も引き締まります。釣りでは翔さんをぎゃふんと言わせることだけを考えているので(笑)。

 ただ、今回の撮影は翔さんとの普段の関係性が良い方向に作用したように思います。僕は、翔さん演じる誠の心情に寄り添う弟分の龍という役でしたから、翔さんもいい意味で僕に気を使わずにいられたんじゃないでしょうか。割と普段の感じに近い二人の関係性にも注目していただきたいですね。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)や『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。 2月9日公開の映画『一月の声に歓びを刻め』に出演。

撮影/野呂美帆