原田龍二が縦横無尽に語る。第36回は「役割」。
伊豆諸島と小笠原諸島の特産品や郷土料理、郷土芸能などを楽しめる「島じまん2025」が竹芝で開催されまして、僕も八丈島の温泉大使として、5月25日に参加しました。温泉大使ではありますけど、もちろん風呂に入るわけではなくて(笑)、八丈島のブースを盛り上げるために、島寿司や焼酎の販売をお手伝いしました。来てくださった皆さん、本当にありがとうございました!
もう温泉大使を拝命して3年ほどですか。少しは八丈島の温泉のPRができているのではないかと思っています。八丈島もそうですが、日本は各地に温泉があるので、地方へ行くと、そこの温泉に入るのがいつも楽しみです。まだまだ入ったことのない温泉が全国にたくさんありますからね。
1人では出せない味が出る。
そんな僕の“温泉欲”が満たされるような新番組もスタートしました。TOKYO MXの『湯ったり温泉バラエティ 原田龍二の日本全国!湯一無二』は、絶景の秘湯を巡る温泉バラエティで、毎月第4土曜日に放送されています。YouTubeにも番組の動画がアップされているので観ていただきたいのですが、この番組が従来の温泉バラエティと異なるのは、出演者が僕1人ではなく、2人の番組ディレクターと一緒に秘湯を巡るというところなんですね。番組の中では「並ちゃん」「くりりん」とあだ名で呼んでいますけど、川並ディレクターと栗原ディレクターと僕の3人で行動することによって、珍道中と言いますか、1人では出せない味が出てくるんです。
記念すべき第1回目の放送は、栃木県日光市にある「裏カッタテの湯」と呼ばれる野湯を3人で訪れました。野湯なので、山道を登って、川を渡って温泉を探さないといけないんですけど、タレントではない2人がいることによって、視聴者の皆さんはより感情移入ができて、一緒に温泉を探すという感覚を共有できたのではないかなと思います。
ただ、野湯を探し出すのは簡単じゃありませんでした。番組の中で、僕は「スパボイス(温泉の声)を頼りに探す」なんて言っていましたけど、あれは9割が冗談で、1割は本気なんです。野湯のありそうな場所にたどり着いたら、そこからは温泉の香りだったり、音だったり、温泉自体が発信している情報、つまり“声”をキャッチするしかない。そして、それこそが番組内における僕の役割だと思いました。スパボイスを頼りに、なんとかたどり着いた「裏カッタテの湯」は、コケも浮いていましたけど、最高でしたね。
番組のテーマは、“絶景”の“秘湯”を巡ることです。絶景というと、眼下に海を見下ろしたり、目の前に開けた景色が広がっていたりする様子を想像しますけど、それだけじゃありません。「裏カッタテの湯」も、開けた景色が楽しめる温泉ではなかったですけど、温泉を囲む木々が素晴らしかった。第2回で訪れた長野県の下水内郡栄村にある「切明温泉」も、川辺を手掘りする温泉でしたが、自作の温泉に寝そべりながら浸かって、いつまでも川を眺めていました。温泉に入った人にしかわからない絶景と言いますか、この番組で僕の中の絶景の定義が少し変わったように感じます。
置き換えられる。
長野県といえば、長野県の佐久市で一昨年に撮影した映画『ハオト』が8月8日に公開されます。この映画は俳優の丈さんが監督・脚本・プロデュースを務めており、もともとは下北沢の本多劇場で初上演された創作舞台の映画化になります。僕は、俳優としての丈さんしか知らなかったですし、丈さんも映画監督として僕に演出するのは初めてでした。でも、その演出のやり方で、かなり思い入れの強い作品なんだなということはわかりましたし、ご本人にとっても渾身の一作になったと思います。
映画は、太平洋戦争末期の小学校を改装した精神病院が舞台で、実際に佐久市にあった木造校舎で撮影が行われました。撮影の合間に校庭で野球をしていた少年たちと触れ合ったり、見学に来ていた地元の方たちとお話ししたりと、穏やかな雰囲気の中で撮影ができました。それは佐久市という場所が持つ力なのかなと思いますし、そうした空気感も作品に投影できているのではないでしょうか。
僕が演じたのは、戦争や軍を批判して精神病扱いをされた水越という元エリート海軍兵です。当時は国が決めたことに反対するなんて、ありえないことで、まともじゃなかった。つまり、何がまともで、何がまともじゃないのか、現代へのアンチテーゼという意味合いも過分に含まれている映画じゃないかなと僕は思うんです。まともか、まともじゃないかって、自分たちの日常にも置き換えられるテーマだと思うんです。モラルも良識も決めるのは自分たちなんだぞと、突きつけてくる映画だと感じました。
僕の出演している場面で特に観ていただきたいのは、石田隼くんの演じる弟・正和とのシーンですね。水越が軍を辞めるきっかけに弟の存在があり、ネタバレになるのであまり詳しくは言えないのですが、2人が対面する場面は、僕にとっても石田くんにとっても最大の見せ場になったと思います。それは、石田くんがそのシーンに照準を合わせて、ムードを作ってくれたからですし、その彼の姿を見て、僕もスイッチが入りました。
ただ、戦争がテーマの映画ではあるんですけど、シリアスなシーンばかりではなく、例えば、片岡鶴太郎さんや木之元亮さん、三浦浩一さんの役どころなどは、ユーモアをにじませる部分などがあったりして、観終わった後に重苦しくて疲れてしまうタイプの作品ではありません。海軍の将校を演じた長谷川朝晴くんも役者としての魅力に磨きをかけていますし、丈さんの人柄も映画に出ていると思います。ぜひ劇場で観ていただきたいですね。
撮影/野呂美帆