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原田龍二

原田龍二

原田龍二

撮影/野呂美帆

象徴的な一つのキーワードについて、

原田龍二が縦横無尽に語る。第12回は「運動」。

 運動は大切ですよね。この歳になって思うのは、運動しないとどんどん体が言うことを聞かなくなってくるということ。適度に油をさしていかないと、可動域が狭くなってくるんです。特に俳優という仕事は、昔よりも速く走れなくなってきているとか、アクションで息切れするとか、自分の今の運動能力を自覚させられる機会が多いんですよ。なので、体力の維持のためにも意識的にランニングをするようにしています。ただ、1週間に何回とかは決めずに、気分次第で走るのが続けるコツ。時間があっても走らないときはありますし、逆に夜の10時から走りに行くこともある。自分の気分に従って走ることが健康の秘訣かもしれないですね。

 運動は嫌いなほうではないし、小学生のときは剣道をやっていました。1年生のとき、母親に弟と一緒に道場へ連れて行かれたんです。母親の知り合いの旦那さんが師範で、凛々しくて強い人でしたね。まさに武道家という雰囲気で。その道場に6年間通いました。

殺陣では

剣道で覚えたことが

使えなかった。

 剣道は水曜と土曜の週2回、日曜には試合もありました。やっぱりきついんですよ、傷だらけになっちゃうし、夏は暑いし、冬は寒いし。でも、武道は精神を鍛錬するものですし、実際にきつかったことで心身ともに鍛えられた気がします。ただ、6年間やっていたんですけど、時代劇の殺陣では、ほぼ役に立ちませんでした。25歳のときに立ち回りのシーンに挑むことになったんですけど、実際に刀で人を斬るときは、振り切るんですね。でも剣道は振り切らない。当てて竹刀を引くんです。この違いがあるから、殺陣では剣道で覚えたことが使えないばかりか、剣道のときの癖が足かせになってしまって、とても苦労しました。

 高校生のときには空手を習ったんですけど、こちらはアクションシーンでとっても役に立ちました。パンチの繰り出し方やケリの入れ方など、空手をやっていた人とやっていない人では腕や脚の動きが違うんですよね。染み付いているから、とっさに動けるというのは大きかったです。

 そもそもなぜ空手を始めたかというと、格闘技への憧れがあったからなんですね。中学校では陸上部に入って走り幅跳びをやっていたんですけど、捻挫をして大会に出られなかったり、一緒にやっている友達よりも記録が伸びなかったり、あまり上手くいっていなかったんです。そんなときにプロレスに出合うんです。当時は『ワールドプロレスリング』という新日本プロレスの中継が金曜の夜8時からやっていたくらいプロレスが人気で、僕も毎週観ていました。友達もプロレスが好きで、一度、新日が興行をやっている蔵前国技館に連れていってもらったんですね。そこで生の迫力に圧倒されてしまって、さらにハマってしまいました。

 ちょうどタイガーマスクのブームが一段落して、アントニオ猪木さんの正規軍と、長州力さんの維新軍との戦いが盛り上がっていた頃ですよ。よく学生の頃って好きなアイドルのポスターを部屋に貼ったりするじゃないですか。僕はそれが猪木さんのポスターでしたからね。学校にも写真の切り抜きを下敷きの中に入れて持って行きましたし、プロレスラーは僕にとって憧れの存在であり、スターでした。いまだにプロレスラーの方とお会いすると「お!」と思いますから。

原田龍二

もしスポーツ選手だったら

絶対にオリンピックは

出場したい。

 20年くらい前に船木誠勝さんと映像作品でご一緒したときも感動しました。僕、船木さんが15歳でデビューしたときから試合を見ているんですよ。当時の船木さんはプロレスラーを引退して俳優業をされていたときで、撮影のために京都に滞在されていたんですね。僕もちょうど『水戸黄門』で京都に長く住んでいて、たまたま船木さんと同じマンションだったんです。そこからありがたいことに家族ぐるみのお付き合いをさせてもらって、よくみんなでご飯を食べに行きました。

 今も格闘技は見ますね。野球はあまり見ないんですけど、サッカーは息子の影響で見ています。息子は5月にプロサッカー選手を目指してアメリカの大学に進学しました。本当にサッカーが大好きなんでしょうね。小学校のときから「プロになりたい」と言っていましたから。まさかこんなことになるとは思っていませんでしたけど、でもなるべくしてなったとも言える。ずっとテレビはサッカーしか見ませんでしたし、海外の選手も後ろ姿で分かるくらい詳しいんです。そのくらいの熱量があれば可能性は広がっていくかもしれないと思っています。

原田龍二

 7月23日からは東京オリンピックですね。もし僕がスポーツ選手だったら絶対に出たいですよ(笑)。これまで積み重ねてきたものを発表する場ですから。国を背負って、名誉と記録のために戦うというのはどんな気分なんでしょうね。いろいろな意見がありますし、それぞれの立場にならないと分からないことも多いんでしょうけど、選手の気持ちになったらコロナの対策を万全にした上で、この大会を成功させてほしいですね。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)ではMCを担当。

撮影/野呂美帆