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連載
139FEB-MAR 2026.1.10
愛と平和の1時間
俳優・原田龍二
マナー広告動画の「哀川翔篇」「三池崇史篇」に続く第三弾として、「原田龍二篇」がYouTubeのJT公式チャンネルで公開された。キャッチコピーは「歌うように、踊るように、楽しんで、たばこのマナーも守る」。三島有紀子監督の指揮のもと、千葉県の館山砂丘で行われた撮影について、語り尽くす。
象徴的な一つのキーワードについて、
原田龍二が縦横無尽に語る。第39回は「踊り」。

 正直なところ、今回のお話をいただいたときは恐縮しました。第一弾には、哀川翔さんが出演されて、その次の第二弾が三池崇史監督ですよね。お二人の後に僕が続くというのは、もちろん光栄な気持ちもありつつ、やはりプレッシャーというか、身の引き締まる思いがありました。

 ただ、今回も三島監督が撮られるとお聞きして、だったらもう、すべてお任せしようと腹をくくりました。“原田龍二”という素材をどう料理していただけるのか。まな板の上の鯉じゃないですけど、三島監督の手腕にすべてを委ねて、自分自身もそのプロセスを楽しもう。そう思って現場へ向かいました。

 事前の打ち合わせのときにもお話ししたのですが、当初、僕の中の勝手なイメージでは、僕がタキシードを着て川をドンブラコと流れていくような、そんなシュールな画を想像していたんです。でも、制約もあって川での撮影は難しいということになり、最終的に選ばれた場所は海に近い千葉県の館山にある砂丘でした。現場に着いて「なるほどな」と唸りました。場所のチョイスからして普通じゃない。日常ではまずお目にかかれない、見渡す限り、砂の世界だったんです。

 僕はこれまで、番組でジャングルや大平原など、視界の中に人工物が一切入らない“何もない場所”に行くことも多かったので、あの荒涼とした景色の中に立った瞬間、すごく身体に馴染む感じがしました。「しっくり来た」という言葉が一番近いかもしれません。

 映像を観ていただければわかると思いますが、キャッチコピーには「楽しんで、たばこのマナーも守る」とあります。一見すると「マナー」と「楽しむ」って、相反する要素のように思えるかもしれません。マナーというと、どうしても守らなければいけない確固たるルールだと思われがちですが、僕があの砂丘で表現したかったことは、もっと根源的なことだったんです。

 それは、要するに「自分らしく生きる」ということ。心と体を開放して「自然を全身で感じる」ということ。そこを突き詰めていくと、自分らしくあることや自然を感じることこそが、ひいては社会のマナーを守ることにもつながっていくんじゃないかと思うんです。頭でっかちに「守らなきゃ」と意識するのではなく、ただ「自分らしく」そこにある。自然体でいることができれば、周囲との調和が生まれ、自然とマナーも守れる。動画では、そういう“在り方”のようなものを表現したかったんです。

 撮影当日は、これ以上ないほどの晴天に恵まれました。砂丘というのは不思議なもので、光だけでもまったく陰影がつかずにのっぺりとして怖いですし、逆に影だけでも得体の知れない不気味さがある。あの日は、太陽の光と砂丘の作り出す影のバランスが絶妙で、最高のロケーションだと感じました。

 その中で、僕は踊りました。細かい振付があったわけではありません。全体の流れだけが決まっていて、あとは自由に、感じるままに踊りました。

踏ん張れないということは、
流れに身を任せるしかないということ。

 普段から走ったり体を動かしたりはしていますが、あの砂丘での動きは、そうしたいつものトレーニングとは別ものでした。何が違うって、足元が砂なんですよ。裸足で砂の上に立つと、まったく踏ん張りが効かないんです。固い地面なら、足に力を入れて踏ん張って、そこから次の動作へと力強く移行できますが、砂だとそれができません。

 でも、だからこそよかった。踏ん張れないということは、力でどうにかしようとせず、流れに身を任せるしかないということです。バランスを崩しそうになっても、抗うのではなく、崩れた体勢のまま次の動きへと流れていく。

 僕の踊りがコンテンポラリーダンスのように見えたかもしれません。あれは緻密に計算して作り上げたものではなく、あの場所、あの砂の感触、そして三島監督の作り出した世界観があったからこそ、自然と引き出された動きでした。もし平らな床の上だったら、ああいった動きは生まれていなかったでしょうね。

 撮影では砂をすくい上げるシーンがありました。三島監督からは「ただすくうのではなく、その砂から自然のエネルギーを感じてください」という指示がありました。でも、同時に「感じすぎて動きを止めないで、流れの中でやってください」とも言われました。その塩梅が難しかったのですが、なんとかやり切れたと思います。

完成した映像を観て、
自分らしいなと感じた。

 三島監督は本当に誤魔化しが効かない方です。以前、映画『一月の声に歓びを刻め』でご一緒したときも感じましたが、役者の心を完全に見抜く映画監督だと思うんです。例えば、「今、30%しか感じていませんよね。じゃあ、あと70%はいけますよね?」と、言葉にしなくても心に訴えかけてくるような感じがするんです。だからこそ、僕も嘘のない表現で応えるしかない。あの圧倒的な大地のエネルギーに飲み込まれないように、自分の中のエネルギーを放出させて対峙する。そんなヒリヒリするような、でも最高に気持ちのいいセッションでした。

 完成した映像を観て、改めて「自分らしいな」と感じました。 もし本職の舞踏家の方が演じていたら、もっと流線形の美しい、滞りのない完璧な動きになっていたでしょう。でも僕が舞ったことで、僕のキャリアなりの“リアル”が出たんじゃないかなと思います。美しく見せようとか、上手に踊ろうとか、そういう作為的なものを削ぎ落として、ただただ、あの瞬間の自然を感じて動いた結果が、あの映像なんです。練習して作り上げたものではなく、その場で感じたままに動いたからこそ、観る人の心に何かが引っかかるような、そんな映像になったのかもしれません。

 マナーも、生き方も、きっと同じだと思うんです。ガチガチに踏ん張って無理をするのではなく、足元の状態を感じながら、流れに身を任せてみる。そうすることで初めて見えてくる景色や、生まれてくる調和がある。館山の砂丘で風に吹かれながら、そんなことを思いました。

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。現在、『原田龍二の日本全国!湯一無二』(TOKYO MX)に出演中。『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。

撮影/森田直樹(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Morita(AFLO SPORT)
ヘアメイク/松永香織 衣装/宮坂 青