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141MAY-JUN 2026.5.8
愛と平和の1時間
俳優・原田龍二
現在放送中のヒューマンミステリードラマ『エラー』で原田龍二が演じているのは、事件の鍵を握る一人の男。クライマックスに向かう中で、この嘘と真実の物語にどう向き合っているのだろうか。また、自身のYouTubeチャンネルでは、熱量を持って霊を追い求めながらも、どこか俯瞰で状況を観察している。それは、安易な盲信を拒み、真理に到達しようとする誠実さに他ならなかった。
象徴的な一つのキーワードについて、
原田龍二が縦横無尽に語る。第41回は「真偽」。

 4月12日から放送が始まった『エラー』ですが、僕は近藤宏という男を演じています。宏は、志田未来さん演じる未央の母親がビルの屋上から転落した際に巻き込まれて、意識不明の重体となってしまうんですね。そして、昏睡から目覚めた宏の発言が波紋を呼ぶことになる。ドラマをご覧になっていただいている方はわかると思いますが、宏の「屋上に、もう一人いた」という言葉をきっかけに、物語は事件へと大きく舵を切ることになります。

 このドラマの魅力は、やはり人間模様だと思います。未央もそうだし、畑芽育さん演じるもう一人の主人公であるユメもそうですけど、友情や猜疑心、人々の思惑に翻弄されていく姿が一番の見どころではないでしょうか。

 宏に関しては、多くはベッドの上で、目覚めてからはぼーっと窓の外を眺めているようなシーンもあります。役者としては、その空白の時間に何を考えるべきか、ということなんです。「なぜ自分は助かったのか」といった宏の葛藤を深掘りすることもありますが、油断すると「次のロケで行く心霊スポット」のことが頭をよぎってしまう。これは役者という職業の面白いところでもあり、どこか適当で不思議な部分でもあります。たとえ頭の中で全く関係のないことを考えていたとしても、映像として「思案している男」に見えていれば、それで成立してしまうわけですから。

好きという熱い気持ちが、
未知の世界の扉を開く鍵になる。

 ただ、病床のシーンならではのストレスもありました。僕が目をつぶって寝ている傍らで、志田さんや僕の妻役の菊川怜さん、娘役の北里琉さんらがお芝居を繰り広げているわけですが、僕はそれを見てはいけない。周囲の皆さんは寝ている僕の顔を見ながら演技をしているのに、僕はまぶたを閉じたまま、音だけを聞いている。これは非常にじれったい経験でした。

 ちなみに、菊川さんとは『アスコーマーチ~明日香工業高校物語~』という2011年のドラマでも夫婦役でした。そのとき僕はDV夫の役でしたが、今回はベッドで動けない僕を彼女が介抱するわけですから、なんだか面白い巡り合わせを感じます。

 ドラマもいよいよ終盤戦に入りました。僕は最終回までの展開を知っていますが、一つヒントをお伝えするのであれば「なんだよ、宏!」という感じでしょうか。たしかにストーリーが最初に大きく動いたという意味では、宏はキーパーソンかもしれませんが、あまり期待はしないでください(笑)。ただ、当たり障りのない展開に身を置く役よりも、視聴者の皆さんに「なんだ、この男」と思われたほうがいい。そうやって自分を慰めています。ぜひ、最後まで楽しんでいただければ幸いです。

 ドラマもそうですが、相変わらずバラエティ番組にも呼んでいただいています。先日もテレビ大阪の『初耳怪談』に、僕のYouTubeチャンネル「ニンゲンTV」でお世話になっている降魔師の阿部吉宏さんと一緒に出演させていただきました。

 そこでもお話しましたが、いつかは霊を見てみたいし、取り憑かれたいという強い願望が僕にはあります。とにかく霊感が欲しいんです。俳優としての演技力よりも。こんなことを言うと怒られてしまいますが(笑)。

 よく「原田さんは霊が好きすぎるから、逆に見えないんじゃないか」と言われることがありますが、そうは思いません。心霊スポットへ行く際、冷やかしや軽い気持ちで足を踏み入れるのは、そこにいる霊に対しても失礼だと思うんです。この“好き”という熱い気持ちこそが、いつか未知の世界の扉を開く鍵になると信じています。

 一方で、世の中で「霊を見た」と怖がっている方の多くは、実は自分の恐怖心が生み出した幻影を見ているのではないかという疑念も持っています。暗闇の中で点が3つあれば顔に見えてしまう“シミュラクラ現象”や自己暗示といった心理的な要因が怪異を作り出しているケースが、残念ながらほとんどではないでしょうか。

二つの可能性が、
常に表裏一体である。

 僕はこれまで数多くの心霊スポットに足を運んできましたが、少なくとも「自分自身が霊に取り憑かれる」という感覚を抱いたことは一度もありません。「取り憑けるものなら取り憑いてみろ、上等だ」というくらいの気概でいますから、霊の側も「この人間はやばい」と敬遠しているのかもしれません(笑)。

 もし万が一、ロケ中に僕が失神するようなことがあれば、それは本物の怪異が起きた一つの証になります。ですが同時に、それを見ている視聴者の方の中には、「はは~ん原田、ここで芝居をして仕掛けてきたな」と思う人もいるでしょう。真実を伝えたい自分と、疑われる自分。その狭間に立たされることも、こうしたYouTubeチャンネルをやっている宿命なのかもしれません。

 おかげさまで多くの方に支持していただいている「ニンゲンTV」ですが、僕が大切にしているのは、どんなに不可解な現象が起きても、常に“疑う目”を持ち続けるというスタンスです。100%は信じません。1%でもいいから疑うことが大事だと考えています。

 以前、ロケ中に“呪いの石”に触れ、その後すぐに足を切る怪我をしたことがありました。バラエティ番組などでは、その怪我と呪いを紐づけて話すこともありますが、根底には首をかしげる自分もいます。「単なる偶然じゃないのか?」「もし本当に呪いがあるのなら、足を切る程度で済むものなのか?」という疑念です。

 4年前に「ニンゲンTV」で訪れた秩父の廃村でのエピソードも象徴的でした。心霊YouTuberのやーかずくんとのコラボ企画だったのですが、彼がその廃村で奇妙な写真を拾い、それを阿部さんが供養のために持ち帰ったんですね。そうしたら、その直後に二人とも交通事故に遭ってしまった。たしかに恐ろしい符号です。ですが、僕はここでもあえて疑います。夜通しのロケで疲労が溜まっていれば、運転ミスが起きる確率は上がります。それは霊の仕業ではなく、物理的な不注意の積み重ねではないのか。そして何より「なぜ原田龍二には何も起きなかったのか」ということです。

 そもそも霊など本当は存在しないのか。それとも、僕が強い守護霊に守られていたからなのか。この二つの可能性は常に表裏一体です。どちらか一方に過度に傾倒してしまえば、真実を見失ってしまう。これからも「ニンゲンTV」を続けていく上で、少なくとも僕は冷静な監視役でありたいと考えています。そうしなければ、「ニンゲンTV」という船は、妄信という名の荒波に飲まれて遭難してしまうからです。

 また、「ニンゲンTV」の動画の説明文には、「※この動画はお祓い済みです」というテキストを入れてあります。あれも視聴者の皆さんに安心していただく配慮であると同時に、ある意味では「それほど危険なのか」と怖がってもらう仕掛けでもあります。ここでも安心と恐怖が表裏一体となっています。僕個人としては、お祓いなどせずに、そのままの「剥き出しの恐怖」を提供したいという思いもありますが。

 未知の世界を知りたいという強い思いはあります。しかし、いつもお伝えしている通り、結局のところ霊や死後の世界の正体は、僕が亡くなってからでないとわからないのかもしれません。少しでもその片鱗のようなものに触れられればという思いで、今後も精力的に活動していきたいですね。

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。現在、『原田龍二の日本全国!湯一無二』(TOKYO MX)に出演中。『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。テレビ朝日系ドラマ『エラー』に出演中。

撮影/森田直樹(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Morita(AFLO SPORT)
スタイリング/鈴木浩子 ヘアメイク/松永香織
衣装協力/MEN'S BIGI est.1975、UNION STATION by MEN'S BIGI