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原田龍二

原田龍二

原田龍二

撮影/野呂美帆

象徴的な一つのキーワードについて、

原田龍二が縦横無尽に語る。第15回は「夫婦」。

 昨年2021年の11月に妻が『別れない理由』という本を出版しました。僕も読みまして、素直にいい本だな、面白い本だなと思いました。ぜひ皆さんに読んでほしいですね。僕も出版イベントなどで宣伝をさせていただきましたけど、世に出す以上はとにかく大勢の人に手に取ってもらわないと、内輪で盛り上がっているだけになってしまいます。それは何でもそうですよね。内容に関しては、僕が知らないことは一つもありませんでした。30年以上一緒にいて、その中で僕ら夫婦に起きた出来事が書かれています。読み応えはあると思いますが、妻はあれでも書き足りなかったと言っています。

 本にも書かれていますけど、僕と妻の出会いは『ミュージックステーション』内のミニドラマでした。彼女は僕の恋人の妹役で、2~3回くらいの共演だったと思います。その後、僕のデビュー作でもある『キライじゃないぜ』で再会して、交際に至るんですが、普通はデビュー作で付き合わないですよね。それどころじゃないはずですから(笑)。

彼女は僕のことを

「変な人」だと

思ったでしょうね。

 余裕があったわけではないんですけど、やはり気になる存在だったんでしょうね。当時、僕は埼玉の実家から緑山スタジオに通っていて、彼女は茅ヶ崎から通っていました。撮影が夜遅くなると、「タク送」といってタクシーで送ってもらえたんです。僕は比較的出番が多かったので、スタジオの仮眠室に泊まることもありましたけど、あるとき彼女と一緒にタクシーで帰ることになって、そこでいろいろと話したのがきっかけだったかもしれません。現場ではあまり話す時間がないですから。グループ交際から始まって、徐々に仲を深めていったという感じです。

 当時はよく2人で写真を撮りにいきました。僕の写真集を出すときに、自分で撮影した写真も載せることになりまして、その個人的な撮影に付き合ってくれて。場所は廃墟や工事現場だったので、デートとはいえないかもしれませんが。本当はディズニーランドがよかったのかもしれないですけど、あまり当たり前のデートも面白くないかなと思ってしまって、釣り堀に連れて行ったり……。たぶん彼女は僕のことを「変な人」だと思ったでしょうね。

 今回、本の出版PRイベントで結婚式をさせていただきましたけど、僕が昔、結婚を発表したときも、実はドラマのPRを兼ねていたんです。当時、僕は永作博美さんが主演の『婚外恋愛』というドラマに出演していまして、プロデューサーのほうから「番宣にもなるし」ということで発表することになったんです。

 ただ、そういうふうに持ちかけられなかったら発表するつもりはありませんでした。いくら芸能人とはいえ、僕は結婚発表をする必要はないと思っていまして。もちろん「結婚しましたか?」と聞かれれば「はい」と答えますけど、わざわざ報告することはないのかなと。

 結婚式も挙げていませんし、結婚指輪も買ってないです。そこにお金をかけるのであれば、別のところに使おうという考えなんですね。妻には僕の価値観に付き合わせてしまったところはあるんですけど……。

 たとえ価値観が一緒でも100%わかりあえることはないですからね。必ず意見は食い違います。でも、それでいいんです。仲のいい夫婦の定義っていろいろあると思いますが、これだけ地球上に男女がいる中、一緒になった時点で、ある程度そのニュアンスは含まれているのではないでしょうか。

原田龍二

妻に手を握られながら、

お互いに泣いて、

旅立つのが理想。

 お互いに出会って、一緒にいるということに価値を見出していれば、それが「いい夫婦」なんじゃないでしょうか。隣の芝生……じゃないですけど、「あの家庭は幸せそうだな」と思っていても、本当のところはわかりませんから。

 家庭は本当にそれぞれの形があります。それは、自分の両親を見ていてもそう思います。僕の父は仕事熱心なサラリーマンで意外と破天荒な人なんですね。母は専業主婦で絵に描いたような真面目な人。その関係性は、僕たち夫婦とはやっぱり全然違いますから。

 表面上は仲がよさそうでもいがみ合っている夫婦はいるはずですし、離れた場所に住んでいても通じ合っている夫婦もいます。結局、最期の亡くなる瞬間に、夫や妻が側にいてくれるかどうかだと思うんです。それまでは離れ離れでも今際の際に来てくれるかどうか。最終的な関係というのはそこで決まる気がします。

原田龍二

 僕も、最期は妻に手を握られながら、お互いに泣いて、旅立つのが理想です。あ、これは僕が先に逝く前提ですけどね(笑)。

 もちろん、夫婦関係ってそれだけがすべてではないですが、ある意味、そこで答え合わせができるんじゃないかと思います。僕もこれ以上悪さをしなければ、たぶん妻に手を握ってもらえる……のではないでしょうか。首を絞められないよう、精進したいと思います。

『別れない理由』(著:原田 愛/講談社)
第1章 やっぱりきた!3年目の浮気
第2章 交際期間10年を経てやっと結婚、したのに…
第3章 世間にバレた不倫騒動。息子、娘は…家族の再生
第4章 波乱万丈な私にとっての幸せ
第5章 別れない理由

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)ではMCを担当。

撮影/野呂美帆