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141MAY-JUN 2026.5.8
信頼と絆が仲間をつなぐ。
滑稽で愛おしい男たちの物語。
俳優・本宮泰風

 2013年に始まった『日本統一』シリーズは、今やDVDのみならず、地上波放送や配信プラットフォーム、映画などでも絶大な人気を誇る国民的な任侠エンターテインメントとなった。物語の屋台骨を支えるのは、氷室蓮司率いる山崎一門の面々だ。そんな彼らが躍動するスピンオフ映画『劇場版 山崎一門Ⅱ~日本統一~』が、2026年6月12日に公開される。2022年の映画化第1弾に続き、今作ではどのような物語が描かれるのだろうか。氷室蓮司としての重責を担いながら、総合プロデューサーとして作品の舵をとる本宮泰風は、プロジェクトの始動についてこう語り出す。

「もともとスピンオフとして展開していた『山崎一門』というドラマシリーズがあったのですが、一度は途絶えてしまったんです。でも、僕はどこかでこのシリーズを続けたいという強い思いがありました。というのも、『山崎一門』は、本編の『日本統一』で描かれる氷室と田村(山口祥行)の友情や抗争の緊張感とはまた別の、彼ら個々のキャラクターを掘り下げられる場所だったからです。同時に、僕や山口以外の俳優たちがメインを張って、存分に活躍できる場所を形にしたいという気持ちもありました。第1弾の『劇場版 山崎一門』に続き、『氷室蓮司』と『田村悠人 ISOLATED』を経て、そろそろもう一度、山崎一門の映画をやってもいいんじゃないか、という流れになったのは、自然なことだったと思います」

 その言葉からは、長年共に歩んできた共演者たちへの深い信頼と、彼らの才能をより多くの観客に届けたいという情熱が伝わってくる。今作は、喜矢武豊演じる翁長照邦(テル)を主軸に据えた群像劇だ。シリーズ特有のハードな展開は残しつつも、どこかコミカルで、笑いと涙が同居する独特の空気感が漂う。

「山崎一門のメンバーは、本当に面白い連中ばかりなんです。だから、それぞれのキャラクターを立たせようとすると、ついコメディの方向に振れてしまうこともあります。本編の中ではそこまで振り切ったことはできないので、ここぞとばかりに遊んでしまう部分はあるかもしれませんね。脚本に関しても、彼らの性格を知り尽くしているからこその完全な“当て書き”です。彼らが演じるからこそ成立する物語なんです」

 劇中では、鼻詰まりで何を言っているかわからない山村(川﨑健太)や、あまりに覇気のない中島(舘昌美)の姿など、観客をニヤリとさせる演出が随所に散りばめられている。

「『山崎一門』シリーズの魅力は、一言で言えばその“人間味”です。もちろん強くてかっこいい姿も見せますが、それ以上にダメなところが大事だと考えています。女にだらしなかったり、食いしん坊だったり、あるいは何かに騙されてしまったりと、そういう欠点があるからこそ、視聴者の方々が親近感を持って、愛してくださるのではないかなと思います。完璧な人間なんていませんから、彼らの“しょうもなさ”をどれだけ愛おしく描けるかというのが、僕のこだわりかもしれません」

 今作では、仲間を思うあまり、テルが数珠の力と怪しげな宗教団体に心酔してしまうところから物語が動き出す。センシティブな題材にも思えるが、プロデューサーとしての視点は極めて冷静だ。

「僕らが物語を作るときは、まずシチュエーションから逆算することが多いんです。今回は、“仲間を助ける”というシチュエーションを軸に据えたかったので、仲間がどんな窮地に陥ると物語が展開していくかを考えました。はめられたのか、それとも自分の意思で行動したのか、そう突き詰めたときに今回の設定を思いつきました。ただ、決して宗教そのものが悪いという話にはしたくなかったんです。宗教に救われる人もたくさんいますから、あくまでシチュエーションを描くための装置として、このテーマを選んだということです」

 今作でも、そして本編の『日本統一』でも、脚本の段階でコンプライアンスや表現方法などには細心の注意を払っている。

「今の時代、コンプライアンスが非常に厳しくなっているのは事実です。ただ、僕自身そこまでポリシーがないタイプなので、時代の変化に対応することは苦ではありません。一つ作業が増える程度のことです。それに、コンプライアンスに準じることで、より多くの方に安心して作品を見てもらえるようになるのであれば、それはむしろポジティブなことだと捉えています。ある意味では昔ながらの任侠作品のファンを裏切っているのかもしれませんが、抗争の中にある絆だったり、生き様だったりというのは、僕なりに残しているつもりです」

 撮影現場においては、ほぼ演技などに口を出すことはないというが、一方で役者の自発性を引き出す独自の考えもあった。

「今作でいえば台本8、アドリブ2くらいの割合です。普段のシリーズの撮影でも、僕はよく“台本はあくまでガイドだ”と言っています。面白いことが放り込めるなら、どんどんやってみればいい。もちろん、狙いすぎるとあざとくなって面白くないんですが、真剣に取り組んでいる中から、ふとあふれ出す副産物のような面白さが僕は一番好きなんです。山崎一門の連中に対しても、芝居の細かい指示はしていません。基本的には任せています。もし仕上がりを見て納得がいかなければ、次はどうすべきか自分で考えて、反省して、悔しがればいい。人から言われて直すよりも、その方がずっと身に付きますから」

 撮影現場の雰囲気は、まるで“男子校の休み時間”のようだという。

「現場を訪れた方は、みんなそうおっしゃっています(笑)。ここ最近はドラゴンボールやポケモンについて、山崎一門全員で、誰が一番詳しいかを競い合っていました。僕は全く知らないのですが、メンバーたちの“マウントの取り合い”を見ているだけで面白いですし、いつも山口と二人で笑っています。僕はそういったマンガやアニメの知識がないので、だいたい肉体的なコミュニケーションになります。みんなが集まったら、“やろうぜ”と提案して、相撲を取っています(笑)。でも、そういう他愛もないやり取りの中にこそ、本当の信頼関係があると思うんです。先ほどコンプライアンスの話をしましたが、それはあくまで第三者や視聴者に向けたものでしかありません。誤解を恐れずに言えば、いつも一緒にやっている連中やスタッフの間には、コンプライアンスなんてありません。信頼関係がベースにあれば、言葉を選びすぎることなく、本音でぶつかり合えるし、素でもいられます。そんな現場だからこそ、あの熱量が生まれるのだと思います」

 今作のゲストには、お笑い芸人であり俳優としても名高い木村祐一が出演。プロデューサーとして、以前から彼の才能に惚れ込んでいたという。

「キム兄には真っ先に出演をお願いしました。黙って座っているだけで、任侠映画の主役が張れるほどのビジュアルをお持ちですし、笑いも芝居も極めて高いセンスがある方なので、絶対に面白くしてくれるだろうという確信がありました。それに、山崎一門の若いメンバーたちが、彼のお芝居に触れることで、何かを吸収してほしかったという思いもあります。木村さんも台本通りにはいかない方ですから(笑)、一緒に絡むことでメンバーも引き上げられるはずですし、そうした化学変化を僕も楽しみにしていました」

 最後に、この作品を通じて届けたいメッセージを聞いた。

「今作には“孤独”や“疎外感”といったテーマが隠れています。この春から上京して一人で働いている人や、ふと社会の中で孤独を感じている人にこそ、この映画を観て、笑ってほしいと思っています。山崎一門のみんなが仲間のためにと空回りしながら奮闘する姿を見て、“信じるべきものは、意外と近くにあるのかもしれない”と感じてもらえたら嬉しいですね。一見、バカバカしくてくだらないことばかりやっていますが、そのくだらなさの中に、実は一番大事なものが転がっています。そんな僕らの“真剣な遊び”を、ぜひ劇場で体感してください」

本宮泰風 もとみややすかぜ 俳優。1972年生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビュー。『日本統一』では主演として、主人公の氷室蓮司を演じる傍ら、総合プロデューサーとして作品を統括。
『劇場版 山崎一門Ⅱ~日本統一~』
2026年6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開

中国マフィアによるクスリの取引現場に乗り込んだ山崎一門。ピンチに陥るものの、くしゃみをしたテル(喜矢武豊)のおかげで銃弾を避けることができた。しかし、反撃に向かう一門をよそに手首の数珠をさするテル。氷室組事務所でも数珠をさするテルを氷室(本宮泰風)は訝しげに見つめていた。倉庫で回収したクスリの見張りをしていた石沢(本田広登)は、テルから数珠によって起きた奇跡を聞かされ、<虹の光の会>という団体の預言者の話を聞きに行こうと誘われるのだった。
『劇場版 山崎一門Ⅱ~日本統一~』
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撮影/アフロスポーツ
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