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141MAY-JUN 2026.5.8
侠の仕事と人生と
俳優・本宮泰風
シリーズ最新作となる『日本統一74』が5月6日にリリースされた。物語は組織の世代交代という大きな転換点を迎えているが、主演であり総合プロデューサーの本宮泰風はそこに“男の美学”を見出す。また、快進撃を続ける『龍が如く Powered by 日本統一』の裏舞台から、盟友・山口祥行と挑んだバラエティ番組まで、変幻自在に境界線を越え続ける俳優の現在地を紐解く。
圧倒的な存在感を放つ俳優・本宮泰風が、
出演作や私生活を語る連載の第3回。

 5月6日に『日本統一74』がリリースされました。正直なところ、僕自身は常に次、また次へと撮影に明け暮れているので、「74作目では何をしたっけ?」と一瞬記憶を探ってしまうこともあるのですが(笑)、今回のエピソードはシリーズ全体を通しても一つの転換点になります。

 具体的には、侠和会では馬場(桑田昭彦)が会長代行に、丸神会では迫田(中野英雄)が会長に就任して、人事が動き出します。一般社会のニュースを見ていると、トップの交代劇というのは不祥事や経営悪化といったネガティブな理由であることが多いですよね。でも、『日本統一』における交代は、トップの“責任の取り方”という、実に任侠作品らしい、ハードボイルドな美学に基づいています。次を任せられる人間が出てきたときに、自分たちは消えるのを覚悟で最後の勝負に出る。そういった男の引き際を描いていきたいという思いがあります。『日本統一』の交代劇は、今の時代から見れば少し古風に映るかもしれませんが、やはり組織を背負ってきた人間の最後というものは、非常に美しいなと感じるんです。

 もっとも、プロデューサー的な視点で舞台裏を明かしてしまうと、トップの交代劇や、それに伴う人事的な動きは、この先の展開を見越したステップとしての側面もあるということです。シリーズはこれからも続いていきますから、こうした回があるからこそ、次につながる大きな展開に期待していただけるのではないでしょうか。『日本統一74』では、組織のダイナミズムを、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

最大限のリスペクトを込めたが、
批判される可能性もあった。

 また、前回もお話しした『龍が如く Powered by 日本統一』ですが、配信がスタートしてから、ありがたいことに非常に高い評価をいただいています。レビューの声も僕の耳に届いています。やはり良い評価をいただけるのは素直にうれしいですね。

 今回の制作で最も苦労したのは、原作への「忠実さ」と、ドラマとしての「脚色」の割合でした。『龍が如く』というゲームは、ストーリーが膨大で、台本も驚くほどの厚さです。それを限られた尺の中に凝縮する際、何を削り、何を残すか、その選択が非常に難しくて、苦労もしました。ゲームファンの方々に納得してもらえるよう、セリフを忠実になぞりつつも、僕らが撮った先のストーリーへスムーズにつながるような、プロモーションとしての役割も果たさなければなりませんでした。

 そして、何より不安だったのが、ゲームのCGを使用した演出方法です。僕らにとっては最大限のリスペクトを込めた手法でしたが、一歩間違えれば、ゲームファンの方々から「茶化しているのか」「ふざけている」と取られかねない危険がありました。ビッグタイトルを扱う以上、その批判は覚悟していましたし、何かあれば僕が責任を取るつもりで挑みました。ただ、それをしっかりとリスペクトとして受け取っていただけたのは制作者冥利に尽きます。「よし、術中にはまってくれた!」という思いでもあります(笑)。新しい表現に挑戦する怖さは常にありますが、そこを乗り越えて喜んでいただけると、やはりホッとしますね。

 一方で、ここ最近、僕が「これはうまくいったのかな」と感じるものがあります。それが、CSのフジテレビTWOで放送された『極道スイーツ~コワモテ俳優2人のぶらり絶品甘味巡り~』という番組です。番組名の通り、僕と山口祥行の二人がミルクレープやパフェなどのスイーツを食べ歩くという、これまでの役者人生の中では考えられないような仕事でした。

 最初にオファーをいただいたときは、「面白いな」とは思いましたが、正直に言えば、これが僕一人の出演だったら、絶対にお断りしていました。「山口と一緒なら」というだけで受けた仕事です。

 実際にロケをしてみた感想は……もう、反省しかありません(笑)。僕はこれまで“役”を演じることで生きてきました。台本があり、キャラクターがあれば、何をすべきかは明確です。しかし、バラエティでカメラの前に立った瞬間、自分をどう持っていけばいいのか、全くわからなくなってしまったんです。「俺は今、誰なんだ?」「本宮泰風としてどう振る舞えばいいんだ?」と、自問自答しているうちに終わってしまった感覚です。もっと素を出すべきだったのか、それとももっとサービス精神を出すべきだったのか、設定がない中で自分をさらけ出す難しさを痛感しました。制作サイドの方からは「プライベートな感じで結構ですので」と言われましたが、そうはいっても難しかったですね。

手に入れるための苦労に
見合う価値があった。

 SNSで話題にしていただいたり、レギュラー化を望む声をいただいたりするのは本当に光栄ですが、僕自身は今でも「あの映像を全部引き上げてほしい」と思うくらい、恥ずかしさが勝っています(笑)。どうしても観てみたいという方がいるのであれば、CSの再放送やFODなどで視聴できることはお伝えしておきます。

 ただ、この番組のおかげで、僕の「スイーツ観」は劇的に変わりました。もともと甘いものは好きでしたが、コンビニスイーツで満足するタイプで、わざわざ行列に並んでまで食べる人の気持ちが理解できなかったんです。

 しかし、今回お邪魔した「朝7時にネット予約が始まり、数分で完売する」というミルクレープの名店で考えが変わりました。一口食べた瞬間、「なるほどね」と思わざるを得ませんでした。並ぶだけの価値、手に入れるための苦労に見合う何かがそこには確実にあったんです。「これまで損をしていたのかもしれない」とすら思いました。

 これまで「並ぶのが嫌い」という理由だけでスルーしてきた世界の中に、こんなにも豊かな体験が隠されていたのかと驚きました。今でも自分が並ぶかどうかは別ですが、少なくとも「並んででも食べたい」という人たちの熱量には、心から共感できるようになりました。これは僕の人生において、小さくない収穫だったと思います。

 良い経験をさせてもらいましたが、今後のバラエティへの出演については、ひとまず保留ですかね……(笑)。役者としての本分を忘れず、コツコツと現場を積み重ねていくのが僕の流儀ですし、バラエティのフィールドで上手に立ち回れるタイプではないことも身を持って知りました。

 ただ、状況が重なり、「出てもいいかな」と思えるようなタイミングで、僕にまた何かをさせてみたいと思う奇特な方がいらっしゃるなら、ぜひ口説きに来てください(笑)。

本宮泰風 もとみややすかぜ 俳優。1972年生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビュー。『日本統一』では主演として、主人公の氷室蓮司を演じる傍ら、総合プロデューサーとして作品を統括。

撮影/アフロスポーツ
Photo by AFLO SPORT

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