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139JAN-FEB 2026.1.10
自然に逆らわず、ただそこにいる。
辿り着いたのは、シンプルという境地。
俳優・原田龍二

 俳優として、タレントとして、あるいはYouTuberとして、原田龍二は常に何かしらの現場に立ち続けている。2025年11月上旬、千葉県の館山で行われたマナー広告の動画とスチールの撮影では、風が吹きすさぶ砂丘と、波音が絶え間なく響く海辺に佇んでいた。

「スチール撮影では、自然体でそこにいることを意識しました。僕の背景にあるのは、館山の砂丘や海。その雄大さに負けないように自己主張するのではなく、むしろ溶け込むように立っていようと思ったんです。ただ海を見ているし、ただ岩にもたれかかっている。アースカラーの衣装も自然と調和してよかったですね。“今、どういうふうに撮られているのだろう”という邪念もなく、作られていない自分を撮っていただきました。自分らしくあることが、マナーを守るということでもある。一人の被写体として、そういうメッセージを込めたつもりです」

 その館山での撮影から数日後。11月中旬には、東京から南へ約290km離れた八丈島に降り立った。原田は八丈島大使として、同じく大使を務める哀川翔と共に来島。台風被害の復興支援のため、2日間限定で1200食ものうどんを無料で振る舞った。カウンターに立ち、うどんを振る舞う原田らに、島民たちは頬を緩ませた。

「僕らが八丈島に訪れたのは、台風で島内に甚大な被害が出てから1ヵ月ほど経ってからでした。これまで何度も八丈島には訪れていましたけど、あれだけ大勢の島民の方と触れ合ったのは初めて。みなさん、笑顔で喜んでくださいましたけど、きっと僕らには想像もできないような大変な目に遭われていたと思うんです。断水や停電など、ライフラインにも大きな影響が出たと聞きました。僕らが行くことで、少しでも元気になっていただければという思いしかありませんでした。そして、ようやく八丈島大使としてのお役目を果たせたという思いです」

 最初に想像したのは、島民たちの心情だった。

「僕が逆の立場だったらどう感じるのかなと思ったんです。ああ、自分たちのことを忘れていなかったんだ、八丈島のことを覚えてくれていたんだという気持ちになるかもしれない。そう考えると、あのタイミングで島へ行けてよかったですし、ようやく大使であることが大きな意味を持ったのだと思いました。島のあちこちに僕らの等身大パネルが立っているんですけど、今回の活動を経て、“芸能人だから”ではなく、“大使だから”パネルにしていただいているという確かな意味が付け加えられました」

 また、2025年末は複数のドラマの撮影現場にも足を運んだ。シリーズに欠かせないキャラクターの一人である陣川公平役として、『相棒』の撮影に参加。さらに、WOWOWオンデマンドで先行配信がスタートし、2026年1月17日からはWOWOWプライムでの一挙放送が控えている新ドラマ『お金のことがちょっとわかる刑事ドラマ「カネデカ!」』では、主演として現場をけん引した。タイトルからして異彩を放つこのドラマは、殺人事件の捜査を通じてお金の知識が学べるという意欲作だ。

「かなり面白い作品だと自信を持っておすすめできます。僕が西条という先輩刑事で、岡部ひろきくんが等々力という後輩刑事。この二人が、お金の動きから事件の犯人を突き止めるというストーリーです。投資や節税など、お金にまつわるあれこれをホワイトボードで説明しながら、“おそらく保険金殺人だな”みたいな感じで推理するんです。ただ、僕自身はお金に無頓着なタイプなので、セリフを覚えるのがとにかく大変でした。普段使わない金融用語や専門的な解説が、膨大なセリフとしてのしかかってくる。しかも1話あたり約5分というショートドラマのため、会話のテンポが非常に速い。明瞭かつスピーディーに専門用語を操りながら、刑事として芝居をする必要がありました」

 過酷でありながらも、笑いに満ちた現場だったという。

「小山亮太監督が本当にユニークな方で、“そんなことしちゃっていいんですか?”というような演出ばかりなんです。例えば、取調室で被疑者に親父さんの遺言書を僕が読み上げるシーン。普通、遺言書って封筒から恭しく取り出すものじゃないですか。でも、なぜか僕が丸めて耳に挟んでいる(笑)。そこから取り出して“お前の親父さんから預かってきた”って。おかしいでしょう?」

 現場での思いつきやアドリブが次々と採用されたそうで、そんなノリと勢いが作品の雰囲気にも反映されている。

「真面目なテイストのシーンもあるのかなと思われるかもしれませんけど、だいたいは超ふざけてますし、クレイジーですよ(笑)。いわゆるバディものですが、全然スタイリッシュじゃありません。僕はサングラスをしていたり、オールバックだったりするので、いわゆる昭和の刑事のニュアンスも漂っています。台本には“かっこよくて、ダサい”と書いてある(笑)。ギャグもあちこちに散りばめられているので、ぜひ隅々まで楽しんでもらえたらと思います。もちろん、軸にはお金への学びがありますから、きっと観て損はないですよ」

 ふざけながらも学びがある。混沌としているようで芯が通っている。それは、どこか自身のスタンスに通じるところがあるのかもしれない。2026年という新しい年を迎えた今、そのスタンスに変化はあるのだろうか。

「大きな変化はありませんが、2026年は今以上に“執着しない”生き方をしたいですね。執着しないということは、投げやりになることではなく、こだわりを捨てることでもない。もともとそんなものはありませんが、地位や名誉、見栄といった心を重くする余計な装飾をより削ぎ落としたいという意味です。一層、執着せずに感覚を研ぎ澄ませていきたい。では、感覚を研ぎ澄ませた先に何があるのか。それはおそらく、自分が生まれてきた意味に辿り着くのだと思います。結局はそれが僕の永遠のテーマだし、YouTubeでの活動も含めて、すべてはその旅の道中だと思っています」

 人は年齢を重ねるにつれて、知識を得て、経験を積み、それと同時に守るべきものや怖いものが増えていく。社会的な立場や世間体、将来への不安。知らず知らずのうちに誰もが不自由さを抱えているのかもしれない。

「シンプルでありたいですよね。もっともっとシンプルに。昔は“シンプル・イズ・ベスト”という言葉をチープに感じていたこともありましたけど、最近はだんだん好きになってきています。着飾ったものを外していく作業の先には、裸の自分がいる。きっと生まれたままのような、恐怖も不安も知らない自由な感覚がある気がするんです。もしかしたら、その感覚には一生辿り着けないのかもしれませんけど、でも、目指す方向はそっちですね。ふんどしさえも取っ払って、生まれたときの感覚に戻ることが僕のゴールなのかもしれません」

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。現在、『原田龍二の日本全国!湯一無二』(TOKYO MX)に出演中。『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。

撮影/森田直樹(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Morita(AFLO SPORT)
スタイリング/鈴木浩子 ヘアメイク/松永香織
衣装協力/MEN'S BIGI est.1975、UNION STATION by MEN'S BIGI