動画
連載
139JAN-FEB 2026.1.10
侠の仕事と人生と
俳優・本宮泰風
連載の第1回目は、主演にして総合プロデューサーを務める『日本統一』について。熱狂的な支持を集めながら、10年以上続いてきた大ヒット任侠ドラマシリーズへの思いとは。組織論にも通じる現場づくりや、盟友・山口祥行との関係性など、侠(おとこ)が貫く仕事と人生の流儀に迫る。
圧倒的な存在感で画面を支配する俳優・本宮泰風が、
出演作やプライベートなどを語り尽くす新連載。

 連載の最初ということもあるので、やはり『日本統一』の話をさせていただきます。この作品は僕にとって、もう単なる出演作ではありません。仕事の比重としても、人生における関わり方としても、まさにライフワークそのものです。撮影期間が終われば俳優としての仕事は一区切りつきますが、プロデューサーとしての役割に終わりはないんです。次のシリーズの脚本づくりに入り、ロケ地を探して、キャスティングを考えなければいけない。ロケの下準備をしてくれているスタッフから「いい場所がありました!」と連絡が来れば、みんなでロケハンにも行きます。

 もう365日、『日本統一』に関わっているような感覚です。他のドラマや映画に参加しているときでさえ、「あ、この俳優いいな、『日本統一』に出てくれないかな」とか、「このロケ場所は『日本統一』のあのシーンで使えるな」なんて、頭のどこかで常に考えています(笑)。完全に生活の一部になってしまっているんです。

 長年一緒にやっているスタッフも、別の現場で一緒になると「『日本統一』でどうですか?」と、良さそうなロケ場所のリストを渡してくれたりもします。周りも「本宮泰風=日本統一」という認知が定着しているのを感じますし、僕自身も今やその認識ですね。

 シリーズが始まって10年以上が経ちました。初期の頃と比べて変化はあるのかと聞かれることもありますが、実はあまり意識していないんです。というのも、台本上の役柄も僕自身の年齢に合わせて歳を重ねていますから。無理に若作りすることもないですし、老け込む芝居をする必要もない。役と共に自然に歳を重ねているので、その点では、すごく自然体でいられています。

 ただ、過去の作品を見返すことはあります。それは自分の演技チェックのためではなく、組織図や人間関係の確認のためです。僕らが描いている任侠の世界というのは、実は一般の会社組織と全く同じなんです。兄貴や親分はいわゆる“上司”。物語の中で出世することもあれば、降格することもある。関係の構築が何より重要で、組織の論理で動く社会です。だからこそ、長く続けば続くほど、「あれ、あの人とはどういう関係値だったっけ?」「彼は以前、どのポジションにいたかな」という確認が必要になる。会社員の方が人事ファイルを確認するような感覚に近いかもしれません。

 最近、ビジネス街のカフェで打ち合わせをしていると、スーツ姿の会社員の方から声をかけていただくことが増えました。一般のビジネス層にも支持されているのは、この作品が描く人間模様が現代社会の縮図になっているからだと思います。もしかしたら、会社員としての自分を投影したり、組織での振る舞い方のヒントにしたりしてもらえているのかもしれません。実際に「こんな上司がいたらいいのに」という声をいただいたこともありました(笑)。僕らも作る段階から、単なるバイオレンスではなく、組織で生きる人間の群像劇として、働く人たちの共感を得られるようなキャラクター造形を意識しているので、あの感想はうれしかったですね。

現場が楽しければ、
人は自然と能動的になる。

 プロデューサーという立場で現場を見るとき、僕が一番大切にしている“マイルール”があります。それは、立場の強くない人たちが楽しいと思える現場にするということ。具体的に言えば、出演シーンの少ないキャストや、スタッフの中でもアシスタントや助手などの若い子たちです。彼・彼女らが現場に来て、「楽しいな」「また明日も来たいな」と思えるかどうか。そこに全神経を注いでいます。

 ドラマの現場って、どうしても主演俳優や監督、プロデューサーといった、いわゆる立場の強い人間だけで盛り上がってしまうことがあるんです。その人たちは「雰囲気のいい現場だった」と満足して帰るけれど、端の方にいるスタッフたちは名前も呼ばれず、「そこの人」扱いで終わってしまうこともある。それでは本当に良い現場とは言えません。僕自身、昔はワンシーンだけの役もたくさんやってきましたから、そういう現場の寂しさは身に染みて分かっているつもりです。

 現場が楽しくなければ、足取りは重くなる。逆に「あそこに行けば楽しい」と思えれば、人は自然と能動的になります。アシスタントの子たちが楽しんで働いている現場は、生産性も全然違う。撮影後の撤収作業一つとっても、『日本統一』の現場は誰もぼーっとしていません。みんなが「自分の現場だ」という当事者意識を持って動くから、とてつもなく効率が良くなるんです。だからこそ、僕や山口(祥行)のような立場の人間が誰よりも気を使い、率先して動く。それが『日本統一』の流儀であり、強い組織を作るための僕なりの哲学と言えるかもしれません。

ビジネスパートナーを選ぶ基準は、
作品への愛があるかどうか。

 共演者の山口とは、もう家族よりも長い時間を共に過ごしています。彼との関係性を言葉で表すのは……正直、難しいですね。2~3年考え込んでも答えが出ないかもしれません(笑)。ただの共演者ではないし、ビジネスパートナーとも少し違う。もちろん友人ではあるけれど、それ以上の唯一無二な存在です。

 彼に対しては、言葉を選ばなくていいという圧倒的な楽さがあります。例えば、人には言わないでほしい話をするとき、普通なら「ここだけの話にしてくれ」と前置きが必要ですよね。でも、彼にはその一言がいらない。僕の口調や表情だけで全部察してくれる。そこはすごく信頼しています。四六時中ベタベタ一緒にいるわけではありませんが、同じ方向を向いて歩いている安心感もある。名前のつけようのないこの関係性が、作品の空気感にも滲み出ているのだと思います。

 『日本統一』も、おかげさまで最近は地上波ドラマ化や映画化、コミカライズなど、メディアミックス展開が増えてきました。ただ、実は僕らから「これをやりたい」と営業をかけたことは一度もないんです。

 僕らのスタンスは常に“待ち”。でも、ただ待っているわけではなく、フットワークは軽くしておく。ありがたいことに外部からお話をいただくときは、たいてい担当者の方が『日本統一』のファンでいてくれるんです。「この作品が大好きだから一緒に何かやりたい」という熱量を持って来てくれる。僕らがビジネスパートナーを選ぶ基準は、何よりも“作品への愛”です。例えばコミカライズの話が同時に複数の会社から来たとしたら、条件面よりも「一番この作品を愛してくれているのは誰か」で選びます。好きでいてくれる人と組むほうが間違いなく良いものができる。一から説明しなくても最初から阿吽の呼吸で進められるし、何よりも熱意が乗りますから。

 こちらからガツガツ仕掛けるのではなく、作品自体が持つ引力のようなものを信じて、愛を持って近づいてきてくれる人との縁を大切にする。そうやって“運”を引き寄せていくのも、長く仕事を続けていく上での一つの合理性なのかもしれません。

本宮泰風 もとみややすかぜ 俳優。1972年生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビュー。『日本統一』では主演として、主人公の氷室蓮司を演じる傍ら、総合プロデューサーとして作品を統括。

撮影/西村 尚己(アフロスポーツ)
Photo by Naoki Nishimura(AFLO SPORT)

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