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杉野 片島監督はずっと第一線で活躍されている映画のプロですけど、子どもの頃から映画は好きだったんですか?
片島 僕は熊本の生まれで、昔はそんなに映画館もなかったんです。ただ、近所に4本の映画をずっと順繰りに上映している名画座があって。小学生の時にやらされていた剣道が嫌で、稽古をサボって時間潰しによくそこに行っていたんですけど、いつ行っても『大脱走』をやっていて、合計で50回くらいは見ました。
杉野 すごいですね。お小遣いで見ることができたんですか?
片島 とても安かったんですよ、その映画館。中学生の時は女の子から誘われて、初めて街の映画館でデートをしたんです。2館並んでいる映画館で、彼女はソフィア・ローレンの『ひまわり』を見たかったんですけど、僕は隣で上映していた『ヤコペッティの残酷大陸』に興味があって。結局、お互い別々に映画を見ちゃって、その子とはそれっきりでしたが(笑)。
杉野 衝撃的なエピソードですね(笑)。実際に映画に関わるのは、もう少し先ですか。

片島 そうですね。大学受験に失敗して浪人するんですけど、だんだん大学への熱が冷めてしまい、特に目的もなく上京して歌舞伎町の焼き鳥屋で働くんです。そこで仕事仲間が8mmで自主映画を撮っていて、現場を覗いたりしているうちになんとなく軽い気持ちで、横浜放送映画専門学院(現:日本映画大学)というところに入って。卒業後はCMの制作会社に就職したんですが、CMの現場に付くことはなく、デパートの社内向けの建設記録映画を撮っていました。その時、ご一緒したのが実はなんと川島雄三監督のカメラマンだった人で、いろいろと助けていただきました。
杉野 すごい出会いですね。
片島 その人の話を聞いているうちに、初めて映画に対する憧れみたいなものが芽生えてきて、制作会社を辞めて、友人のツテで助監督の仕事をやることにしました。でも、制作進行見習いとして連ドラを1本やった直後に、バイク事故で仕事ができなくなってしまって。そんな時、東映から間違い電話が掛かってきたんです。なぜか僕をセカンドの助監督だと勘違いしたみたいで。でも、これを逃したら次はないと思って、そのまま引き受けたのが『スケバン刑事』でした。

杉野 いきなりセカンドとして現場に入るのは厳しいですよね。
片島 もうめちゃくちゃでした(笑)。ただ、半年経つ頃にはだんだん仕事も覚えて。当時、全盛期だった2時間ドラマのロケで全国を回ったりもしましたね。そういった仕事をしていく中で、エキストラを集める人間を探している現場があると言われて、飛び込んだのが『私をスキーに連れてって』で、それが最初に携わった映画作品になりました。その後の『マルサの女2』では、初めて演出部として参加したんです。
杉野 映画の“本線”に入っていったんですね。
片島 チーフとして金子修介さん、三谷幸喜さん、周防正行さんの現場を経験して、最近では鈴木雅之さんとか。本数は金子さんが一番多いのかな。

杉野 どの監督も片島さんを離したくないんでしょうね。
片島 でも、このままずっと助監督でいいんだろうかという思いもあって。35歳ぐらいから脚本を書きはじめて、サンダンス映画祭の脚本コンペに応募したり。でもなかなか難しかったですね。
杉野 そうなると、その次のチャンスで『ハッピーウエディング』を撮ることになるんですか。
片島 細かい演出の仕事はやっていたんですが、映画となると……でもあれはブライダル会社用の映画で、一般公開はされていないんです。ただ、オーディションで選んだ主演の吉岡里帆さんが今では大女優になられて。映画も周りの人からの評判が良いんですよ。

片島章三 かたしましょうぞう 映画監督、脚本家。1959年生まれ、熊本県出身。矢口史靖監督、周防正行監督、三谷幸喜監督、鈴木雅之監督の作品などで助監督を務める。2016年に吉岡里帆主演の『ハッピーウエディング』で長編映画初監督。2019年には脚本・監督補を務めた『カツベン!』が公開される。最近はディズニープラスで配信された『シコふんじゃった!』で演出を務める。

杉野 35歳頃から脚本を書かれているということでしたけど、周防監督の『カツベン!』も片島さんの脚本ですよね。
片島 10年くらい前からずっとやりたいと思っていた企画で、何度も脚本を書き直していたんですね。でも、なかなか映像化には恵まれなくて、やるとしても超低予算になると。そんな中、周防さんが「撮らせてほしい」と手を挙げてくれて、それならと。
杉野 映画の題材になっている活動弁士には、もともと興味があったんですか?
片島 映画学校時代にチャップリンの映画を見て、活動弁士の存在を知ったんです。

片島 当時は弁士の話術でヒットが決まると言われていたぐらいで。それは面白いと興味を持ったのがスタートでしたね。
杉野 今後もオリジナル脚本で、という思いはあるんですか?
片島 僕が最初に書いた脚本は、実体験をもとにした地元の熊本が舞台の音楽ものだったんです。それがサンダンスに出したやつで。
杉野 今ならチャンスがあるんじゃないんですか?
片島 音楽ものって日本ではウケづらいんですよ。一時期、動いてみたんですけど、なかなかお金を出してくれるところもなくて。もちろん諦めたわけではないんですけど。
杉野 今、何か構想を練っているものはあるんですか?

杉野 剛 すぎのつよし キャスティングディレクター。黒澤明監督に師事し、『乱』『夢』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』で助監督を務める。その後、キャスティングに転向。近年では『もしも徳川家康が総理大臣になったら』『帰ってきたあぶない刑事』に参加。

片島 何年か前に作ったプロットをもとに書いているものがあります。あ、これも考えてみたら音楽ものかもしれない(笑)。
杉野 どんな話なんですか?
片島 まだ具体的には話しづらいんですが……僕、『ザ・コミットメンツ』という音楽映画が好きで、いつかああいうテイストの作品を撮りたいですね。今は現場に入りつつ、コツコツと脚本を書いている状態で。
杉野 チーフ助監督と両立されていくということですね。
片島 そうですね、半々です。僕は現場が好きなので、こんな感じでやっていければと思っています。

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