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白石和彌

白石和彌

白石和彌

撮影/野呂美帆

映画監督の白石和彌が、現在公開中の

『孤狼の血 LEVEL2』について語る連載の第6回。

 映画の公開から1ヵ月。すでに2度、3度と劇場へ足を運ぶ熱狂的なファンもいる中で、白石監督はリピートする際の“見どころ”を教えてくれた。

「前作はバディの話でしたけど、実は今回もバディものなんです。(松坂)桃李くん演じる日岡がいろいろな人と対になっている。(中村)梅雀さんの瀬島や(村上)虹郎くんのチンタとも組んでいるし、(鈴木)亮平くんの上林とだってそうですよね。そういうバディ感というのは意識しているので、改めてそこにフォーカスしてもらっても面白いかもしれないです」

 そして、もう一つ。

「観ていない人もいますし、壮大なネタバレなので言えないですけど、ある人の表情には最初から注目しておいてほしいですね。僕も編集のときはずっと見てしまいました。騙しているくせに、なんでこんな顔ができるんだろう、何を考えているんだろうって」

人生勉強にしては

刺激が強すぎる

かもしれない。

 まるで激流のような139分。観終わった後に、誰かと熱く語りたくなるタイプの映画でもある。

「ありがたいことに、いろいろな感想をいただきました。エゴサーチみたいなことはあまりしないんですけど、SNSでも映画の公式がリツイートしているものが目に入ったり、面白い意見はスタッフがスクショして送ってくれたりしてます。“元気が出る”というコメントが多くて、それはやりきった感が伝わっているんだと思います。あと、“鈴木亮平がヤベェ”という意見はマストですね(笑)」

 公開前からコロフェスなどのイベントや、商品やアーティストとのコラボも話題になった。

「僕も全然聞いていないので、突然もみじ饅頭とコラボしたりして驚きますけど(笑)でも、それで広島全体が盛り上がってくれるのであれば、すごく嬉しいですよ」

白石和彌

 ロケ地となった広島も、熱い思いで映画を支えている。現在、広島フィルム・コミッションでは、『孤狼の血 LEVEL2』をより楽しむためのデジタルロケ地マップを公開中。ファンにはたまらないロケ地情報が盛りだくさんだが、白石監督はその一つでもある上林組の”根城”となった五十子会総本部のロケ場所について、こんな裏話を語ってくれた。

「五十子会総本部はトラックやバスを専門に扱う自動車ディーラーの保養所を借りたんです。その会社が卓球チームを持っていて、会社側から“選手たちの人生勉強として撮影を見学させてほしい”と言われたんですね。でも、五十子会総本部のシーンって、上林が死体を燃やしたり、シャブを打ったり、よりにもよってというシーンばかりなんですよ。正直に話したんですけど、それでもいいと言われたので、選手たちに見てもらったことはありました。人生勉強にしては刺激が強すぎるというか……全シーンひどいですから(笑)」

 暴れまわる上林と、対峙する日岡。ハイテンションのまま物語は突き進む。

「原作者の柚月裕子先生も“前作は観た後立ち上がれなかったけど、今回は観た後立ち上がって叫びたくなった”とおっしゃっていて。それはとても嬉しかったですね。あと“『3』もオリジナルにしちゃっていいので、作ってみてください”とも話していました。本当ですか?って聞き返してしまいました」

もし続編を作るのなら、

『1』や『2』とは

手触りを変えたい。

 続編については、誰もが知りたいところ。白石監督の頭の中では、いくつか考えが浮かんでいるようだ。

「こんな感じかな、というのは出てきているので、これからみんなと共有していこうとは思ってます。何年後になるかはちょっとわかりませんけど、もし『3』を作るのであれば、『1』や『2』とは手触りを変えたいですね。全員が麻雀で決着をつけるとか(笑)」

 シリーズを通して描かれているのは、警察とヤクザの人間模様だ。

「少なくとも『3』をやるんだったら、もっとヤクザをたくさん出して、ガチなヤクザ映画にしたいというのは思っています。そもそも『1』も『2』もヤクザ映画じゃなくて刑事ものなんですよ。盛り上がっているからいいかなとも思うんですけど、SNSでも“初めてヤクザ映画観たけど面白かった”と書いている人がいて、いや刑事ものだから、と(笑)。なので、『LEVEL2』はヤクザ映画が苦手な人も、刑事ものだと思って観に来てほしいですね」

白石和彌

 続編のキーアイテムになるのは、やはり日岡が譲り受けたライターになりそうだ。主演の松坂は前号のインタビューで「ライターが日岡からまた別の誰かに渡っていくというのも面白いかもしれない」と語っていたが……。

「実は、『LEVEL2』は、最初そうなるかもしれませんでした。でも、まだまだオオカミにはなっていなかった。日岡はなったような気でいましたが、まだオオカミになれていなかったという話なので。いつかその日がやって来たら、誰かにあのライターを渡すのかもしれませんね」

白石和彌

白石和彌 しらいしかずや 映画監督。1974年生まれ、北海道出身。中村幻児監督主催の映像塾に参加。以降、若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として活動。2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画監督デビュー。主な監督作品に『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『牝猫たち』『彼女がその名を知らない鳥たち』『サニー/32』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』『麻雀放浪記2020』『凪待ち』『ひとよ』など。現在、映画監督がリレー形式で別府を舞台にした映画を撮る「Beppu短編映画プロジェクト」の1本目となる作品を制作中。他、『仮面ライダーBLACK SUN』が2022年春にスタート予定。映画『死刑にいたる病』が2022年公開。

撮影/野呂美帆