知野美紀子
FILT編集長。
あくびが
多い。
知野美紀子
FILT編集長。
あくびが
多い。
2016.1.20
取材をしながら涙がこぼれるという恥ずかしくも貴重な体験をさせていただいたのは、金田一秀穂先生にお話を伺っている時でした。
「先生にとって、きれいな言葉とはどんな言葉ですか?」
そう伺った時、私の頭の中で予想をしていた答えは、金田一先生がこれまで日本語を学ばれた中で印象に残った深い意味のある言葉、もしくは日本独特の情緒を表す言葉だろうと考えていました。しかし、先生がお話をされたのは意外にも「ぬいぐるみに女性が声をかけるような言葉」という返事でした。
つまりそれはどういうことかというと、「話しかけている意味を理解できないものに対し、心から素直に発された言葉が美しい」ということでした。
何もわからない赤ちゃんがたった1年やそこらで言葉を習得していくのは、つまり「心から自分の思いを伝えたい」というお母さんの誠実な言葉のシャワーを浴びているからなのでは、先生は言葉を続けられました。
確かに動物なども鳴き声でコミュニケーションをはかります。しかし「言葉」を持つのは人間だけなのです。その言葉を進化させたのは人間であり、そしてそれを愛の言葉にも憎しみの言葉にも変えていくのは私たち言葉を操る人間なのです。
言葉の誕生から進化まで、そして言葉のもつ愛の深さを感じさせる金田一先生の回答に思わず涙がポロリ、となってしまいました。恥ずかしい話です。でもこれもきっと、金田一先生の心から誠実に思っている言葉だからこそ、これほど胸に響いたのでしょう。
世界の情勢や日本の政治経済など、周りで飛び交う言葉を見れば、それらは決して喜びばかりを与えてくれる言葉ではないのが現実です。だからこそ同じ言葉を語るのであれば、愛のある美しい言葉をなるべく発していきたいなと改めて思いました。そしてそれらの言葉が周りの人々を明るく照らすものになれば、なお嬉しいな、と。
それにしても金田一先生のお話は本当に面白く、しかもとてもためになる!取材前にもいくつかご著書は拝読させていただきましたが、さらに読んでみようとネット書店で「ポチっとな」、をした次第です。