知野美紀子
FILT編集長。
あくびが
多い。
知野美紀子
FILT編集長。
あくびが
多い。
2015.1.20
ずっと前からFILTを楽しんでくれていたみなさま、こんにちは。
そして、今回WEBではじめてご覧下さったみなさま、はじめまして。
12年続いた小冊子のスタイルから一変、2015年1月20日よりFILTはこれまでの小冊子のスタイルをリニューアルしたものに加えて、新しくWEBでも展開をしていくことになりました。
どうぞこれからお見知りおきください。
昨年末のことです。あるテレビ番組で「日本人の読書人口がスマートフォンやインターネットの普及と共に減少してきた」ということで、その影響について特集をしていました。このテーマを組んだ番組に登場されたジャーナリストの立花隆さんが、「まずこのコンテクスト自体がスマホを否定的にとらえている」と最初にお話をされていました。また「知的環境の変化の中で、この変化を使って能力をあげている人もいる」とも解説をされていました。
この件、少し話題になったのでご存じの方も多いかもしれませんね。この番組を見て私は読書量の減少ということよりも、改めて自分の中にある「紙へのこだわりとネットを通して知る情報への偏見」を思い知らされました。そしてもう一つ、非常に心に残ったのが「本は知情意の媒体である」という言葉でした。
新しいWEB版FILTは、これまでの小冊子版のFILTを作ってくださったコピーライターの岡本欣也さん、そしてデザイナーの清水正己さんに多くのお力をお借りしました。お二人とも「紙媒体」への大きな愛情をお持ちの方です。だからこそ、その愛情とこだわりを持ったまま、ネットで更に面白いことをやろうと様々なご提案をしてくださいました。
「紙だからできたこともあるけれど、より身近に情報を得られるようになったパソコンやスマホで新しいことに挑戦をしよう」そして「新しいWEB版FILTを観てくれた人が、ただの情報の流し読みではなく、少しでも心が動いたり、ざわついたりするようなものを作ろう」
わたしたちが目指したのは、まさに前述した言葉を借りれば「ネット上の知情意の媒体」なのかもしれません。多くの情報が1秒間に考えられないほど大量にアップされるネットの中で、決して流れていく情報ではなく「ある人の思いや意欲が語られたインタビューからか自らが突き動かされるような感覚=意」「ある人のエピソードを疑似体験して、心動かされる思い=情」という、つまり本が持っていた「知情意」というものをWEBのFILTでもみなさんに感じていただけたらと思います。
幼いころに父の本棚にあった岩波文庫の薄いパラフィン紙をめくった時のドキドキした気持ちと、かび臭いにおい。こんなかすかな喜びとぬくもりが、今の私の言葉を編み上げる仕事につながっているのだとすれば、パソコン上でのFILTのページをクリックするたびに、誰かが何かを感じて心動かしてくれたら、こんな喜びはありません。
次号3月20日は「新しいことを始めると、人生の登場人物が変わる。」です。
新しい何かを期待しながら、今はただひたすら次号を作るのみ…がんばります。