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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

音楽その22・中編

2017.1.20

前回、ボブ・ディランとジミー・ペイジが、最近の「ちゃんとしてる」音楽界に一石を投じたと話しましたが、その全く逆の現象も日本では起きています。

ゲス極問題です。

ご存知の通り、ゲスの極み乙女のボーカルの子がベッキーと不倫していたことで、ベッキーは実質仕事を失い、ゲスの子も世間から散々叩かれる形になりました。

でも、例えばこれが60年代のアメリカだったら、なに一つ問題にならなかったでしょう。
ロックミュージシャンが女遊びをするなんて、当たり前を通り越して、むしろセックス・ドラッグ・ロックンロールの3条件を満たしていなければロッカーとして認められない世界でしたから。

ベッキーの方は確かにお茶の間のタレントで、アイドル的な立ち位置でもあったので、世間の扱いもまた違うのかもしれませんが、少なくともゲスの方は昔だったら「やっぱミュージシャンって最低だねー!」くらいに笑われて終わりだった問題じゃないでしょうか。

いつからミュージシャンにも常識が求められるようになったのでしょう?

もしかすると、ネットが大きな要因の一つかもしれません。
ネットのない頃、音楽の現場はアルバムとライブだけでした。
アルバムは基本的に出来上がったものをファンは聴くだけです。
ライブは同じ空間を共有しますが、それもライブ中の2~3時間だけで、終わってしまえばファンはその後のことなど知りえません。
つまり、ミュージシャンが裏でなにをやっていようが、ファンはどうでもよかったわけです。
曲さえよければ、演奏さえ神がかっていれば、そのミュージシャンがバックステージや私生活でどんなにいい加減なやつでも、どんなに性格に問題ありでも、良からぬ薬をやっていようと、スタッフをぶん殴っていようと、ファンはどうでもよかった、というよりそのことを知る方法すらなかったのです。

それがネットの登場で状況が変わりました。

ネットというのは、そのミュージシャンのファンでもない人たちが、ライブもアルバムも関係ない時間に、そのミュージシャンについて語る場です。
つまり、一般の人が日常世界でそのミュージシャンについて語るわけですから、当然そこには一般常識が関わってきます。

大好きなミュージシャンが目の前で演奏している時間・空間は日常空間ではありません。なので、日常の常識・ルールは通用しません。
しかし、好きでもないミュージシャンについてネットで一般の人が語る時は、完全に日常のルール・常識が判断基準になります。
なので、ミュージシャンにも一般常識やルールが求められるわけです。

この話、書いていてなんだか面白くなってきたので(笑)、また次回まで続けましょう。