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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

音楽その11

2015.12.20

やっぱり生が好き

山形でのライブに車で向かう最中、サービスエリアで「白河ラーメン」の文字を見て、いてもたってもいられずラーメンを頼んでしまった。
店先ののぼりに「自家製生麺使用」と書いてあり、これは美味しそう!と思ったのでした。
しかし考えてみればちょっと変である・・。
通常、ラーメン屋の麺ってあえて言わなくても全部生なんですよ。中には乾麺を使うご当地ラーメンなんかもありますが、ほぼ9割がたお店で使うのは生麺なんですよね、なので「自家製生麺」と書かなくても「自家製麺」でいいんじゃないかと。

でもなんか、そこに「生」って書いてあるとやっぱりそそられるわけです!

思えばみんな「生」が好きですよねー。
ビールだって「生」が付くだけで途端に美味しそうになり、値段をちょっと高くとっても文句言われない。逆に「缶」と付くと一気に安い感じになる。「瓶」だとまあそれはそれで嬉しかったりする。
いや、ビールのことはどうでもいいんだ「生」の話だった。

ラジオやテレビでも「生」は一つの売り文句です。生放送と収録では全然視聴者の捉え方が違う。そういえば僕がやってる番組の前のジョージ(ウィリアムズ)の番組で、毎回「このあとゲストが生登場です!」と言ってるけど、あれもいつもどうかと思ってる。
生以外の登場ってあるんだろうか?コメントの登場!?でもそれ登場じゃないしな・・・などと思うくらい、つまりはみんななんにでも「生」を付けたがるくらい、「生」が好きなんですよ。
思えば僕らのやってるライブなんて、名称そのものが「生」だ。
ライブの「生」は生演奏ということを意味するんだろうけど、生じゃない演奏というのはつまりどういうことなんだろう?とここからまた考えてしまったのです。

歴史的に考えて、もともとは演奏というのは当然すべて「生」だったわけで、おそらくオルゴールの登場辺りが初めて演奏が「生」じゃなくなった時ではないかと。
しかしオルゴールにしたって、自動で演奏はしているけど音自体は「生」で出してるわけで、厳密に言えば蓄音機の登場が初めての「生」じゃない演奏ということになるんだろうか。
つまりもともとは演奏について「生」「ライブ」という言葉は使わなかったはずなんですよね、全部「生」な訳だから。
ある時点で「生」ではない演奏技術が出てきたから、それと区別するために後から「生」と付けたわけです。
考えてみれば冒頭の麺だって同じです。もともとは「生」しかなくて、どっかで乾麺の技法が出来たから、それと区別するために生麺と呼ぶようになったのだろうと。
僕らは自分たちを「生人間」とは呼びませんが、いずれ冷凍保存の技術が発達したり、ホログラムとか仮想世界でのもう一人の自分みたいのがさらに発展してったら、生きてるリアルな人を「生人間」と区別して呼ぶようになるかもしれませんね。
なことを考えながらライブへと向かってます。
やっぱり生は楽しいよ!