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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

音楽その9

2015.10.20

ホフディランのニューシングル「愛しあって世界は回る」が無料ダウンロードという、実験的なかたちでリリースされました。
www.hoff.jpからダウンロードできるので、みなさんぜひ!
ということで、今回は無料ダウンロードについて考えてみようかと思ったのですが、今回プロモーションを兼ねてすでに色々なメディアのインタビューでそのことについては触れているので、こちらの「音楽」のコーナーでは、今回のシングルのもう1つのテーマ「エバーグリーン」について考えたいと思います。

昔から世間で広くヒットした曲や年代を超えて愛されている曲を「エバーグリーンな名曲」なんていう風に呼びます。
今回の新曲「愛しあって世界は回る」を作りながら考えていたのが、まさにその「エバーグリーン」なんです。
いつの時代の音でもない、決して新しくはないけれど、かといって10年後20年後に聞いても古くならない、そんなメロディや音を目指しました。

そもそもPOPミュージックにおいてエバーグリーンって感覚ってどこから生まれたのかと考えると、50年代にロックがこの世に誕生して以来、POPミュージックは常に変化していたのです。
(それはまさに転がる石、ローリングストーンです)

60年代に入ってフォークやサイケデリックなどの音楽が台頭し、70年代にはディスコミュージックやパンクが、さらに80年代にはテクノやニューロマンティックが、90年代にはオルタナやヒップホップが・・・などなど常に音楽は変化して、常に新しいものが誕生していたのです。
(もちろん上記の説明は、ものすごくざっくり割った遍歴なので、そこはご了承を)

そんな中で、どんな時代でも共感できるようなメロディ・歌詞を持った名曲を「エバーグリーン」と呼んでいたわけです。

つまり、音楽が時代によって変わっていたからこそ、その反対の変わらないものに対して「エバーグリーン」と呼んでいたのですね。

しかし現代、このコラムでもお伝えした通り、Apple Music以降の音楽環境においては、楽曲は時代と関係なく聴きたい放題なのです。
実際に僕が最近聴いているプレイリストを見ると、50年代のソウルミュージック、70年代のガレージロック、80年代のヒットチャート、90年代のカレッジチャート。そんなのをその日の気分に合わせて聴いているのです。
つまり、すでに2010年代の音楽、というジャンルは(少なくとも僕には)存在せず、2010年代の音楽というのは、全ての時代の音楽を聴けることを指しているのです。

時代によって音楽が分かれるのではなく、趣味嗜好やその日の気分で音楽を分けているとでもいいましょうか。

大げさな言い方をすれば、時代性というものが関係なくなった現代において、今後全ての楽曲はエバーグリーンであるとも言えるのです。

どこの国の音楽でも、どの時代の音楽でも、ネットにさえつながれば手に入れられる世界において、全ての楽曲は自動的にエバーグリーンにアップデートされたわけです。

ミュージシャンにとって、これからは同じ年にデビューしたグループや同じ週に発売されたCDがライバルではなく、過去の全ての名曲・名グループがライバルになるわけです。

そんな状況で我々は「エバーグリーン」ってなんだろう?と改めて考える時期が来ているのだと思います。