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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

音楽その7・後編

2015.8.27

<そして1日が経ち>
Apple Music開始から1日が経ち、まず一言。
昨晩はほとんど寝てません。
早朝までもうApple Music聴きまくり(笑)。
なにしろ今まで買ってきた音源はもちろん、買えなかった音源、無くしちゃった音源、そんなものが全部ある訳ですから、もう寝る間も惜しんで聴きまくりました。
ぶっちゃけこれだけ音楽を何時間も<聴く>という行為でだけでワクワクしたのは久しぶりです。
これはね、悔しいけど第1ラウンドとしては完全にApple Musicの勝ち!
いや、勝ち負けでもないんですけどね、でもやはり定額制というサービスに対して、ミュージシャン=制作者の立場からしたら、すんなり100%認める訳にはいかないという部分もある訳ですが、まずは音楽ファンをこれだけワクワクさせられるという点においては完全に予想以上の圧勝でした。
おそらく明日から確実に僕が音楽を聴く時間は増えることでしょう。
しかしそれと同時に考えるべきポイントは、実は昨日から徹夜でなにを聴いていたかというと、R.E.M.とかPOLICEとかTHEY MIGHT BE GIANTSとか、さらにはMen at workとかGeorge Michaelとか、ざっくり言って全部自分が小学校~大学辺りに聴いていたものばっかりなんですよ。
当時レコードレンタルで借りてテープにダビングしていたものとか、その後CDで買ったけど部屋の棚の奥にあって最近は全く聴いてなかったアルバムとか、そういう「思い出の」アルバムしか聴いてない。
例えるならば、久しぶりの同窓会で昔の恋人と会って、焼けぼっくいに火が着いたみたいな感じですね。
いや、これ僕だけじゃないんですよ。同じく朝までApple Music聴きまくってしまったという知り合いの編集長と話したら、やっぱりその人も昔のアルバムばかり朝まで聴きまくっていたと言っているのです。
でもさ、これどうでしょう?
もちろんまだ1日なのでなんとも言えませんが、最新の技術によって新たな才能に光が当たるかと思ったら、むしろ過去の音楽が現代に蘇ってきた状態。
実際これまでもiTunes STOREのチャートを見ると、新作と並んでビートルズやマイケルジャクソンが常に上位にいるようなことがよくありました。
実は僕が懸念していることの一つはここなのです。
技術が進歩すればするほど、最新作ではなくむしろ昔のコンテンツが聴かれる・売れるという時代になってしまう。ちなみに最近の小学生に好きなお笑いを聞くと「ドリフ!」と答えたりすることがあります(CSの再放送やDVDの発売により)。それと全く一緒ですよね、技術が進化して昔のコンテンツも同列で楽しめるようになると、むしろ現代のコンテンツの需要が低くなる。
話はちょっと飛躍しますが、いつかタイムマシーンができたら未来の世界が見られるとばかり思っていましたが、意外に本当にタイムマシーンができたら、人類は過去にしか戻らなくなるかもしれませんね。

<閑話休題~そして1週間経ち>
あれから1週間が経ちました。
相変わらず僕はApple Musicを聴きまくり、予想通りApple Music以前と比較して確実により多くの時間を、音楽を<聴く>ことに当てるようになりました。まるで高校生の時のようです。
これは1リスナーとしては本当に素晴らしいことだと思います。
しかも、現状ではまだお試し期間で1円もかかっていない!
お試し期間以降でも、たった1000円でこれだけ聴きまくれる(有線放送とかどうなっちゃうの??)
そして相変わらず僕は、どちらかといえば新作よりも自分のルーツといえる懐かし目のアルバムばかり聴いています。
それは<検索>というシステムにも関係しています。検索で音楽を探す場合、当然名前も知らない新人バンドは検索しようがないので、すでに知っているバンドを探すことになる。
もちろんAppleサイドもそこは<オススメ>などの機能で、知らない音楽とも巡り合う機会を増やしてはいるのですが、それでもやっぱり無限に近い音源がある世界では、より知られていることが他よりも聴かれる大きなアドバンテージになる。
そうなるとやっぱり新しいテクノロジーなのに、むしろ新しい音楽より古い音楽の方に有利な状況が生まれる。
これってどうなんでしょう。

てな感じに、なんの結論もなく徒然に思うことを書いてしまいましたが、とにかくこれはファーストインプレッションということでご了承ください。
それで、一応現状なりの感想を結論の代わりに言いますと、何か新しいものが生まれる時ってまず古いものを壊さないといけないのですね。
新しいものが生まれたから古いものが壊れたのではなく、新しいものを生むためにあえて古いものを壊すという流れがあります。
音楽システムは今まさにその状況にある気がします。
この後どうなってくかはおそらくシステムの開発者たちも分かってないでしょう。
とりあえず既存のシステムを壊してみた。
壊すまではやったから、あとは皆さんで作り上げてください!ってな感じの状況。
つまりは誰にでもチャンスのある、真っさらな大地になったとも言えます。
もしかしたら、これはビッグチャンスなのかもしれません。