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 いまBS-TBSで放送中の『僕らの食卓』というドラマに出演しています。僕の役は、上田耕司という陶芸家で、飯島寛騎さん演じる上田穣と、前山くうがくん演じる上田種という2人の子どもがいます。早くに妻を亡くして、1人で穣と種を育てている田舎のお父さんですね。物語は、犬飼貴丈さん演じる穂積豊が穣と種の2人と出会うことで展開していくんですけど、僕はこの3人を見守っていくという役どころです。
 撮影は、徳島県美馬市で行われました。田園風景が広がる日本の田舎なんですけど、東北とも離島とも違う、独特の良さがある。この牧歌的な場所で、どうやって2人の“おとん”になるか。それが僕の課題でした。
 まず思ったのは、このドラマはくうがくんが成功の鍵になるのではないかということ。犬飼さんと飯島さんは実力のある役者さんなので、芝居で作品の世界観を表現することができます。その世界にどうやって子役のくうがくんを巻き込んでいくのか。そこが大きなポイントになると僕は考えたんです。

 くうがくんも芝居には慣れていますが、そうはいってもまだ7歳ですから、どうしても感情の起伏はあったりする。現場が楽しい、お芝居は面白い、そう思ってもらえるような空気づくりを心がけました。
 なので、カメラの回っていないところでも、膝にくうがくんを乗せたり、一緒にお菓子を食べたり、本当の息子のように接したんです。撮影の最終日は僕と離れたくないとくうがくんが泣いてくれて。本当に“おとん”と呼んでもらえるような関係を築けたと思います。
 もちろん、僕とくうがくんは血がつながっていないし、そんなことはドラマを観ている視聴者の方もわかっているんだけど、関係が築けていないと、画面を通じて上辺だけの親子だということが伝わってしまう。そう思わせないような雰囲気づくりが必要だし、だからこそ、撮影していない時間が重要になってくるんです。

 実は撮影が終わったいまでも、くうがくんとはお母さんを通じてやり取りをしています。こうしてできた縁というのは、やはり大切にしたいですね。
 こんな縁もありました。3月26日に和歌山で鉄砲隊の雑賀衆を率いた雑賀孫市ゆかりのイベント「第19回孫市まつり」に参加させていただいたんです。僕が孫市役で出演した野外劇の脚本・演出を手がけた中野広之さんは、実は僕の初主演時代劇『南町奉行事件帖 怒れ!求馬』の助監督で、和歌山県湯浅町の醤油店を舞台にした出演作『紀州騎士』の監督でもあります。そのつながりもあって、声をかけていただきました。

 和歌山には撮影でしかお邪魔したことはないですが、僕が関わったことで少しでも街が盛り上がってくれれば何よりですし、お声がけしていただいた意味も出てきますよね。
 そこで生まれ育っていなくても、縁ができるとその土地のことを考えてしまうんです。例えば天気予報を見ていると、自分の住んでいる場所だけじゃなく、その地方についても「暖かくなってきたな」とか「雨が降るみたいだな」とか気にしてしまいます。

 地方の様子を知ることができる旅番組もすべて予約録画しています。『遠くへ行きたい』や『小さな旅』、旅番組ではないですけど、所ジョージさんの『ポツンと一軒家』も毎週録画して観ています。
 旅番組を観るだけじゃなくて、屋久島を案内していただいた山岳ガイドの方や、高野山でお世話になったお坊さんなどに「最近はどうですか?」と連絡を取ってみることもあります。一度足を運んだ地方のことは忘れません。

 地方というキーワードで外せないのは、やはりYouTubeではないでしょうか。おかげさまで、僕のYouTubeチャンネル「ニンゲンTV」も登録者数が20万人を突破しました。本当にありがとうございます!
 YouTubeでは2年近く降魔師の阿部吉宏さんたちと各地の心霊スポットを巡っていますけど、この度、新機軸としてフェイクドキュメンタリーを作りました。撮影場所は三重県鳥羽市の神島という自然の豊かな島です。ここで4日間、ロケをしました。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。『僕らの食卓』(BS-TBS)に出演中。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)や『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。

 神島でもいろいろなことが起きました。フェイクドキュメンタリーとは銘打っていますけど、実質9割は本当に起きたことです。この記事が出る頃には配信されているので、ぜひご覧になっていただきたいですね。
 神島もそうでしたけど、地方に行くと必ず忘れられない出会いがあります。なぜこうも出会いに恵まれるのか。東京の下町で生まれ育った僕が、どうしてまるで故郷に帰ってきたかのような感覚になるのか。いつも不思議だなと思うんです。その秘密を解く鍵がYouTubeでの活動にある気がしていて。今後どうなっていくのか、僕自身も期待しています。

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