FILT

「笑い」は昔から大好きですね。僕の「笑い」の原点はイタズラなんです。子どものころは弟と一緒によくおじいちゃんにイタズラを仕掛けていました。祖父は元軍人。滅多なことじゃ笑わない、NHKとたばこをこよなく愛する厳格な人で。そんなおじいちゃんが「驚く=笑う」となればいいなあという……まぁ、人に笑ってもらいたいという原点ですよね。
 もちろん「お笑い」を観るのも大好きでした。『8時だよ、全員集合!』は、本当に夢中で観てた。当時の小学生はみんなそうでしょうけど、ただ、僕は高木ブーさんが好きだったんです。ず~っと観ちゃうんですね、ブーさんを。それはなぜかというと、不思議だったから。加藤茶さんや志村けんさんのようにギャグがあるわけでもない。仲本工事さんのように体操ができるわけでもない。取柄が分からない……失礼ですよね。ごめんなさい! でも子ども心にそう思ったわけです。そんなブーさんの存在が際立って見えた。『この人は何なんだろう……』。僕はそういう興味が「好き」につながっちゃう。

 みんなが笑ってることには笑わないぞ、みたいな天邪鬼的な視点もあったのかもしれない。無意識ですけどね。子どものころから自然と10人中9人が興味を持つことより、1の方に気持ちが行ってしまうんです。でも、テレビを熱心に観たのはそのころがピーク。高校生くらいになると家にいないからテレビは観なくなって、自分がテレビに出る側になると、どちらかというと闘う相手のようなモードに入ってしまって……(#1参照)。だからお笑い番組からも長らく遠ざかっていました。再び観るようになったのは、ダウンタウンさんの『ごっつええ感じ』や松本人志さんの『一人ごっつ』に出会って。あのシュールな笑いの世界にフィットするものを感じたんです。『松ごっつ』では、松本さんや板尾(創路)さんが白塗りのオニババに扮して、包丁を持って「ギャーッ」っと叫ぶだけのコーナーがあったんですが、僕、それが大好きで。毎回やるわけじゃないけど、やるときはいつもコーナーの終わりに「芸能人募集」というテロップが出るんですよ。一緒にオニババをやる人募集、みたいな。だから、僕、問い合わせてみたんです。

 そしたら「来てください」となって……そう、僕、オニババをやらせていただいてるんですよ。当時は特に反響はなかったですけど(笑)、でも、どうせやるなら極端なことをしたい、誰もやらないようなことをやりたいと思っていた、僕の笑いの感覚みたいなものを世間に表明できた気がして嬉しかった。
 それはちょうど、ドキュメンタリー番組で外国に行き始めたころ。さまざまな国の文化や価値観に触れて、身にまとっていた鎧が取れ始めた時期でもありました。

 日本から見たら決して豊かではない暮らしをしていても、どこの馬の骨だか分からない僕に、みんな食べ物を分け与えてくれるし、本当によくしてくれる。そういった姿にものすごいかっこよさを感じたんです。着るものや、自分のスタイルを守ることがかっこよさだと思っていた僕は、逆に自分を飾ることがかっこ悪いと思うようになって……結局、裸が一番カッコいいじゃないかと。それが全裸の温泉俳優へと繋がっていくわけで(笑)。

 そんな心の変遷があったので、年末の『笑ってはいけない』で、アキラ100%さんとの「丸腰刑事」のお話をいただいたときも、即答で「やります」とお返事をしました。ちゃんと自分にできるかな、という心配はありましたけどね。でも練習すればきっとできるだろうな、と。
 ただ「お笑い」という場で裸になることには慣れてませんから、ものすごく緊張はしましたけど。アキラ100%さんと顔合わせをして、数時間リハーサルをやってから、本番まで約1週間。お盆などの自主練はできても、2人で合わせるのはその日と本番だけ。

 アキラさんも緊張してましたし、現場ではスタッフさんも、ものすごい緊張感でした。結果……本番後はアキラさんと抱き合って喜びましたね。みなさんにすごく笑っていただけましたし、お盆の失敗もしなかったから。努力が報われたと思って。反響? お正月でしたし、ダイレクトには分からなかった。後にニュースになって反響の大きさを知った感じです。
 それ以降のことを「ブレイク」と言われることもありますが別に寝る暇もないような忙しさはないですし、実感はないんです。ただ、人から「ちょっとおかしな人だな」と思われている実感はあるので、それは嬉しい変化でした。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『5時に夢中!金曜日』(TOKYO MX)ではMCを担当。ニッポン放送のラジオ「DAYS」の水曜パーソナリティを担当。

 やっと自分の素性を分かってもらえたというか、自分のなかにあった種がやっと芽を出したな、みたいな。ダウンタウンさんはもちろんですが、明治座で水谷千重子さんの座長公演に出演させていただいたのをきっかけに、友近さんも僕の素性を知ってくれて、その芽に水を与えてくださっている。僕が不祥事を起こした後も、みなさん、愛情と厳しさをもっていじってくださって……ありがたいですよね。ただ、今回のことで今まで溜めた信用みたいな貯金はゼロになってしまった。そういう意味でも裸一貫のスタートなんです。丸腰で頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします(と、深々頭を下げる)。

撮影/野呂美帆 取材・文/大道絵里子
top

BACKNUMBER

vol.1vol.2

CONTENTS