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 僕、友人が多い方ではないんですが、このキーワードを聞いて思い浮かんだのは、海外にいる友人以上、家族未満の人たちのことでした。今回は、ちょっと風変わりな、でも普通の人は持っていない交遊録のお話をしたいと思います。
 まず大前提として言えるのは、僕が人と付き合う上で大事にしているのは長く時間を過ごすことではないんですね。それよりもご縁の深さが大事。そういう意味で、大切な人たちが世界中のあちこちにいて……。たとえばモンゴルのご家族は『世界ウルルン滞在記』というドキュメンタリー番組で出会った人たちなんですが、10年間で3回、彼らのもとを訪ねています。最初は1996年。家族には僕と同い年の長男がいて、彼の一人息子が2歳か3歳で。その子どもの髪を初めて切るという儀式にも参加させてもらいました。別れ際には馬までもらって。僕はその馬にワタルという名前を付けたんです。「いつかワタルに乗って駆け回ります」「それまで大事に育てておくよ」そんなやりとりがあって、で、次に行ったのが2年後。

 そのときはあまり変化がなかったけど、3回目に行った2005年には、家族にも大きな変化がありました。小さかった息子は立派な青年になり、その子のお父さんは亡くなり、お母さんは家族を離れ……。長男はナーダムという競馬のレースで落馬して亡くなったんです。裸馬に乗って全速力で30キロ走るレースなんですが、たまたま僕が訪問したタイミングで開催されていたんですね。レースがあると知ったからには出たかった。ただ、ワタルは長距離を走ったことがない。向こうのお父さんたちも息子を事故で亡くしてるから、僕をレースに出したくない。それで1週間、カメラが回っていないところでもワタルのお世話をしつつ、レースに出られるようにしっかりと調教しました。息子とも一緒に木の実を集めに行ったり親睦を深めながらね。すっかりワタルに乗れるようになった姿を見せて、お父さんたちに納得してもらってレースに出た。レース自体はビリっけつです。でも出ることに意味があったし、完走することもできた。2時間くらい裸馬に乗って全速力、100頭はいたから土埃は凄いし怖かったですが、ワタルが頑張ってくれました。

 決して長い時間一緒にいたわけじゃないけど、なにか意味があって出会ったのかな、というのはお互い感じているんじゃないかなと思うんです。僕が大袈裟に話しているのではなくて、大草原の中で暮らしているご家族なので、彼らが生涯会える人数ってとてつもなく少なく、僕はその中の一人なんですね。2回目に訪れたときにそういう話もしました。行くたびに絆も深まって……。彼らのことは離れたところにいる家族のように思っているんですが、同時に向こうも僕を思ってくれている。僕がこうやってみなさんにお話ししているのと同じように、彼らも僕のことを話しているそうです。

 ラオスでは、タイとミャンマーの国境の山岳地帯に住むムチー族という少数民族がいるんですけど、そこでは学校の先生を急遽することになって。20人弱の子どもたちと出会いましたが、何度か訪れるうちに亡くなる子もいれば、軍隊に入る子もいた。いろんなドラマがあった……ちょっと語りきれないな。また、ベネズエラのジャングルにいるヤノマミ族とも、時間では計れない心のやり取りというか、心を裸にする交流がありました。

 一回きり1週間だけの滞在だったんですけど、最後の晩に彼らの長に言われたんです。「お前はここに帰ってきたんだ。旅行者としてここに来たわけではなくて、帰ってきたんだぞ」と。いろんなことが納得できて、『あ、そうかもしれないな』と思いました。そうじゃないと、出会わないだろうなって。大いなる力で導かれたんじゃないか。ただの仕事で、たまたまスケジュールが合ったから行った、というレベルの話じゃないんですよ。そうじゃないと、説明がつかないこともたくさんあって……だから、こういうことを話すのも僕の使命だと思うんです。

 僕というフィルターを通して、話す必要があってそうさせられているのかな、と。
 そんなことを思うようになったのもモンゴルに行ってから。それまでは不良みたいな人間だったのに、いろんな出会いの中で、自然と人生観みたいなものが変わっていって。俺は何をしに生まれてきたのかな、ということも自然と考えるようになっていきました。自分が芸能界にいることがいまだに腑に落ちてないんですけど、でも、芸能界にいないとこういう人たちと出会えなかったとも思う。だから全部、必然なんでしょうね。良いことも悪いことも、全部、必然。偶然で片付ける方が簡単だけど、必然と考える方がいろんなことが面白くなります。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『5時に夢中!金曜日』(TOKYO MX)ではMCを担当。ニッポン放送のラジオ「DAYS」の水曜パーソナリティを担当。

 全部に意味があるって考えるとちょっと疲れるけど……でも、人間が生きている時間は長くてもたった100年ちょっと。死は平等に訪れますから、その道中はいろんなことがあったほうが楽しいじゃないですか。
 僕、人生の楽しみは人との出会いだと思っているんです。いわゆる、運命的な意味を含めた“邂逅”。常にその好奇心を持ちながら、日々過ごしています。だから、この先どんな出会いがあるのか……楽しみしかないんです。

撮影/野呂美帆 取材・文/大道絵里子
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