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 最初に断っておかなければならないんですけど、僕には一切霊感がありません。僕のYouTubeチャンネル「ニンゲンTV」でも心霊スポット巡りをしていますが、これまで霊が見えたことはなく、だからこそ見てみたいという思いも強い。もし見えたら、たぶん驚くと思うんですね。そこに物体がないはずなのに視覚では捉えているわけですから。一説によると、霊は脳が見せているんじゃないかという話もあるんですけど、そういう理屈は僕にはどうでもよくて、この肉眼で見えたものが本当におばけかどうかは、自分で決めたいと思っています。その瞬間に自分が何を感じるのかという心の動きにも興味があるんです。
 それに、僕はおばけを未知の世界の話だとは考えておらず、とても身近なものだと思っています。おばけがもともと生きていた人間だとしたら、僕らもおそらくいつかはおばけになるわけですし、この肉体が無くなるということは、そういうことなんじゃないかなと。

 祖母が亡くなる少し前に、「死ぬのが怖い」「お前と離れるのは嫌だ」と泣いていたことがあったんです。たぶん自分の死期を感じていたのだと思うんですけど、僕は「死んだら僕といつも一緒にいることができるよ。守護霊になって僕にくっついていてよ」と声をかけました。そうしたら、祖母は「ああそうだね」と言って泣くのをやめたんです。僕は霊が見えませんから、祖母が守護霊になったとしても存在を感じることはできませんけど、でも見えない人間は見えないなりに、きっと祖母がそこにいるんだと思うことはできますし、信じることはできる。だから、寂しくないし、身近にも感じるんです。
 僕は心霊スポットに行くと“怖い”よりも“見てみたい”という好奇心のほうが勝ってしまいます。おばけに関わらず、すべてそうですよね。驚きたいし、「おおー!」と思いたい。だから秘湯にも行くんです(笑)。

 心霊スポット巡りの中で印象的だった場所を一つ挙げるとすれば、都内だと青梅市の旧吹上トンネルでしょうか。あそこで赤ん坊の声を聞いたんです。YouTubeのコメント欄では「カラスの声」とか「モモンガでしょ」とか言われていますけど、実際に現場で聞いた者からすると、どう考えてもあれは赤ちゃんでした。自分の子供が小さいときに、近くで泣き声を聞いていたからわかるんです。すぐに「あのときの泣き声だ」って。「まさか」と思う方は、動画を見て検証してみてください。

 都内の心霊スポット巡りにはスピリチュアルアドバイザーの山口彩先生に同行していただいていますけど、そういう能力を持った方の存在も重要ですね。僕は見えないわけですから、先生が解説してくれないと何もわからない。でも、否定はしませんが、すべてを鵜呑みにもしません。あくまでフラットな立場でいたいんです。「あそこに女性の霊がいます」と言われたら、どんな姿をしているのか、どんな表情なのかを聞いて具体的に想像しています。

 今、「ニンゲンTV」では心霊スポット巡りの山形編の動画が次々にアップされています。行くことになった経緯をご説明すると、もともと自分が心霊スポット巡りをしていく上で、都内ではなく、もっと遠くに行けるタイミングというものをずっと図っていたんですね。同時に、知り合いにいろいろと情報を聞いていく中で、昔から付き合いのある方から、山形はそういうスポットが多いということを教えていただきまして、今回の山形行きが実現する運びになりました。

 教えてくださったのは阿部吉宏さんといって、映像関係の仕事で出会った山形在住の方なんですけど、やはり不思議な力を持っていて、今回の心霊スポット巡りにも同行していただきました。山形には出羽三山という霊山がありまして、いわゆる山伏などの修験者が修行するような滝や山道があるんですね。心霊スポットというか、スピリチュアルなスポットですよね。自分で調べてみても興味深いなと思いましたし、行く前から僕にとっての大きな分岐点になるんじゃないかという予感はありました。そして、実際にそういう場所へ行ってみて、自分が考えていた以上の成果があったんです。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)ではMCを担当。

 詳しくは「ニンゲンTV」を見ていただきたいんですけど、複数のスポットを巡っていく中で、最後に一つ一つの点が線になるというか……どう考えても、僕が“呼ばれた”としか思えないことが起きまして、不覚にも涙が出てしまったんです。生まれてきた意味や自分の根源を見つめる旅になりました。
 今回の山形行きを経て思ったのは、いわゆる肝試し的なものではなく、もっと違うアプローチで心霊スポットに迫ることができるんじゃないかということでした。僕も嫌いではないですけど、おばけとか恐怖とか、そういうものを超えた何かをもっと探していきたいですね。

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