縁やめぐり合わせというのは不思議なものです。たとえば松本明子さん。弟(本宮泰風)の奥さんですけど、僕は弟よりも断然彼女と共演する機会が多いんです。最近はバラエティや旅番組などでご一緒していますが、はじめて共演したのは松本さんが主演の『グッドラック』という1996年の連続ドラマでした。パチンコ店が舞台のドラマで、松本さんはもちろん、共演者の勝村政信さんや網浜直子さんとも非常に仲良くさせていただいて。あるとき、撮影終わりにロケ現場が近かったこともあって、勝村さんの提案で原田芳雄さんの家に4人で行くことになったんです。親交の深い勝村さんは「ヨシオさんの家に行こう」としか言わないので、最初は「ヨシオって誰だ?」みたいな(笑)。ついて行ったら原田芳雄さんのご自宅でびっくりしました。いきなりお邪魔したのに快く迎え入れてくれて、「原田龍二です」と挨拶したら、第一声が「お前も原田か。原田ってやつにはロクなやついねぇからな」と(笑)。とても良い思い出ですよ。
その後も、僕は『サービス』というドラマで松本さんと共演するんですね。この作品が松本さんと弟の出会いのきっかけになりました。もう遠い昔の話なので、正確には覚えていないんですけど、どうやら僕が撮影現場に弟を呼んで、そこで知り合ったらしいんです。『グッドラック』の現場がきっかけだったという説もあるんですけど、僕は『サービス』の現場だったと記憶しています。でも、どちらにせよ僕がいなければ弟は松本さんと出会っていなかったわけです(笑)。いや、本当に縁って不思議だなと思いますよ。
弟とも何度かドラマなどで共演しています。兄弟ですけど、他の共演者の方とご一緒する時とまったく心境は変わらないですね。兄弟仲は良いですよ。年子だし、同じ環境で育ってますから、土台の価値観は一緒なんです。子どもの頃は兄弟喧嘩もしましたけど、それも小学校に上がるくらいまでですね。小沢(仁志・和義)兄弟とは違います。あの人たちは大人になっても喧嘩してますから(笑)。
小沢兄弟のお二人もそうですけど、ありがたいことにこれまでに数々の大先輩たちと共演をさせていただいています。実は1年ほど前に時代劇専門チャンネルで放送された里見浩太朗さんと高橋英樹さんの対談番組の司会進行を僕が務めまして、先日その番組が「第14回衛星放送協会オリジナル番組アワード」の番組部門で最優秀賞を受賞しました。
時代劇チャンネルの開局25周年を記念した対談番組だったんですけど、なんせ時代劇を牽引してきた大スターの共演ですからね。緊張もしましたけど、“誉れ”のほうが先にありました。とても光栄なことです。
たくさんの時代劇が作られてきた太秦にある東映の京都撮影所で、大勢の関係者が見守る中での対談でした。お二人とは比べ物にならないですけど、僕にとっても思い出の場所ですし、感慨深かったですね。
お二人は時代劇で共演されていますけど、対談は着物ではなくスーツでした。お二人もこういう形で共演するのは初めてだとおっしゃっていて、そんな貴重な場に居合わせることができて幸せでした。司会の位置から、僕だけのアングルでお二人を視界に捉えることができましたから。
対談を進める上でのざっくりとした台本はあったんですけど、僕はお二人にお聞きしたいことを自分なりに考えていきました。あの立ち回りや刀さばきはどう生まれたのかとか、衣装はどういう経緯で決まったのかとか。時間も限られていましたし、ある程度は質問も絞りましたが、とても良いお話をお伺いできたと思います。
以前、里見さんと公私共にお世話になっているとお話ししたと思うんですけど、高橋さんにもドラマやバラエティ番組などで非常にお世話になっています。
高橋さんは面白いことがお好きで、テレビのイメージのままの気さくで魅力あふれる方なんですけど、僕は特に目が素敵だなと思うんです。共演させていただいた時の研ぎ澄まされたまっすぐな瞳が強く印象に残っていますし、それはきっと視聴者の皆さんも感じるところなのかなと。
里見さんもそうですけど、スター街道を歩いてきた方々は皆さんまっすぐですよね。その姿勢というか、立ち振る舞いは僕も側にいて学ばなければいけないところです。
先日、BS-TBSで『水戸黄門』の放送55周年を記念した特別番組があったんですけど、そこでも里見さんとの思い出話をさせていただきました。
原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。
考えてみると、すでに放送が終わっているにも関わらず、ちゃんと節目に特別番組が放送されるというのもすごい話です。それだけ『水戸黄門』は愛されているシリーズなんだなと。
その特別番組では言いそびれてしまったんですけど、いつか僕も黄門様、水戸光圀役をやりたいというのは、この場を借りて言っておきたいです。里見さんも助さん役を経て、65歳ではじめて黄門様を演じられていますからね。僕も10年~15年後くらいに黄門様を演じられるよう、今からトレーニングに励んでいます。