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 2020年9月29日から11月8日まで、35日間に渡って広島と呉で行われた『孤狼の血Ⅱ(仮)』の撮影が終了した。新型コロナウイルスの感染者を一人も出さずにクランクアップを迎えたことについて、白石監督はこう振り返る。
「事故もなかったですし、無事に終えられたということだけで100点満点に近いんじゃないでしょうか。今回はPCR検査もそうですけど、全員に毎日体温を報告してもらって、撮影現場の消毒も行いました。あと、ほぼ撮影現場とホテルの往復だったのもよかったかもしれません。結果的に撮影自体も集中して行うことができました」
 狭いスペースや室内では全員がマスクやフェイスガードを着用。換気をして空気を入れ替えるなど、徹底したコロナ対策を行った。
「例えばアパートの一室での撮影などは密になりやすいですから。なるべく大声を出さないようにとか……う~ん、なかなか大変でした」

 広島や呉の街もコロナの影響で閑散としていたという。
「夜8時以降は人が外を歩いていないですからね。流川っていわゆる広島の歌舞伎町みたいなところなんですけど、そこも話を聞いたらかなりの店が閉まっているそうで、呉もほとんど店がやってないんですよ。キャッチもいない。編集部からは『ネオンを撮ってきてください!』って毎日のように催促のLINEが来るんですけど『いや、そうは言うけど、ないんだって』と返してました」
 撮影期間中、コロナ対策の一環として、閉店した店舗を映画専用の居酒屋としてオープンさせるという試みも行った。
「プロデューサーが頑張って交渉してくれて、最近閉店したばかりで、まだ設備が残っている店を1ヵ月間、丸々借り切ったんです。シェフ付きで営業は7時から夜中まで。キャストもスタッフも飲みたいときはそこに行ってもらう。関係者専用の『居酒屋 孤狼の血』ということで(笑)」

 白石監督も週2のペースで通ったというその居酒屋は、思わぬ効果も生み出した。
「普段、撮影で地方に行くと、俳優部は俳優部で、照明部は照明部でって、行く店がバラけがちなんですけど、今回はその店しかないので、スタッフもキャストも一緒になって飲むというあまりない光景が見られました。おかげでチームワークもすごく良かったです」

 現場では、全員が水を得た魚のように、いきいきと撮影に取り組んでいたという。
「春先からずっと撮影ができていませんでしたから、みんな撮影ができる喜びみたいなものを感じていたと思います。僕も、これまで映画を作ることが日常だったので、日々撮影をしているだけで『こんなに愛おしい時間だったんだ……』なんてことを思っていました。撮っているのはけっこうひどい映画なんですよ、暴力的な(笑)。ある俳優なんか、毎日のように人を殺める役なのに、感動でちょっとウルウルしてたりなんかして(笑)。まぁ、ここにたどり着くまでには、多かれ少なかれ、みんないろいろな思いがあったはずなので」
 すでに登場人物21名の顔の一部が写ったキャラクタービジュアルも解禁され、SNSでは出演する俳優の予想合戦なども行われている。
「ほくろの位置とかで特定している人もいて、『すげえなー!』って驚いていました。今回も濃い人たちばかりがわんさか出ますし、前作から引き続き出ていただく方もいます。ぜひ期待してもらいたいですね」

 登場人物のファッションも強烈で個性的。“いかにも”なスタイルに、いやが上にも期待が高まる。
「いくら平成の頭とはいえ、あんな格好したヤクザがいたのか?って思うんですけど、同時代に作られた『極妻』なんかを観ると、まだ足りないんじゃないかと思うほどすごい格好してますからね。ただ、その時代のものをそのまま撮るというよりは、ちょっとだけ今の人が見てもカッコよく見えるように作っているつもりです」

 白石監督は、撮影の“手応え”についても話してくれた。
「とにかく出演者が多いので、時間もかかるし、段取りも大変でした。その代わり、画面が人で全部埋まっているみたいなシーンもけっこうあって、楽しかったですし、ただでさえ無茶苦茶やる映画なんで、このタイミングで撮影ができたのはある意味では良かったと思っています。今、編集がそろそろ終わるんですけど、僕の映画としては最長になります。ただ、体感としては一番短いかもしれない。あっという間に終わるんです。それくらいの手応えは感じていますね」

白石和彌

白石和彌 しらいしかずや 映画監督。1974年生まれ、北海道出身。中村幻児監督主催の映像塾に参加。以降、若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として活動。2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画監督デビュー。その他の主な監督作品に『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『牝猫たち』『彼女がその名を知らない鳥たち』『サニー/32』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』『麻雀放浪記2020』『凪待ち』『ひとよ』などがある。

 映画を待ちわびている人たちに伝えたいこともある。
「コロナ禍で、どういう映画がみんなに見られるのかなというのを俳優部やスタッフとも話し合って撮っていきました。エンタメではありますが、ただのエンタメではなく社会を少しでも写し取れればと思って作った部分もあります。でも、それはいろいろと楽しんだ上で感じてもらえるかなと。コロナはまだまだ続くんでしょうけど、2021年は元気な映画をお見せできると思いますので、楽しみにしていてください」

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