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 2024年を迎え、白石監督は撮影を終えた作品の仕上げに追われていた。昨年の夏から冬にかけて撮影が行われた大型時代劇には、確かな手応えを感じているという。
「撮影がほぼ終わった11月末のタイミングで、いったん京都で打ち上げをしたんですけど、スタッフのみんなが“楽しかった”と言ってくれたので、ひとまずは良かったなと。ひょっとしたら、楽しかったのは僕だけかもしれないと思っていたので(笑)。ただ、撮影を終えることが目的じゃないので、これから仕上げを頑張らないといけない。いま編集技師の加藤ひとみさんに、上がったものをつないでもらっているんですけど、加藤さんから“今回いいですよ”とか、そういうメールが来たときは1日ルンルンで(笑)。疲れた体がちょっと軽くなります」

 5月に公開予定の『碁盤斬り』も仕上げの最中だ。今一度、発表されているキャストについて聞いてみた。
「清原果耶さんは、一作品ごとに集中して取り組む人なんだろうなっていう印象をすごい受けました。撮休日に他の仕事をしていたのかはわからないですけど、いまはこの映画だけに集中したい、みたいな感じがずっとあって。話していても、役に対する掘り下げ方が深くて、“なるほど、そう考えているんだ”ということも多かったし、素敵な方でしたね。中川大志くんとも非常に良い出会いになりました。基本的にイケメンはそんなに好きじゃないんだけど、中川くんは好きなイケメンでした(笑)。しっかりと芝居ができる側にいるというか。もちろんイケメンなんだけど、会って話をしているとイケメン感がないんですよ。不思議な人です」

 お庚役の小泉今日子とは、過去にこんな接点があったという。
「昔、助監督としてテレビドラマシリーズの『私立探偵 濱マイク』を1本やったんですけど、その第3話に小泉さんが出ていて。パチンコの換金所にいる情報屋の役だったのかな。現場に小泉さんが入られたときは、もう換金所の中にいたので、小さい窓口越しでしかお会いできていないんですよ。今回、本人にその話をしたら、笑っていましたけど」

 白石監督にとっては、憧れの存在でもある。
「なんてったって小泉今日子ですからね。でも、あの感じでざっくばらんにやりたいことをやってくれましたし、決めてほしいところは決めてくれました。“いや、いいわよ、私なんかが”って言いながら、ちゃんと最後は持っていってくれる。さすがですよ。存在感の大きさと、頭の回転の早さは彼女ならではのものですし、その生き方が芝居の懐の深さにつながっている感じがすごくしました。本当にいろいろなことを話せる人なんです。役のことだけじゃなくて、人生とは、みたいな。またお会いしたいですね」
 そして、市村正親や國村隼といったベテラン勢が作品を支える。
「お二人とも元気いっぱいで、すごく撮影を楽しんでいました。國村さんには韓国映画の話を聞いたりもして。“日本と韓国の俳優は何が違うんですか?”とか」

 配信が待たれるNetflixシリーズ『極悪女王』も、新キャストが解禁。昨年10月に開催されたクラッシュ・ギャルズ結成40周年のアニバーサリースペシャルライブには、長与千種役の唐田えりかと、ライオネス飛鳥役の剛力彩芽が登場した。
「週刊誌の記事が出てキャストは周知の事実みたいになっていましたけど(笑)。でも、話題性先行のキャスティングに思われがちなんですけど、全然そんなことなくて、二人とも普通にオーディションで来てもらっているんですよ。トレーニングもありますし、情熱が共有できていないと難しいので」

 オーディションで感じたのは、二人の意気込みだった。
「唐田さんは事務所内で反対意見もあったらしいんですけど、“オーディションだけでも行かせてください”と言って来ていて。スキャンダルがあって、仕事ができなくなって、でもいま芝居をしたいんだっていう熱量が伝わってきました。剛力さんは、いま個人事務所の社長で、その事務所に若い子も所属しているので、念のためオーディションの情報を流したんですね。“こういうオーディションがあるので、もし誰かいたら”みたいな。そうしたら本人がやって来て、“やりたいんです”と。二人とも腹が据わってますよ。他の役もオーディションなので、有名じゃない人も全然参加しています。でも、観ていただければ、全員スターになるんじゃないかというレベルで頑張ってますよ」

白石和彌

白石和彌 しらいしかずや 映画監督。1974年生まれ、北海道出身。2010年に長編映画監督デビュー。近年の監督作品に『凪待ち』『ひとよ』『孤狼の血LEVEL2』『死刑にいたる病』『仮面ライダーBLACK SUN』、プロデュース映画に『渇水』など。2024年はNetflixシリーズ『極悪女王』が配信される他、映画『碁盤斬り』が5月に公開予定。

 2024年もはじまったばかり。白石監督にとって今年はどんな年になるのだろうか。
「前も言いましたけど、今年は自分自身の“働き方改革”をしたいですね。最低でも週1で休みを取って、家族との時間を作りたい。人間ドックも行きたいですし。あと、去年は時代劇という新しいチャレンジができたので、また新しくチャレンジできることを見つけられれば。この前、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』を観て、打ちひしがれたんですよ。ゴジラの描写がもう素晴らしくて、これはやられたなと。ここから何をやればいいんだろうと。一応、僕もゴジラじゃなくてもいいから、でかい怪獣をやらせて欲しいと手を挙げているんですが(笑)、一から考え直しです。今年はそういった新しいチャレンジに必要なステップアップの年にしたいなと思っています」

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