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 第45回日本アカデミー賞の授賞式が3月11日に行われ、『孤狼の血 LEVEL2』が12部門に選出。白石監督はスタッフやキャスト陣と共に授賞式に出席した。
「皆さんと久しぶりにお会いできて楽しかったです。ただ、まん延防止等重点措置の最中だったので、終わったらすぐに三々五々でした。前作の『孤狼の血』のときは別の場所に移動して、二次会みたいなこともできたんですけどね」
 優秀主演男優賞の壇上では、『孤狼の血』で共演した役所広司と松坂桃李の並びも話題になった。
「役所さんとは最初に会場でごあいさつしたぐらいで、なかなかお話をするタイミングがなかったんですけど、ちょうど通路を挟んで反対側のテーブルだったので、よく目は合っていました(笑)。『孤狼の血 LEVEL2』のメンバー以外だと、佐藤健くんや松岡茉優さんとはけっこう話せましたね」

 2人は白石監督の2019年の映画『ひとよ』に出演。こうした式での再会は、映画監督冥利に尽きるのではないだろうか。
「いやいや、それだけ優秀な方たちと映画を作らせてもらっているということだと思います。一方で、映画のメインを張れる方というのは今どうしても限られているので、もっと新しい才能を映画界全体で発掘していく必要はあると思います」
 自身の映画に初めて起用する際には、その人の人間性をよく見るようにしているという。
「最初にお会いする時はほぼ雑談ですね。初めから芝居をしてもらったりとか、台本を読んでもらったりとかは、あまり意味がないので。どういう子供時代だったのかとか、どういう家庭だったのかとか、雑談の中でその人が何を考えて、何に重きをおいているかみたいなものは意識します。会う前のイメージとまったく違う人もいるので、驚かされることもありますね」

 5月6日から上映されている『死刑にいたる病』で、阿部サダヲと共に主演を務めた岡田健史も、会う前と後でイメージが異なった一人。
「キラキラした感じの出演作も多かったので、割りと今どきの青年なのかなと思っていたんですけど、びっくりするくらい真面目で、チャラチャラした部分が1ミリもなかったです。曲がったことが嫌いで、一緒に仕事をしてみてそれはよくわかりました。でも、それが彼のいいところで、映画にもプラスに影響しています」

 そして、次に控えるのは今秋配信予定の『仮面ライダーBLACK SUN』だ。昨年末から続いていた撮影も、3月19日でようやくクランクアップ。
「3ヵ月半も撮影していたので、終わって1週間くらいは疲れが取れませんでした。撮影中は毎日時間に追われていて、他の作品だと撮休に打ち合わせを入れたりしていたんですけど、今回は無理でしたね。普段はまあまあ余裕を持って仕事をしているんですけど、初めてかもしれません。ここまで余裕がなかったのは」
 撮影中は、特撮チームの思いに触れることも多かったという。
「例えば操演部といって、特殊効果や火薬を扱ったり、怪獣を動かしたりする専門の方たちがいて、これまで仕事をしたことがないわけではなかったんですけど、今回初めてガッツリとご一緒させていただいたんですね。やはり特撮が好きな人たちが集まっているので、どういう特撮で育ってきて、今どういうものを目指しているのかなど、いろいろなことが勉強になりました」

 技術的に初めて知ることや気づくこともあった。
「変身ポーズってこんなに時間がかかるんだとか(笑)。数秒なのに1回の変身で半日以上かかりますから。撮影中はとても大変でしたけど、何から何まで楽しかったですね。ただ、仮面ライダーなので当然バイクにも乗るんですけど、昭和との規制の違いやコンプライアンスなどで、できないこともあったりして。そういった悔しい思いもしたので、さまざまな経験を糧にして、ぜひまたやりたいですね」

 現在は編集作業の真っ最中。白石監督はその出来栄えに自信を見せる。
「画力のある密度が濃い作品になったと思います。まぁやっていることはあまりいつもと変わらないんですが、意外と僕の世界観に怪人がマッチしてくれました。仮面ライダーは歴史のあるシリーズですし、ファンの方もそれぞれこだわりを持っているので、100人いたら100人とも納得するものは作れないかもしれません。それでも、割りと気に入ってくれる人は多いんじゃないかなと思っています」

白石和彌

白石和彌 しらいしかずや 映画監督。1974年生まれ、北海道出身。中村幻児監督主催の映像塾に参加。以降、若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として活動。2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編映画監督デビュー。主な監督作品に『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『牝猫たち』『彼女がその名を知らない鳥たち』『サニー/32』『止められるか、俺たちを』『麻雀放浪記2020』『凪待ち』『ひとよ』『孤狼の血』シリーズなど。最新作の『死刑にいたる病』が公開中。その他、『仮面ライダーBLACK SUN』『極悪女王』、プロデュース映画『渇水』(監督:高橋正弥)の公開も控えている。

 女子プロレスラー・ダンプ松本の半生を描く『極悪女王』の撮影も控えているが、目下は「別府短編映画プロジェクト」で上映される短編映画の準備中。また、来年には新作の予定もあり、しばらくは多忙な日々が続きそうだ。
「別府短編映画プロジェクトに関しては、絶賛仕込み中でして、ちょっとまだわかりませんが5月~6月には撮りたいですね。『仮面ライダーBLACK SUN』でもご一緒させていただいた田口清隆さんも参加されることが決まって、僕がもたもたしている間に先に撮ってらして。いや、ちょっと頑張らないといけないですね」

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