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カンニング竹山

カンニング竹山

カンニング竹山

撮影/橋本直貴
構成/大塩 大

芸人として脂の乗り切った48歳。ふと、自身の趣味に思いを馳せる。

カンニング竹山が、さまざまな"好きなこと"を語る新連載。

第3回の今回は、一口馬主になるほどハマっている「競馬」について。

カンニング竹山

「ギャンブルは絶対ダメ」という家庭で育ったので、小さい頃は競馬を見たこともありませんでしたね。きっかけは東京へ来たときに先輩から無理やり誘われて。「いや、いいです」と最初は断ったんですが「行くだけだから一緒に行こう」と言われて。見たこともないし、せっかくなので一回だけと、府中競馬場に行ったのが始まりです。

 競馬場に着いてからは、それまでのイメージがガラリと変わりました。自分の中の競馬場はすべてが鼠色で怒号が飛び交うみたいなイメージでしたけど、全然そんなことない。サラブレッドもまあキレイで。目の前を、音を立てて走っていく姿を見た時にビックリして。もう、その瞬間にハマりましたね。そこから、一から学ぶというか、何もわからないから「これは何頭で走るんですか」とか「この馬たちはどんな馬なんですか」とか先輩に聞いて、さらに競馬新聞を見せてもらって読み方なども教えてもらって、その日から勉強するようになりました。

好きな競馬場は、

圧倒的に

府中競馬場です。

 競馬をする上で、僕には「競馬のバイブル」がありまして。それが浅田次郎さんの『競馬どんぶり』(幻冬舎)という本。これが僕の競馬のスタイルの元になってますね。できるだけこの通りやらなきゃと思っているんですけどね。

 馬券を買わないで見るだけのことを、「見(ケン)」といいますが、それをやらなければいけないと思いつつも、競馬場に行くとやっぱり馬券を買っちゃいます。予想はやっぱり過去のデータを参考にすることが多いかな。パドックを見て、直感で買ったりしていたこともありましたが、当たらないですね。

 好きな競馬場は圧倒的に府中。府中はやっぱ日本一でかい競馬場ですし、あと、笹塚あたりに住んでいた頃、全然売れてないから仕事もなくて、毎週土日はほぼ府中に行っていたんですよ。府中に来ると「ああ、競馬しに来たな」って感じがしますね(笑)。

 競馬場へ行くときは、競馬が大好きな後輩としか行かないです。しかも、競馬場に着いたら行動は別々。携帯電話がない時代は「何番の柱ね」と待ち合わせ場所だけ決めて、各々、もう好きにパドックに行って予想していました。

 競馬はいくら予想しても、当たるのはけっきょく偶然でしかないと僕は思っているんです。もちろん当たったときの気持ちよさはあるんですけど。だから推理小説と一緒なんですよね。予想はあくまで自分なりの推理。だから完璧な予想なんて存在しないとは思いますね。最近はジョッキーの方とも何人か親しくさせていただいていますけど、ジョッキーもいざゲートが開いてみなければレースがどう運ぶのか、どういう位置取りになるかもわからないわけで。いろいろデータを元に予想するのが競馬の面白さでもあるんだけど、必ずしもその予想通りにはいかないというのも、また面白さだと思います。

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 僕には自分の運命を変えた馬がいます。その馬は、グラスワンダーという馬です。

 お金がない頃、一人で中山競馬場へ行ったときに、新馬戦で大本命になっているグラスワンダーを見つけたんです。あまりの強さに衝撃を受けて、「この馬が出世することによって、俺も出世できるかもしれない。逆にこの馬が走らなかったら、俺も芸人として終わりだ」と、なぜか自分と馬を重ねて、変な気持ちになったんですね。

 あるときグラスワンダーが年末の朝日杯に出ることになり、自信があったから、家にあるもの全て質屋に預けてお金をかき集めたんです。幸いにもこのレースはグラスワンダーが勝つんですけど、もし負けていたらどうなっていたか(笑)。

グラスワンダーが

「人生に逆転はあるんだ」

ということを教えてくれた。

 ところがその後、グラスワンダーが怪我をしてしまうんですね。さらに怪我が治ってレースに出ても散々な負け方をしてしまう。

 1998年の有馬記念。このとき自分も「芸人はもう終わりだ」という気持ちで中山競馬場にいました。「年が明けたら辞めよう」と相方に伝えて、福岡に帰るか、東京で働くかまで考えていました。

 そしたらこのレース、グラスワンダーが最後の直線で抜けてくるんです。「グラスだ! グラスだ!」って、もう記憶がないくらい興奮しました。初めて競馬場で泣き崩れました。やっぱり芸人を辞めたくなかったんでしょうね。グラスワンダーが「人生に逆転はあるんだ」ということを教えてくれました。

カンニング竹山

 本当、競馬は人生の縮図のよう。もし、競馬に興味が出た人は、まず競馬場に行ってほしいですね。JRAの競馬場は日本中どこに行ってもきれいだし、今だと女性同士でも全然怖くない感じの作りになっています。

 競馬場に行って、サラブレットのすばらしさというか、美しさを見てほしいです。まずそこからだと思います。サラブレッドに触れてみることが関心を持つ一番のきっかけになると思いますね。あと、競馬場も多くの人に来てもらおうと努力している。ご飯がおいしかったり、お土産とかグッズがいっぱいあったり。女性向けのコーナーみたいなのもあったりもするから、そういうのも楽しいと思いますよ。

 ぜひ、競馬場に足を運んでみてください。

カンニング竹山

カンニング竹山 芸人。福岡県出身。テレビでは、『直撃LIVE グッディ!』『ノンストップ!』(共にフジテレビ)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『ビビット』(TBS)など、ラジオは『たまむすび』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。また、著書『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねぇかよ!』が発売中。

撮影/橋本直貴
構成/大塩 大