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小宮山雄飛×角田光代

小宮山雄飛×角田光代

小宮山雄飛×角田光代

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子

居酒屋を舞台に、ミュージシャン・小宮山雄飛が

ゲストとトークを繰り広げる、第一回。

小宮山雄飛が仲良しのクリエイターとお酒を飲みながら縦横無尽に語りつくすほろ酔い対談。初回のお相手は酔っぱらって記憶がないときに出会ったという作家・角田光代さんです。

小宮山 最初は下北で出会ったんですよね。二軒目に流れたときに角田さんがいて…って覚えてないんですけど(笑)。
角田 私もギチギチに酔っ払っていて覚えてないんですけど、翌日、携帯を見たら写真が残っていて、夫に「これ誰?」って聞いたら「ホフディランの小宮山さんじゃん!」って(笑)。
小宮山 僕もいつも携帯を見て「最後、ここに行ったのか…」と知らされています(笑)。まぁ、そんなご縁があって、僕がやっている番組に出ていただいて、みんなで飲むような感じになったんですよね。角田さんは声の小さい人だなっていうのが最初の印象です。
角田 アハハ、よく言われます。
小宮山 でもだんだん大きくなってくるんですよ。それで酔い加減がわかる。

小宮山雄飛×角田光代

酔うと気持ちが

楽になって

喋れるようになる

角田 ワイン半分くらいから気持ちが楽になってきて、喋れるようになるんです。常にビクビク緊張していて、美味しく飲む、とかじゃなくて自分が順応するために飲む感じですね。
小宮山 僕、思うんですけど角田さんはものすごく裏があるんですよ。酔うと普段抑えているものが出てきて、僕らはその状態を勝手に“黒角”と呼んでいるんですけど(笑)。
角田 アハハ! 確かに黒いですね。ネガティブで悪いことばっかり考えてるから。
小宮山 いや、説教臭くなるとか面倒くさくなるんじゃなくて、姉御みたいになるんです。例えば応援するにしても、今の「頑張ってくださいね」みたいなソフトな感じから、「あんた、頑張んなさいよ!」みたいな(笑)。
角田 今の二倍は喋るようになって、ちょっと口うるさくなりますね。でも、小宮山さんは酔ってデロデロでも、見た目は普通ですよね。たまたま小宮山さんちの近くで飲んでいるときにお呼びしたら、普通に来てくれて、普通に飲んで「じゃ!」って帰って行ったんですけど、後で聞いたらすべてを覚えていなかった(笑)。
小宮山 家でワイン二本あけて寝る寸前だったんですよ。
角田 人間の可能性を見た気がしました。それとスマートですよね。普通、飲みすぎると濁った感じになるじゃないですか。それがまったく感じられない。
小宮山 いや、実際はすんごい濁っているんですよ。でも、濁りを感じさせないスキルはあると思います。このままここにいるとみっともない姿を見せてしまうと思うと、サッと帰るというか。それが本能で働くんですよ。
角田 普通はそれができない。世の酔っ払いと一線を画している部分ですね。
小宮山 独りになったあとは分からないんですけど(笑)。

「“ものづくり”をする喜びと苦しみについて」
角田 小宮山さんが音楽を仕事にしたのはおいくつのときですか?
小宮山 ホフディランとしてデビューしたのが大学を卒業するタイミングなんです。友達が就職活動しているときにレコーディングをして、友達が新卒で入社したと同時にデビューして、みたいな。珍しいパターンですね。
角田 わたしも似たような感じです。大学4年のときに今の仕事に就くためのことをやって、そのまま仕事にできちゃうと「ものづくりをする喜び」より「仕事」感が強くなる。仕事が円満に進むように日々を回す、みたいな。

日々それをするのが

“普通”という

職人的な仕事の感覚

小宮山 悪い意味でなく「仕事」ですよね。日々それをやるのが普通というような。僕、豆腐屋さんってすごいと思うんですよ。毎日毎日、納得できる豆腐をルーティーンで作れる。今日はデキが良い悪いみたいな気持ちが入っているうちはまだ甘い気がするんですね。僕らは歌詞や物語が豆腐のようにはいかないから、どうしても満足、不満足はあると思うんですけど。角田さんはご自分で9時5時って決めて書いているんでしょう? それもまた職人的ですよね。
角田 芸術家肌じゃないから「閃いた!」みたいなイイことがないんですよ。座って出そうとしないと何も出てこないので。
小宮山 5時以降に、何かが浮かんだらどうするんですか?
角田 それが浮かばないんですよ、ま~ったく!(笑)
小宮山 本当ですか!? どこで終わらせるんですか?
角田 ワンセンテンスのマルまで。それを4時40分くらいには意識しますから、ちゃんと定時に終わります。
小宮山 徹夜しようとかないんですか?
角田 〆切りが多かったときは、残業はしたくないので、早朝出勤してました。だから、作業的にお豆腐屋さんというより封筒の糊付け作業とかに似ていると思いますね。
小宮山 糊付け作業!(笑)本当に職人ですね。
角田 小宮山さんはどうやって作業するんですか?

小宮山雄飛×角田光代

小宮山 僕は考えて浮かばなかったら寝ます。で、夢でいい曲だなぁと思って聴いていたものを、起きたあと携帯に録っておいて、というのが一番いいものが浮かびますね。
角田 へー! それは芸術家肌ですね。羨ましい。
小宮山 いや、芸術家ではないんですけど……でもこないだ、「超イイ曲だ!」と思いながら飛び起きて曲を録ったんですけど、次の日に聞いたらワタナベイビーの曲だったんですよ。
角田 アハハハ!!(爆笑)
小宮山 「恋は渋谷系」って曲なんですけど(笑)。それで、ちょっと見直しました。僕が超いい曲だと思うくらい、いい曲だったんだな、と思って。それは渡辺君にも話しましたね。
角田 すばらしいコンビですね。(後半に続く)

角田光代 かくたみつよ 神奈川県出身。早稲田大学第一文学部卒業。'90年に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’05年「対岸の彼女」で直木三十五賞を受賞。「空中庭園」、「真昼の花」、「八日目の蝉」、「紙の月」など、映像化作品も多数。

小宮山雄飛 こみやまゆうひ ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブディレクター。全国ツアー「ホ二人旅」がファイナル。1月24日(日)JTアートホールアフィニスで開催。《愛しあって世界は回る》も、無料で配信中!今すぐ「hoff.jp」へ!

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子