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岩井志麻子

岩井志麻子

岩井志麻子

コメンテーターとしても活躍する岩井さんの

本業の作家としての日常をたずねてみた

下ネタを連発する“エロおばさん”として多くのテレビ番組に出演し、その強烈なキャラクターが一部で大人気の岩井志麻子さん。しかし本業は数々の賞を受賞してきたホラー作家界のビッグネームだ。そもそも作家になったのはなぜ?テレビではあまり出さない作家としての日常も伺った。

私、小さいころはボヤ~ンとしていて、ライトないじめられっ子だったんですよ。その状況を脱するための、私なりのサバイバル法として考えたのが『怖い話とエロい話』。みんな好きじゃないですか。この話をしない集まりってないですよね?でも当時はインターネットも何もない時代でしたから、ネタ集めはかなり自分で工夫しましたね。するしかなかった。大人の話を聞くとか、こっそり『11PM』を観るとか、あとオトンの週刊誌を読むとか(笑)。そういう努力の末に「志麻ちゃんの話は面白い、あの話を聞かせて」と言われる座を勝ち取ったのが、今の本業にも繋がった感じですね。だから私は40年以上怖い話とエロい話でサバイバルしているわけです(笑)。

岩井志麻子

私のスピリッツというか、

DNAが百姓の子なんです。

そのエロい話のネタ集めの途中に出会ったのが『週刊新潮』の『黒い報告書』でした。『黒い~』は実在の事件を元に、様々な作家がエロ小説として描く名物企画なんですが、私、これがものすごく大好きだったんですよ。もう必死でエロい場面を読んでいた。だから、あの世界観にはものすごく影響を受けていると思うんですが…なんと月日は流れ、私、今その『黒い報告書』の執筆陣になっているんです! 三つ子の魂じゃないですけど、願えば叶うもんです。

レギュラー番組も抱え、多忙な岩井さん。小説はいつ書いているのだろう?

うちの実家は岡山の農家なんですけど、私のスピリッツというか、もうDNAが百姓の子なんです。早寝早起きだし、どうやっても夜遊んで昼寝るような都会の作家の生活ができない。農民は土を耕して、種を蒔いて、育てて…と収穫までにコツコツ時間をかけてやる。それと同じで私は毎日コツコツ書かないといかんのですよ。しかも私は働き者の百姓だから、百姓が農閑期にわらじを編んだり桃を栽培したりするのと同じような感じで、テレビに出ているわけです。でもそれは決して片手間って意味じゃない。タレント業はもちろん楽しいんですけど、楽しいだけじゃなくてそっちも本業と同じくらい重要なんですわ。冷害で農作物がダメになってもまた種を蒔いて農業を続けていけるよう、すべては稲の収穫のため。すべては小説のため。そんな私を嫌がる身内は娘だけですね。親は「また志麻子が何か言っとるわ」とか、妹も「お姉ちゃんはそうやって生きていくしかないんだから」と理解してくれていて(笑)、息子も面白がっているんですが……。今、過干渉な母を持つ娘の「母が重い」問題が話題ですけど、まったく方向性の違う母親の問題ですけどね(笑)でも、私ももう、これじゃないと生きていけませんから。

性癖でネタを拾い、

性癖で書いている。

タレント業が、本業に及ぼす影響とは?

書くネタにつまることはないですね。私、変な人の誘蛾灯と呼ばれているんですけど、日々、何かが来るんですよ(笑)。今はちゃんとした事務所に所属していますが、以前、フリーで活動していたときにルミちゃんという女が近づいてきた。このルミちゃんの経歴がすごいんです。元テレビ局のディレクターで、元大手芸能事務所のマネージャーで、すごい人脈があって…今思うと怪しいんですけど、なぜか私は『すごい人が来たな~』と思ってマネージャーにしたんですね。結果、これがとんでもないホラ吹き。まったくの素人で請求書一つ書けないし、Wブッキングはするしで、私は彼女を雇った3年間で信用を失い、テレビの仕事もごっそり失った。でも私一人だけがそんな状態に気づかなくて。そんなとき仲良しの編集者が「もう黙っていられない」と教えてくれたのがとある風俗店のサイトで、そこに顔出しで載っているデリヘル嬢のレイラさんが間違いなくうちのマネージャーだったんですよ! 実は彼女の正体を知ってる人も、みんな私に気を遣って黙っていたんですね。しかし何が衝撃ってルミちゃんにとってマネージャーは本業の風俗嬢をやる片手間にやってたってことですよ!(笑)あとで分かったんですけど、彼女は私みたいな人間の周りをうろついて取り憑く隙を狙っていたんですね。それでちょっと業界人ぶったりしたいだけ、みたいな。これも作家だけをやっていたら遭遇しなかった事件で、この話はいろんなところで書いたりして大きなネタになりました。ある意味、小説に書きたいから変なのに近づくということはあるかもしれませんね。でもこれは社会的地位のある人が痴漢をするのと同じで、変な人に深入りしてしまう私の性癖なんです。性癖でネタを拾い、性癖で書いている。こう言っちゃナンですけど、良い人とか立派な人より、とんでもないワルとか狂っているヤツのほうが書いていて楽しいし、読む人も楽しいでしょう? これからも、この性癖は変わらないでしょうね(笑)。

小宮山雄飛です。新しくなったFILTで僕が迫りたいのはずばり<本質>です。そのために僕も自分のコラムで本業である『音楽』について改めて考えてみることにしました。で、どうせなら色んな方にも本業について語ってもらおうと、このインタビューではメディアで活躍する著名人たちの本業に迫ってみたいと思います。岩井志麻子さんはテレビのコメンテーターとしても有名ですが、もちろん本業は作家さんです。ちょうど昨年末に行われたライブイベントでお会いしたのですが、その時は湯山玲子さんとスナックのママとして人生相談をやっておりましたが、本業は作家さんです(笑)。多才な人にこそ本業について語ってもらいその人の<本質>を知ろう! という、後付けではありますが大きなテーマがあるのです。

岩井志麻子

岩井志麻子 いわい・しまこ 岡山県出身。小説家として『ぼっけえ きょうてえ』で日本ホラー小説大賞を受賞するなど、様々な賞を受賞する小説家。その傍ら、鋭い人間観察力と、あくなき恋愛とエロの探求力も注目され、テレビやトークショーでも人気。東京MX「5時に夢中!」ほか様々な番組に出演中。