FILT

小宮山雄飛×清水崇

小宮山雄飛×清水崇

小宮山雄飛×清水崇

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子
取材協力/和食 木ノ下(南青山)

居酒屋を舞台に、ミュージシャン・小宮山雄飛が

ゲストとトークを繰り広げる、第六回。

お酒を飲みながら縦横無尽に語りつくすほろ酔い対談。今回のお相手は映画監督・清水崇さん、後編です。
清水 怖いものの続きだと、僕は子どももある意味で恐い。かわいくもあり、面白くもあり、でも純粋無垢では片づけられない残酷さも併せ持っていて、もう存在が宇宙ですよね。
小宮山 子どもかぁ……親の行動とか口癖とか、何でも吸収するから、親になるって恐いなぁとは感じますけどね。
清水 理屈で計り知れない存在でしょ。次男がまだ幼稚園の時お巡りさんによる交通安全の授業で、園児たちがあまりに騒がしいので、堪りかねた保母さんが「静かにしなさい! どうしてかわかる?」って質問をしたら、しばらく緊迫した園児たちが「話が聞けないから」とか「お巡りさんが困るから」とか答える中、うちの子は「キノコが生えてきちゃうからです!!」って答えた(笑)。あまりの答えに保母さんも笑ってしまい…ってことがあったり。
小宮山 え~!? なんですか、それは。突然キノコですか?

小宮山雄飛×清水崇

理屈で考えると、

怖くなるくらい

面白い。

清水 謎のまま。聞いても、本人が覚えてないし。多分、スーパーマリオのことを考えてたとか、その程度だと思うんですけど。でも理屈で考えると、怖くなるくらい面白くて。
小宮山 大人は何か理由があるのかと思っちゃうけど、そう考えたら負けですね…清水さんの新作(『こどもつかい』2017年公開)も、そういう、こども恐い的な話なんですか?
清水 そうですね。子どもたちを操る男を滝沢秀明さんが演じてて。
小宮山 へ~! なんだか想像がつかない。
清水 ホラーだけど、コミカルなシーンもあるし、見た事の無いタッキーのキャラクターが見れると思います。
小宮山 面白そう。ホラーが苦手でも見てみたいです。しかし、それにしても清水さんって家族が好きですねぇ。
清水 え! 何ですか、急に……。
小宮山 いや、前に対談したときも家族のことを話していて、今回もそうだから。
清水 それ、うちの妻の前で言ってもらっていいですか(笑)。
小宮山 アハハ。でもそう、僕らって本当に家族のことを思っていても、いまいち理解してもらえないですよね。ツアーだなんだって、家を空けると、すぐ「家のことを考えてない」って言われたりするし。土日休みのお父さんより家族行事に参加してると思いますけど、どうも評価してもらえないんですよ。
清水 確かにわかります…身近な存在になっちゃうと、作品や仕事含め、互いへの気遣いや思いやりはあっても、ある意味当たり前になって、口にするのは恥ずかしくなっちゃうし、何より冷静さや客観性が失われますから。妻は妻で子どもや家庭の事で手一杯ですしね。

「今、一番やってみたいことは?」
清水 絵本を書くこと。できれば絵と文と両方やりたい。勉強したわけじゃなくて自己流なんですけど。一応、「できたら持ってきてください」と言ってくださる出版社もあったりはするんですが。
小宮山 内容は決まってるんですか?
清水 幾つか構想はあります。大人が読んでも面白いものがいいですよね「怪談えほん」というシリーズがあって、僕、ほとんど読んでるくらい、すっごく面白いんですよ。そういうちょっと恐い感じのものもいいかなって。

小宮山雄飛×清水崇

「感覚」の世界って

面白いなぁと

思うようになった。

小宮山 僕は今、辛酸なめ子さんとスピリチュアルスポットを回る連載をやっていて、中立的な立場から辛酸さんにつっこんだりしてるんですけど、そういう「感覚」の世界って面白いなぁと思うようになった。わりと「理屈じゃなくて気持ちいい」みたいな文化から遠いところにいたんだけど、もっとそういう要素を取り入れてみたいなぁと。
清水 小宮山さんの音楽のなかに?
小宮山 楽曲なのか歌い方なのか……。僕、メロディがよくできてるとか、速弾きがすごいとか、物理的なことに感動することが多かったんですけど、そうじゃなくて、教会で歌うゴスペルとか、魂が先に感動するみたいな音楽もいいなあと思うようになったんです。
清水 ああ、いいですね。音楽でいうと、僕は自分の映画にカッコいい音楽をつけられるようになりたいですね。ずっと思ってるのは、ホラー映画にBLANKEY JET CITYをつけてみたい。
小宮山 いいじゃないですか! ちなみにアメリカ映画って過去の名曲をガンガン使うじゃないですか。でも日本だとあんまり使われないのは、権利的なことが難しいんですか?
清水 高いんですよ。製作費をそこに割けない。アメリカ映画は必要だってなったら、やっぱりお金かけますから。あの曲だからよかったって映画いっぱいあるじゃないですか。
小宮山 ミュージシャン本人は絶対に使って欲しいはずですよね。そこのシステムを変えられたらホントにいいと思う。
清水 昔、『音女』って毎回一話完結の深夜ドラマがあって。エイベックスさんが権利を持っている曲をモチーフに、いろんな監督が自由に考えて100曲分、100話のミニドラマを作ったんです。僕も参加したけど、多様なジャンルの短編があった。そんな試みが幅広くできれば面白いんですけどね。
小宮山 使用料が高いといってもミュージシャン的にさほど儲からないから、レコード会社とかJASRACの問題ですよね…って世知辛い話ですみません(笑)。でも急に「我々で手を組んでやりましょう!」とか言うのもわざとらしいかなって。
清水 いや、やりましょうよ。小宮山さん、昔、音楽作った映画で役者もやってたでしょ。もう、出演もしてくださいよ!
小宮山 あれ3秒くらいのチョイ役なのに、誰がどう見ても下手なんです。そこだけは考えさせてください(笑)。

清水崇 しみずたかし 映画監督(シャイカー所属)。「呪怨シリーズ」をはじめとするホラー作品や「魔女の宅急便」「9次元からきた男」などを手掛ける。最新作「こどもつかい」が'17年に公開予定。

小宮山雄飛 こみやまゆうひ ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブディレクター。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュースなど幅広く活躍。ライブ情報など、詳しくは「hoff.jp」へ!

撮影/野呂美帆
取材・文/大道絵里子
取材協力/和食 木ノ下(南青山)