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寿大 聡

寿大 聡

寿大 聡

撮影/伊東隆輔

活躍中の俳優・寿大聡が、縁のあるゲストを

お招きして、熱く語らう連載の第四回。

 尊敬できる先輩やお世話になった方々と語り合う、「トーク侍」。第四回目は、よく一緒に飲みに行くという、俳優の木下ほうかさんの登場です。
寿大 初めてお会いしたのは松本清張の『地方紙を買う女』というSPドラマで、撮影自体は2年くらい前でしたよね。
木下 そう、コンビの刑事役でね。あんまり覚えてないけど(笑)。スタジオとロケはどっちが先でしたっけ?
寿大 スタジオが先でしたよ。角川大映スタジオで。その後、石川県の能登でロケをやったんです。
木下 そのロケで、たま~に寿大くんからもらいタバコをしてね。当時、寿大くんは何を吸ってたんだっけ?
寿大 ショートホープです。そこからよく話すようになって。
木下 結局ね、僕たちの役が二人して田村正和さんに挑む刑事の役だったじゃない。あの人は、決してNGを出さないって噂で。だから僕たちがNGを出したらえらいことになるわけ。
寿大 そうですよ、めちゃくちゃ緊張しました。

気持ちを

ほぐしたかったし、

距離を詰めたかった。

木下 だから、ロケで寿大くんの気持ちをほぐしたかったのもあるし、距離も詰めたかった。じゃなきゃ会話なんてしてないよ。何のメリットもない。
寿大 いや、ちょっと待ってくださいよ(笑)。でも、本当、ほうかさんの方から歩み寄っていただいたので助かりました。
木下 やっぱり、ドラマを作る上で面白いコンビにして何か残さないと意味がないしね。ホテルの近辺には何もなかったから、寿大くんの部屋に押しかけて部屋で飲んだりもしたよね。
寿大 石川弁も難しかったし、ほうかさんのセリフもすごい多くて、そんな中で気遣っていただいて。ずっとテレビや映画で観ていた方なので、普通、気軽に話せませんよ。
木下 あの時は寿大くん、無口でおとなしかった(笑)。
寿大 ロケの後、2、3ヵ月くらい経ってから今度は僕から飲みの連絡をしたんですよね。
木下 お酒っていうのは一種の照れ隠しというか。能登のときもそうだけど、そういうものがないとお互い打ち解けられなかったから。
寿大 なんでも話せるんですよね。演技のこととかも。
木下 飲み屋で演技論って嫌われるんだけど、好きな人もいる。だから我々は煙たがられるんだよ(笑)。
寿大 ふふふ、気をつけます(笑)。ほうかさん、ドラマのときも現場で僕にアドバイスしてくださったんですよ。覚えてます?
木下 これね、監督がいるのに演者が同じ演者にアドバイスするのって、実はタブーなの。でも僕は全然言うほうだし、僕自身も山崎努さんとか先輩の役者から「お前、いいか、こうやれ」って教えてもらっていたから。
寿大 そうだったんですね。
木下 僕は先輩にも意見するよ。遠回しにね。それで、そのドラマが面白くなったり、良くなったりすればみんな嬉しいわけだから。バラエティとかもせっかく出るなら面白くしたいじゃない。
寿大 ほうかさんの出ているバラエティとか、上手に話すなって思いながら観ています。
木下 僕、数年前までは、そういうバラエティによく出る俳優って軽蔑してたの。でも、世の中的にどんどん役者がバラエティに出る風潮になっていたじゃない。で、2年前くらいに『ごきげんよう』に出て、あ、面白いなって思ったの。
寿大 トーク番組とか、よく落ち着いてしゃべれますよね。
木下 演技とは別の緊張だよね。バラエティって、いつ話を振られるかわからないし、話を用意していても流れによっては飛ばされちゃうし、発言をその場で考えないといけないこともある。想定外のことばかりなんですよ。最近気づいたのは、司会者と目を合わさなければ話を振ってこない(笑)。

いつか一緒に

旅番組を

やりたいですね。

寿大 あはは、そうなんですね!
木下 バラエティに出たいの?
寿大 いや…オファーをいただければ、挑戦したいんですけど。
木下 一番いいのはね、旅番組ですよ。道すがらにいくらでも話の材料はあるわけだから。
寿大 いつか一緒にやりたいですよね。ほうかさん、今後やりたいこととかあるんですか?
木下 僕はね、役者はあとできても10年ちょっとくらいだと思っているの。引退して、大阪芸大の教授になろうと思って。
寿大 本当ですか!? 大阪芸大はほうかさんの母校ですよね。大学で授業をするってことですか?
木下 そう。今、舞台芸術学科で、劇団☆新感線のいのうえひでのりさんや、欅坂46の振り付けをしているTAKAHIROさんが教えてたりするからね。
寿大 ほうかさんが教える日が来るかもしれないですね。
木下 でも、自分から言うんじゃなくて、向こうから「来てください」って言わせなきゃいけない。だから、芸大のオペラ公演に出演したりして、貢献してるの(笑)。
寿大 10年後っていうのはどうしてですか?
木下 不安になるんですよ。この仕事って答えがないでしょ。一つの作品が終わって、次の作品に入って、セリフを覚えてって…。だから早く引退したいんですよ。
寿大 いやいや、続けてくださいよ。
木下 専門用語も大変だしね。医者のドラマとかさ、医療用語だらけじゃない。そういうプレッシャーとずっと付き合っていかなきゃいけないんだよね。
寿大 すごくよくわかります。
木下 僕、役者って仕事は好きだけど、楽しくはない。やっぱり職業だから、ちゃんと結果出さなきゃいけないし、見てくれる人に喜ばれないといけない。楽しんでいる場合じゃないんですよ。
寿大 難儀な仕事かもしれないですね。
木下 売れてないと不安で、売れ出しても落とし穴はあるからね。ときどき感じるんだよ、この仕事の虚無感とか孤独感とかさ。これは僕が独身だからかもしれない。寿大さんも家族は大事にね。
寿大 ほうかさん、結婚は?
木下 その辺は慎重にね。
寿大 なるほど。楽しみにしてます!

木下ほうか きのしたほうか 俳優。1964年生まれ、大阪府出身。1981年に映画『ガキ帝国』でデビュー。現在、ドラマ『先に生まれただけの僕』(日テレ系)、『ハケンのキャバ嬢・彩華』(Abema TV・朝日放送)などに出演中。バラエティでは、『痛快TV スカッとジャパン』で活躍中。2018年には出演映画『空飛ぶタイヤ』が公開予定。

寿大 聡 じゅだいさとし 俳優。仲代達矢主宰の無名塾出身。『婢伝五稜郭』『荒木町ラプソディー ~地層捜査~』などの舞台に出演。2013年には三池崇史監督作品『地球兄弟』に出演。佐々木譲原作の出演作『連続ドラマW 沈黙法廷』のDVD-BOXが1月28日(日)に発売。また、横尾初喜監督の最新映画『ゆらり』(公開中)に出演。

撮影/伊東隆輔