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三池崇史

撮影/野呂美帆

 新型コロナウイルスに伴う外出自粛期間中においても、三池監督はやはり多忙だった。

「自宅にいましたけど、意外とやることは多かった。パソコンを2台並べて、1つでリアルタイムの編集画面を見ながら、もう1つで編集部さんと話して“もう3コマ切って”とか、ロンドンとロサンゼルスと南アフリカを繋いでオンラインで美術の打ち合わせをして、ロケ場所の写真を見ながら“この木の形はこうじゃない”とか言っているのは、何か不思議な感じがして面白かったですね」

 リモートでの映画作りを経験したことで、気づいたこともある。

「その場所に通ったり、集まったりすることは非常に尊い行為だと思っていたけど、状況によっては省いたほうが効率は良くなる。打ち合わせの5分前まで寝ていてもいいんだから(笑)」

三池崇史

 そして、三池監督はコロナ後の“働き方”についても言及する。

「もちろん全部がリモートでいいとは全然思わないし、それぞれが向いているやり方はあると思います。これまで通り、通勤して会社で仕事をしたほうが効率的だという人もいる。でも、個人が自分に適した働き方だけをやっていたんでは、組織はバラバラになってしまう。映画作りもそうだけど、誰かがきっちりと方針を決めなきゃいけない。その方針に合わない人も出てくるだろうけど、それはこれまでと一緒だからね」

 今後、日本の映画界はどのようになっていくのだろうか。

「確実に変わっていくと思いますよ。これまでも、映画っていろんな変化があったんです。誰もフィルムが無くなるなんて思ってなかったし、昔はデジタルで映画を撮るなんて考えられなかった。でも、今じゃ、フィルムで映画を撮ろうと思ったら大変だからね」

 新しいものを生み出すためには“変化”が必要不可欠。三池監督は自身の経験から、そう指摘する。

「時代という壁を乗り越えられた人が、新しいものを作っていくし、事実、デジタルに合わせて次の世代が出てきた。それは撮る側が変えたんじゃなくて、時代に合わせて変わっていったものだから。僕が映像の世界に入ったときだって、各映画会社に映画監督をトップとした縦の体制ができていて、それは絶対に崩せないものだったし、僕らが一緒に仕事をすることも無かったんです。要は住んでいる世界が違うんですよ。“よくそんなのやってるね……”なんて見下されたりしちゃって。“なんだよ”なんて思っているうちに、いつの間にか変化が起きて、みんないなくなっちゃった。“監督がいないけど、どうするの?”という状況の中で、僕らフリーの人間が映画監督になっていったという経緯がありますから」

三池崇史

 今回の新型コロナウイルスも、映画界にとって大きな変換点になることは間違いない。先の見えない不安は募るばかりだが、三池監督はあえて希望を口にする。

「全てがリセットされた感覚ですよね。誰もがコロナ以降の映画は未体験なので、そういう意味では僕らも新人(笑)。こういうのを作りたいとか、こんなのもいけるんじゃないとか、きっと賑やかになっていくはず。何もない世界にみんなで漕ぎ出していくわけだし、きっと僕らが想像つかないもの、全然次元が違うものもポーンと出てくると思う。もっと自由に何だってできるようになるし、ひょっとしたら映画という概念だって変わっていくかもしれない。不安がっていてもしょうがない。どうせ、いつかは地球だって宇宙だって終わるんだから(笑)」

三池崇史 みいけたかし 映画監督。1960年生まれ、大阪府八尾市出身。多くのVシネマの監督を務める。1995年に『新宿黒社会』で劇場映画監督デビュー。主な監督作品に『十三人の刺客』『クローズZERO』『悪の教典』『無限の住人』、『ラプラスの魔女』『初恋』など。最新作『劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ! ~映画になってちょーだいします~』が7月23日公開。

撮影/野呂美帆