尊敬できる先輩やお世話になった方々と語り合う、「トーク侍」。 第三回目は、ドラマ『半沢直樹』や、寿大さんも出演した『せいせいするほど、愛してる』などを手掛けたTBSのプロデューサー・伊與田英徳さんの登場です。
寿大 お久しぶりです。1年ぶりですね『せいせいするほど、愛してる』から。
伊與田 もう1年も経つんだね。最初に会ったのは、日本映画テレビプロデューサー協会のアクターズセミナーだったっけ?
寿大 そうですね、10年くらい前の。僕は当時、ドラマや映画の仕事が全然なくて、なんとか次につなげたいという想いでそのセミナーに応募したんです。このときの審査員が伊與田さんでした。
伊與田 そうそう。応募者には課題が与えられて、その年は確か自由演技だったんだよね。それで寿大さんが大賞を獲って。
寿大 はい。シェイクスピアの『冬物語』のワンシーンを審査員の皆さんの前で、3分くらいやりました。
伊與田 そこからなんとなく交流が始まって、舞台も見に行かせていただきましたね。
寿大 本当にありがとうございます。初めてお仕事でご一緒させていただいたのは、『新参者』のSPで『赤い指』という作品でした。そのときに、「イチローだってドラフト4位から這い上がって今の立場があるんだから、お前も頑張れ!」みたいなことを言ってくださったんです。
伊與田 そんな偉そうなこと言ったかな(笑)。すいません。
寿大 いやいや、僕、それをずっと覚えていて、とても励みになったんですよ。
伊與田 あの時、27歳とか28歳くらい? 遅咲きと言ったら失礼だけど、ある程度、年を重ねてから売り出しにいくのって辛かったと思うんだよね。でも、最初にお会いしたときから「やってやるぞ!」という強い想いを感じたし、アスファルトの下から生えてくる草みたいな、踏まれてもへこたれない雑草魂を持っていたから。本人はそう思ってないかもしれないけど(笑)。
寿大 そんなことないですよ(笑)。そう言っていただけてうれしいです。その後『TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~』や『せいせいするほど、愛してる』に呼んでいただいて。
伊與田 すでに舞台では主演の経験を積まれていたんだけど、映像に来たときになかなか主演はできなくて、だから、きっと寿大さんは役と自分の思い描いているものとの差に苦しんだと思うんですよ。でもこれはもうしょうがない。うまくバランスをとっていかないといけない。芝居はしっかりしているし、存在感もあるので、自分の力を信じてどんどんやってほしいと思ってました。
寿大 「役者はアイドルとは違うんだから、40歳、50歳で頑張れ」っておっしゃっていただいたのも励みになっています。
伊與田 最終的に50歳になって役者をやっていられるかどうかだよね。演技を続けるんだっていう強い意志が重要だと思う。
寿大 続けることが大切ということですね。
伊與田 みんな、どこかで諦めちゃうから。とにかく打席に立ち続けることが大事で、打席に立ってバットさえ振れば、目をつぶっていても球に当たるかもしれないんだから。もちろん他のことで頑張る道もあるんだけど、どれだけ最初の意志を貫けるかだよね。僕もいろいろ諦めたいなと思うこといっぱいあったけど、そこはぐっと踏ん張った。
寿大 そういうこともあったんですね。伊與田さんは、ずっとプロデュ―スを目指して、やってこられたんですか?
伊與田英徳 いよだひでのり TBSプロデューサー。制作会社を経て、1998年にTBSへ入社。『クロサギ』『新参者』『半沢直樹』『下町ロケット』など、数々のヒットドラマを担当。2017年10月期には、自身が手がける新ドラマ『陸王』(日曜・夜9時放送)がスタート。
http://www.tbs.co.jp/
rikuou_tbs/
伊與田 学生の時にプロデューサーという仕事を知り、こりゃ面白いぞと思たのがきっかけかな。
寿大 まずはADからみたいな。
伊與田 いや、僕ね、最初はTBS落ちているんですよ。
寿大 本当ですか!?
伊與田 そうそう。大学出たときに東京のキー局は全部落ちて、結局どうしようかなって考えて、諦めかけたんだけど最後の最後で諦めきれなくて。大手に内定決まってたけどそれを蹴って、6人くらいの小さい制作会社に入ったんですよ。親に内緒で(笑)。そこでしばらく経験を積んで、TBSには中途採用で入ったの。
寿大 すごい! まさに諦めないことが大切だったわけで、そこから、数々のヒット作につながっていくんですね。10月にも新しい『陸王』というドラマがスタートするそうですが、これはどんなドラマなんですか?
伊與田 日本の足袋屋さんの話。昔はみんな履いていたよね。
寿大 今じゃ足袋を履いている人は少なくなりましたよね。
伊與田 テレビ業界じゃ照明さんくらいかな? ドラマは、老舗の足袋屋さんが生き残りをかけて、その足袋の技術を活かしたランニングシューズを作り上げる物語。大企業と戦いながら零細企業がどう生き残っていくかという話なんです。
寿大 聡 じゅだいさとし 俳優。仲代達矢主宰の無名塾出身。『婢伝五稜郭』『荒木町ラプソディー ~地層捜査~』などの舞台に出演。2013年には三池崇史監督作品『地球兄弟』に出演。TBSドラマでは、『せいせいするほど、愛してる』などに参加。佐々木譲原作の出演作『連続ドラマW 沈黙法廷』(WOWOW)が9月24日(日)よりスタート。
寿大 主演は役所広司さんですよね。
伊與田 原作は池井戸潤先生で、ならではのカタルシスとテーマ、エンタメ性がある。それをどう映像化していくかという時に、役所さんが乗ってくれた。
寿大 実は僕、役所さんが大好きで無名塾に入ったんですよ。
伊與田 あ、そうなんだね。
寿大 大尊敬している憧れの先輩なんです。ドラマは、まさに今日のお話でも出ていた、諦めない、チャレンジするという部分が主題になりそうですね。
伊與田 そう。まずは打席に立って、じゃあ、そこでどうやって球を打つのか、どう頑張るのかという話だよね。
寿大 ドラマ、本当に楽しみにしています! 今日はありがとうございました。