今回の「トーク侍」のお相手は映画祭コーディネーターの冨田三起子さん。上映する作品を選んだり審査員を手配したり、各国の映画祭で日本映画関連の案件を担当する冨田さん。寿大さんとは、三池崇史監督によるWEBムービー『地球兄弟』がローマ国際映画祭で上映されたときからのお付き合い。
寿大 初めてお会いしたのは2013年のローマ国際映画祭でしたよね。三池監督もまさかと思っていたそうなんですけど、冨田さんが映画祭のディレクターであるマルコ・ミュラーさんにプレゼンしてくださったのがきっかけで『地球兄弟』がローマへ行くことになって。
冨田 『地球兄弟』を観せていただいたとき、シュールでおもしろいなと思ったんです。舞台は現代なんですけど、寿大さんの演じる宇宙人と、侍と妖精が登場人物で。チャプターごとにフランス語が挟まっているのも変でおもしろい(笑)。これは日本独自の笑いだと思っていたんですがローマでもすごく観客が喜んでいましたよね。劇場は満員で立ち見も出ていました。
寿大 僕もローマ映画祭に行かせていただいて、観客の方々と一緒に観たんですけど、最初は反応が“無”だったんですよ。シュールすぎて。パッと横の三池監督を見たら、地獄みたいな顔していて(笑)。でも中盤くらいから見方がわかったのか、すごいウケだしました。
冨田 笑いが巻き起こってましたね(笑)。
寿大 三池監督とは何がきっかけだったんですか?
冨田 2004年に『IZO』という作品をヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティという革新的な映画を上映する部門で出させていただくことになったのが最初ですね。その年のゲストだったクエンティン・タランティーノが『IZO』を観て驚いたらしく、そこから三池監督との交流が始まったり。おもしろいですよね、何がきっかけになるかわからない。2017年にはヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭に『ジョジョの奇妙な冒険』を出させていただきました。
寿大 ローマでもそうでしたけど、三池監督が映画祭に行くとファンがすごくないですか?
冨田 ファンタスティック映画祭はスイスのヌーシャテルという小さな町が会場なんですが、そこに主演の山﨑賢人さんと三池監督に来ていただいたんです。みんなまさか三池監督が来ると思ってないから2000人ほどの会場がいっぱいになってしまって。でも、『ジョジョ』の観客は原作ファンの方も多く「ミイケがちゃんとやっているのか見に来た」という人もいたりして。
寿大 どうなったんですか?
冨田 観客賞を獲ったんです。
寿大 すごい!観客が一番良いと思った作品ってことですよね。
冨田 上映中の観客の反応もよく、やっぱりすごかったですね。
寿大 これはお聞きしたかったんですけど、そもそも冨田さんはどうして映画祭コーディネーターというお仕事をされることになったんですか?
冨田 映画祭に関わることになったのは、1989年に行われた山形ドキュメンタリー映画祭の立ち上げに参加したのが最初です。その後はマルコ・ミュラーのお手伝いをするようになって、2002年にはヴェネツィア国際映画祭やロッテルダム国際映画祭でお仕事をさせていただくようになって……
という感じですね。
冨田三起子 とみたみきこ 映画祭コーディネーター。山形ドキュメンタリー映画祭の創設者の一人で、東京国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭、ローマ国際映画祭、ロカルノ国際映画祭など、さまざまな国際映画祭をサポート。現在は平遥国際映画祭やヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭に参加。
寿大 今はどんなお仕事をされているんですか?
冨田 今は、ジャ・ジャンクーという中国の映画監督がいるんですけど、彼が自分の出身地でもある山西省の平遥で3年前から平遥国際映画祭というのを始めまして、そこでマルコ・ミュラーと一緒にお仕事させていただいています。
寿大 そうなんですね。
冨田 寿大さんの次のお仕事は?
寿大 僕はこの連載にも出ていただいた横尾初喜監督の長編映画2本目となる『こはく』に出演させていただいていて、それが7月に公開されます。
冨田 たしか、横尾さんご自身のお話でしたよね。
寿大 そうです、長崎が舞台の半自伝で、行方不明のお父さんを兄弟が探していくっていう話で。3年前くらいに横尾監督と僕と冨田さんで一緒にお食事させていただきましたよね、恵比寿で。
冨田 横尾さんがまだ結婚なさる前でしたよね。『こはく』はまだ拝見していないんですけど、平遥国際映画祭はインターコンペが第1作目と第2作目の作品までなので、横尾さんの『こはく』は出品の可能性はあります。ただ、全体の本数が少なくて、50品くらいしか上映されないので、日本映画はなかなか入らないんですよ。
寿大 聡 じゅだいさとし 俳優。無名塾26期生。『婢伝五稜郭』『荒木町ラプソディー ~地層捜査~』などの舞台や三池崇史監督の『地球兄弟』に出演。横尾初喜監督による最新出演映画『こはく』が2019年7月公開。
寿大 日本映画は少ないんですね。
冨田 中国は検閲の問題もあったりするので。それに公開時期に合わせ横尾さんの方で上映したい映画祭を考えていらっしゃるかもしれませんしね。どちらにしろ映画にとって良い映画祭で上映されるのが一番なので、そこで注目を集められる形にできればいいですよね。私もいい作品を紹介できればと思っています。
寿大 なるほど! ぜひ機会があればお願いします。冨田さん、明後日からベルリンですよね。だから今回、お時間をいただけたのは奇跡だったなと(笑)。
冨田 とんでもございません(笑)。
寿大 またぜひお会いしましょう。本日はありがとうございました!