親しい方々と語らう「トーク侍」。今回は仲代達矢主催の無名塾の後輩でもある渡邉翔さんと大塚航二朗さんの登場です。
寿大 僕は無名塾の26期生で、2003年に入って、2007年に退塾しているんです。翔と大塚は何期生なんだっけ?
渡邉 僕は27期生で。
大塚 僕が30期生です。
寿大 僕と翔の間が6年くらい開いているんだよね。26期の後はしばらく募集をしなかったから、1期違いだけど在籍期間は被っていない。
渡邉 そうですね。寿大さんとは『斬劇 八犬伝』という舞台の殺陣を指導していただいてからのお付き合いです。
寿大 あれは大変だった。とにかく殺陣のアクションがすごい舞台で、そのときは翔がまだ全然殺陣の経験がなかったので、基礎からやらなきゃいけなかった。
渡邉 たしか1ヵ月しかなかったんです、練習期間が。
寿大 ギリギリこなせた感じだけど、ケガもなくてよかった。
渡邉 実は1ヵ月で9キロも痩せたんです(笑)。
寿大 そうなんだ! で、大塚と会うのは、実は今日で3回目くらいなんだよね。
大塚 僕は翔さんに可愛がっていただいて、寿大さんとは、3年前の無名塾の全国公演の終わりにお会いしたんです。
寿大 大塚はどうして無名塾に入ったの?
大塚 大学生の頃から役者を志していたんですけど、卒業して本格的にやろうと思っても、どこで学んでいいかわからなかったんです。もちろん無名塾の存在は知っていたんですけど、そのときには募集をしていなかった。それで単発のワークショップなどで学んでいたんですけどイマイチしっくりこない。自主舞台もやってみたんですけど、芝居の“しの字”もわからなかった。
寿大 そこで募集があって入ったわけだ。珍しいよね、その世代で無名塾を受けるの。
渡邉 でも、大塚は30期生の中では最年長ですからね。
大塚 ハタチで入ってきた子もいますから。
渡邉 仲代さんも「芸は若い内から」とおっしゃっているので。
寿大 真木よう子さんも中学卒業して無名塾に入ってるからね。翔は無名塾に入る前は、ラーメン屋をやってたんだっけ?
渡邉 そうです。僕、役者になりたくて大学を1年で中退して、とりあえず貯蓄しないと何もできないから、21歳までラーメン屋で働いていたんです。当時は小さな事務所にも入っていたんですけど、でも大塚と一緒で、全然芝居がわからなかった。
寿大 だから無名塾に入ったんだ。
渡邉 父が仲代さんの『人間の條件』を観ていたのもあって。
渡邉 あと、伯母が小さい頃に役所広司さんと同じアパートに住んでいて、役所さんの塾生時代を知っているんですよ。
寿大 それすごいね! 僕は役所さんに憧れて無名塾に入ったから。最初は、舞台の上手下手も知らない状態だった。
渡邉 寿大さんは仲代さんに毎日教わっていたんですよね。
寿大 厳しかったよ。自然に歩けるようになるのも3年かかると言われた。ただ歩くんじゃなくて、なぜ自分は向こうへ行くのかという気持ちを持って、役になりきらないと自然に歩けないとか。でも、そこで学んだことが軸になっている。
大塚航二朗 おおつかこうじろう 俳優。東京都出身。無名塾30期生。ドラマ『アラサーちゃん 無修正』、映画『恵庭事件 知られざる50年目の真実』に出演。その他、『かもめ』や『肝っ玉おっ母と子供たち』など、数々の無名塾公演に参加。
渡邉 翔 わたなべしょう 俳優。神奈川県出身。無名塾27期生。ドラマ『問題のあるレストラン』や映画『悪と仮面のルール』などに出演。5月30日(水)からは、倉科遼原作の出演舞台『女帝』の公演が「CBGKシブゲキ!!」にてスタート(6月3日まで)。
渡邉 寿大さんは今、役者として目標に向かえているんですか?
寿大 いや、目標というものがない。ないというか、いつしか考えなくなっちゃった。特に三池崇史監督に出会ってから。三池監督は「とにかく来た仕事は断らない」ってずっと言っているんだよね。
大塚 なるほど。
寿大 その積み重ねで結果として今がある。こっちがやりたいと思ってやれる職業じゃないし、運とか人間で決まるものだと思っているから、あまり“こうなりたい”とか考えてもしかたない。
渡邉 でも、その考えになろうと思っても難しいですよね。
寿大 プライドが出ちゃうからね。「やりたいことがあるのになんでこんなことやっているんだ」って。でも、どこかで変わってくると思うけど。昔、役所さんが僕の先輩に、「俳優の人生は川にたゆたう小舟のよう」っておっしゃったそうなんだよね。自分がここに行きたいからといって、そこに行けるものでもない。「俳優の人生というのは流れていくもので、そういうふうに過ごしていってください」と。
大塚 それで言うと、寿大さんは自分の思う自分と相手の思う自分にギャップは感じますか?
寿大 やっぱりあるけど、大切なのは相手が持っているイメージの方。自分がどんな俳優なのかは、人が決めるものだから。
寿大 聡 じゅだいさとし 俳優。無名塾26期生。『婢伝五稜郭』『荒木町ラプソディー ~地層捜査~』などの舞台に出演。2013年には三池崇史監督作品『地球兄弟』に出演。出演作『連続ドラマW 沈黙法廷』のDVD-BOXが発売中。また、最新出演作の『こはく』(主演:井浦新、監督:横尾初喜)が2019年に全国公開予定。
大塚 相手にそう求められたときに、応えられるか不安なんですよね。
寿大 それはいざ仕事になれば大丈夫。悩んでいる時間もないしね。人ってけっこう多面的に見ているわけで、自分では「え!?」と思う役でも、相手にそういう風に見られているんだったら、そこに合わせてやるしかない。それは自分を大切にしてないということじゃない。演技は自分自身から生まれてくるものだし、どんな役も一回、自分のフィルターを通って出てくるものだから。なのでまぁ、あんまり考えすぎずにね(笑)。
渡邉・大塚 ありがとうございました。