出演作や私生活を語る連載の第5回。
先日の7月31日に放送された『探偵!ナイトスクープ』で、「『日本統一』小沢仁志のセリフが聞き取れない」という依頼が取り上げられて話題になっていたそうですね。実は僕、その放送をリアルタイムでは知らなくて、後から聞いて「おお、よくぞ言ってくれた!」と、うれしくなりました(笑)。
番組で検証されたのは53作目の葬儀のシーンで、小沢さんの「のかんかい、われ」という関西弁のセリフでした。滑舌の悪さがいじられていたようですが、僕自身はプロデューサーとして、まったく気にしていません。
特に小沢さんのような圧倒的な存在感を放つ俳優に対して、セリフが聞こえる聞こえないは、もはや些末なことだと考えています。あのセリフもアドリブで出たものでしたが、小沢さんが台本通り一言一句間違えずにやってくれるとも思っていないんです。『日本統一』における台本というのは、役者に対する「こういう方向に向かいますよ」という、あくまで“道しるべ”に過ぎません。そのシーンで伝えたいニュアンスや空気感さえ合っていれば、表現方法はすべて委ねていいと思っています。
最初からガチガチに固めて「一言一句変えないでくれ」という現場もありますが、それだと僕は台本以上の+αが生まれない気がするんです。一人ひとりの力を借りて、その人にしか出せない凄みやオーラを乗せてもらう。だから小沢さんの「のかんかい、われ」も、「はっきり聞き取れなくても、何かすごく怖いことを言っている」という迫力が伝われば、もうそれで大正解なんです。
それに、『日本統一』がこういうバラエティ番組で面白おかしく取り上げられることも、僕らとしては心からウェルカムです。以前も、昔の2時間ドラマのように“崖から落ちるのがどう見てもダミーの人形”というシーンをツッコまれたことがありましたが、そういったこともあえてやっているところがあります。
ツッコミどころをツッコんでいただいて、バラエティ番組などで取り上げてもらえるのは、僕らとしても願ったりかなったりだったりします。なぜなら、普段は任侠作品を観ない人たちが「何この作品?」と興味を持つ強烈なフックになるからです。任侠モノというと怖いイメージもあると思いますが、こういう一面もあるんだと思ってもらえるのは、とても良いことなのではないでしょうか。今回、『探偵!ナイトスクープ』で小沢さんのチャーミングな一面が伝わったのも、番組と『日本統一』の素晴らしい相乗効果だったと捉えています。
新たなバランスを生む。
本編については、9月2日に最新作『日本統一76』がリリースされました。その先の展開について少しだけお話すると、物語としては氷室がトップになり、組織としての新しい方針が示される、いわば次のフェーズの始まりになります。
リアルな世界で言えばトップに立った人間が、自ら現場をちょろちょろ動き回るわけがないと思うんです。どこへ行くにもボディガードがついてきて、揉め事は若い衆が動く……というのが現実でしょう。でも、それを映像作品でそのままやってしまうと、主人公たちがずっと奥の部屋に座っているだけで、エンターテインメントとして面白くなくなってしまう。いかにしてトップの氷室や田村を現場の事件に関わらせていくのか。次はその見せ方を探る、パイロット版的な意味合いも込めたエピソードとなっています。
『日本統一』もシリーズが長く続き、熱心な古参ファンが増えていく中で、どのように新規のファンを取り込むのかというのは、プロデューサーとして常に頭を悩ませる課題の一つです。新しい客層を呼ぶために、本編の中で急に振り切った斬新なことをやってしまうと、これまで支えてきてくれた古参のファンに対して、申し訳が立ちません。
バラエティ番組などでイジっていただくのもそうですが、本編の世界観はしっかりと守りつつ、入り口を広げるための別のアプローチを仕掛けていくべきだと考えています。例えば、今までやってこなかったプラットフォームと連携してみたり、メーカーさんとも相談している最中ですが、新機軸のグッズを展開させてみたりといった、『日本統一』に興味のなかった人の目に物理的に触れるチャンスを作っていくことが大切です。そして、こうした地道な種まきが、視聴者層の新たなバランスを生んでいくのだと思います。
変わるのがわかる。
新しい層へのアプローチ……というわけではないのですが、ついに『極道スイーツ~コワモテ俳優2人のぶらり絶品甘味巡り~』がレギュラー化してしまいました。率直な思いですか? 「ヤバいな、そうなっちゃったか」です(笑)。前回の特番では反省しかなかったので、まさか続くとは思っていませんでした。
この番組は「おいしかったスイーツ店に盃を渡して、俺たちの傘下(身内)にしていく」という設定なのですが、そもそも僕も山口(祥行)もスイーツの権威でも何でもない、ただのおじさんです。怖そうな男二人が突然やってきて、「うまいから傘下に入れ」なんて、よく考えたらおかしい話じゃないですか。
実際に話題の繁盛店にお邪魔して、職人さんたちが手作りしている絶品のスイーツを食べると、その圧倒的なクオリティと努力に深く感心します。「いやいや、これ、傘下に入れるんじゃなくて、俺たちがお店から盃をもらうべきなんじゃないの?」と思ったりして、山口と二人で設定の無理やりな部分にずっと戸惑いながらロケをしています(笑)。
レギュラー化1回目となる新大久保のロケでもそうでしたが、ディレクターが先にお店の中にいて、「じゃあ、本宮さんと山口さん、入ってきてください」という感じではないんです。僕らが初めにお店に足を踏み入れるというパターンも多いんです。二人でふらっと若い女性客ばかりのカフェに入っていくと、一瞬で店内の空気が変わるのがわかります。店員さんもカメラを向けられて緊張している中で、どのようにコミュニケーションを取って場を回すかを、咄嗟に考えなければいけません。僕も山口もなんとかこのロケを成立させないといけないという意識があるので、自分の立ち振る舞いの正解がわからないまま、ヒリヒリした感情を味わいながらやっています。
でも、僕らのそういうバラエティ慣れしていない、やりづらそうな様を含めて面白がってもらえるなら、それはそれでいいのかなと思っています。10回くらいやれば少しは慣れるのかもしれませんが、今はまだ『日本統一』では絶対に味わえないこの居心地の悪さと格闘している最中です。
『日本統一』と違う味わいの作品といえば、ドラマ『晩酌の流儀5』に、鮮魚店の店員・ヤス役で出演させていただいています。この作品に関しては、ヒントは台本の中にしかないと思っていて、できるだけ台本に沿いつつ自分の判断を乗せながら演じています。現場は若いスタッフが多くてのんびりした雰囲気で、純粋に楽しませてもらっています。
ただ、ドラマの題材は“晩酌”ですが、僕はお酒が一滴も飲めません。おまけに釣りが大好きで魚を捌く知識はあるのに、魚を食べるのは苦手という、なんとも複雑な状況ではあるんです(笑)。僕は米が大好きなので、酒のつまみよりも“ご飯のお供”になるような肉料理のほうがテンションは上がりますね。
ちなみに、先ほどの『極道スイーツ』で新大久保を歩いたとき、ふと昔のことを思い出しました。かつて新大久保には、プロレスラーのキラー・カーンさんがやっていた居酒屋があって、よく通っていたんです。カーンさんのお店には“尾崎豊が愛したカレー”という看板メニューがあり、とてもおいしかったのですが、いつも「本当なの?」と疑っていました。カーンさんは「(尾崎さんが)このカレーを食べておいしかったって言ってた」とは言うんですけど、だからってこのネーミングにしていいの? 勝手に名前を使っちゃってるんじゃないの?って、いつもイジって笑い合っていました。カーンさんは本当に純粋で、体が大きくて優しい方でした。もうお亡くなりになってしまいましたが、あの街を歩くと、お店での出来事や撮影所でお会いした記憶など、いろんな思い出がよみがえってきて、感慨深かったですね。
最後に、先日発表されたセガさんの新作ゲーム『STRANGER THAN HEAVEN(ストレンジャー ザン ヘヴン)』(2027年1月15日発売予定)に出演させていただくことになりました。『龍が如く』シリーズに続いて関わらせていただいたのですが、本作は戦前・戦後を跨ぐ非常にスケールの大きな物語です。先日、僕のパートの音声収録を終えたばかりなのですが、開発現場はすごい熱気に包まれていました。
スケジュールの都合もあり、完成した映像を見ながらのアフレコではなく、映像がない状態での収録だったのですが、相手がどれくらいの距離感にいるのか、どんな空間で話しているのか、目に見えない情報をディレクターとすり合わせながら声だけで芝居を構築していくのは、非常に難しくも面白い作業でした。トレーラーを見せていただきましたが、僕自身も「これは絶対に面白い」と確信できるスケール感に仕上がっています。発売されたら、自宅でじっくりプレイしてみようかなと思っています。
撮影/朝倉 健(アフロスポーツ)